従業員が職場を離れる2つの理由

先週はランチタイムのセミナー、管理職向け研修、従業員満足度調査の報告会、若手社員向け研修と、性質の異なる仕事が続く一週間でした。その前週も管理職向けの研修が続いていたのですが、最近どの企業での仕事でも必ずと言っていいほどあがる話題があります。それが「離職防止」です。

従業員が辞めてしまい、人手が足りていない。それも、若手社員だけではなく、30〜40代の中堅クラスが抜けてしまい、職場のリーダーや管理職を任せられる人がどんどん減っていくという嘆きを耳にすることが少なくありません。どこにいっても30〜40代が抜けてしまうという話を聞くものですから、「いったい世の中の30〜40代はどこにいるのでしょうね」という冗談を交わして苦笑するほどです。

従業員を辞めさせないようにしたい。これは多くの組織にとって無縁ではない、重要な課題ではないかと思います。そして、離職防止の対策としてよく挙げられるのがモチベーションやエンゲージメント(愛着心)の向上です。

確かに仕事に対する意欲が上がり、組織への愛着心が増せば、その組織にとどまって仕事をしようという動機づけができるかもしれません。問題はどうやってモチベーションやエンゲージメントを上げていくかです。ここで、時間外労働を減らす、休暇を多く取得できるようにする、賃金を上げるといった、労務環境の整備を想定される方がいるかもしれません。

もちろん、そうした環境整備が功を奏する面もあるかとは思います。しかし、それだけでは、モチベーションを上げるには必ずも十分とは言えません。なぜなら、それらはモチベーションを下げないための要因であって、上げる要因ではないからです。

ハーズバーグの二要因理論

従業員のモチベーションに関する理論として有名なものの一つに、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論(動機づけ・衛生理論)」があります。

仕事に対する満足度に影響を与える要因には「満足度を高める要因」と「不満足を感じる要因」の2種類があるとする考え方です。この理論が特徴的なのは、ある要因が満たされると満足度が上がり、不足すると不満が高まるというわけではなく、満足の要因と不満足の要因は別物であると考える点です。

満足度を高める要因のことを「動機づけ要因」と呼びます。具体的には、目標達成、承認、職務内容、仕事への責任、昇進などが挙げられます。一方、不満足を高める要因のことを「衛生要因」と呼びます。具体的には、会社の方針、上司の管理、給与、対人関係、作業環境などが挙げられます。

動機づけ要因と衛生要因は対極の影響を及ぼします。例えば、給料は上がると満足度が上がるというよりは、上がらないと不満を覚えるといった影響を及ぼします。給料が低いと不満が募る。しかし、一定のレベルまで達すると、それ以上さらに上げたとしても必ずしも動機づけにつながらないとということです。

衛生要因は満たされていて当たり前と感じます。不満要因なので、マイナスを改善しゼロにするのが理想だと言えます。一方、動機づけ要因はゼロを起点としてプラスに働きます。性質がまったく異なるのです。

離職を防止する上では、モチベーションを上げること以上に、モチベーションを下げないようにすることが重要です。どれだけやりがいのある仕事であったとしても、条件や環境が整っていなければ「やってられない」と感じるようになるのです。

なお、参考書籍として松岡保昌さんの『こうして社員は、やる気を失っていく』をお勧めします。残念な職場の「あるある」が見事に描かれていておもしろいです。

ゆるい職場問題

近年「ゆるい職場」という言葉が注目されています。労働条件が快適で、上司からの関与も少なく、自由にのびのびと仕事ができるような職場のことを指します。一見すると理想的な職場のようにも見えますが、職場がゆるすぎて自分の成長が感じられず、そこにいてもキャリアアップできそうにないからと離職をしてしまうケースも少なくないようです。

労働条件が過酷だとブラック企業だと言われ、上司からの関与が強いとパワハラだと言われる。コンプライアンスを過度に意識した結果、職場から活力や勢いがなくなり、ゆるくなってしまうのです。

若手社員も、自分が成長してキャリアアップしていくことを望んでいます。政治的にも経済的にも将来不安が募りやすい時代とも言えるため、生き抜く力を身につけるためにスキルを身につけたり、経験を積んだりしたいと思っています。そのために必要なフィードバックも望んでいます、しかし、上司から指導や指摘、助言などがないため張り合いがなく、仕事に面白みを感じなくなってしまうのです。

組織の目標を達成するためにも、本人のキャリアアップのためにも、時には厳しいフィードバックや耳の痛い話をしなければならない時があります。業務上必要なフィードバックをすることは、決してパワハラではありません。パワハラになるかどうかは、言い方や言葉づかい、合理性や必要性、何よりベースの人間関係によって決まります。

上司の管理は衛生要因です。やればやるほどモチベーションが上がるのではなく、ある程度までは行わないとモチベーションが下がるのです。相手を一人の個人として尊重している前提があれば、業務上必要な指導や忠告、要望はどんどん伝えていく必要があります。そうしなければ、本人も問題意識を持たないようになり、仕事の基準がどんどん低くなってしまうのです。

フィードバックと承認をしよう

私は、従業員が離職をする主な理由は次の2点にあると考えています。

  • 成長している感がないこと
  • 役に立っている感がないこと

どんな人にも成長したいという欲求があります。日々の仕事の経験が自分の力量を上げることにつながっていると感じられなくなると、仕事がおもしろくなくなっていきます。成長するために必要のなのは、気づきと経験です。必ずしも自分の課題に自分自身で気づけるとは限らず、また気付いたとしてもそれは本人の主観や価値観によって偏りが出ることがしばしばです。他人からのフィードバックがあってはじめて気づくことも決して少なくありません。

フィードバックは衛生要因です。自分がやった仕事に対して何のリアクションもないと、仕事への意欲が失われていきます。結果が良かったにしろ、悪かったにしろ、外部からフィードバックがあることで、仕事への意欲や当事者意識が醸成されていきます。

ただし、フィードバックには具体性が必要です。適当に良かった、悪かったと言われても、相手に響きません。効果的なフィードバックをするためには、相手の行動や発言を日頃からよく観察し、結果だけでなくプロセスにも注視しておく必要があります。その「見てもらっている感」が、フィードバックを相手に響かせるのです。

そして、フィードバックと併せて必要なのが承認です。仕事の結果はもちろん、仕事ぶりも含めて、相手のやったことを承認する。承認とは必ずしも褒めることではありません。行動や結果が好ましいものでなければ、さすがに褒めようがありません。しかし、その人のやったことを認めることはできます。良い時は良いと認め、悪い時は悪いと認める。それを相手にしっかりと伝えるということです。

仕事の承認は動機づけ要因です。しっかりと仕事ぶりを認めることで、「自分の仕事が認められている」「自分の仕事が役にたっている」「組織に貢献している」という自覚が芽生え、仕事が面白くなっていきます。

あまりにも過酷な労働環境である場合は別として、正常な範囲の条件で働ける職場であれば、成長と貢献を感じられる限りはそうそう離職につながらないのではないかと私は考えます。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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