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人材像

2026.9.8

求める人材像の作り方|抽象的な言葉で終わらせないために

求める人材像を作ったものの、「主体性がある」「責任感がある」といった言葉が並んだだけで終わってしまう。人事のご担当者から、よくお聞きする話です。

抽象的になる理由は明確です。経営理念か、実在する社員か、どちらか一方しか見ていないからです。両方を突き合わせ、観察できる行動の言葉に表すところまでが必要な作業です。この記事では、その4つの手順をご説明します。

貼り出された人材像を、誰も見ていない

ある会社で、会議室の壁に人材像が掲示されていました。5つの項目が、きれいに並んでいます。

その会社の管理職の方に「これ、覚えていますか」と伺ったところ、3つ目まで出てきませんでした。ご本人も気まずそうにされていましたが、責められる話ではないと思います。

「主体性を持ち、変化に対応し、チームに貢献する人材」。この一文から、明日の自分の行動を変えられる人は、まずいません。

作った側の努力が足りなかったわけでもありません。多くの場合、作り方の順序が抜けているだけです。

抽象的になるのは、片側しか見ていないから

人材像が形容詞の羅列になる原因は、2つのどちらかです。

理念だけを見て作ると、どの会社にも当てはまる言葉になります。誠実、挑戦、協調。立派ですが、自社の特徴が消えます。

一方、実在する高業績者だけを見て作ると、その人の個性がそのまま要件になります。「〇〇部長のような人」という定義は、後任が育たない原因になります。

必要なのは、両方を突き合わせて、重なった部分を残すことです。 理念から抜き出した価値観と、実際に成果を上げている社員の共通点。この2つが重なるところが、自社の求める人材像です。

そして、これを決められるのは経営者だけです。人事のご担当者だけで作った人材像は、最後に社長の一言でひっくり返ります。作業の前に、経営者の関与をどう取り付けるかを決めておく必要があります。

手順1|理念から価値観の言葉を抜き出す

最初に、自社が何を大事にしているかを言葉として取り出します。

材料は、経営理念、社是、行動指針、創業の経緯などです。もし文書がなければ、社長への聞き取りから始めます。「どういう社員を評価してきたか」「どういう社員に困ってきたか」の2つを伺うと、経営者にとっての重要な価値観が浮き彫りになります。

この段階では、まだ整えなくて構いません。出てきた言葉をそのまま並べておきます。10から20語ほどになるはずです。

なお、ここで理念そのものを作り直そうとしないでください。人材像の作業が止まります。今ある理念から読み取れる範囲で進めることが望ましいです。

手順2|成果を上げている社員を、観察する

次に、実際に成果を上げている社員を3人から5人選び、他の社員と何が違うのかを書き出します。

どんな組織にも、仕事がデキる人とそうでない方が分かれます。全員が指示待ち、あるいは全員がハイパフォーマーという会社は、まず存在しないでしょう。

観察するのは、その人たちの性格ではなく行動です。「前向き」ではなく「トラブルの報告が早い」。「責任感がある」ではなく「引き継ぎの資料を頼まれる前に作っている」。人が見えるのは行動だけですので、行動の水準まで下ろします。

上司へのヒアリングだけで済ませず、その方の1週間の動きを追うと、本人も自覚していない行動が出てきます。手間はかかりますが、ここが人材像の中身になります。

手順3|2つを突き合わせ、観察できる言葉に直す

手順1の価値観と、手順2の行動を並べ、重なるものを残します。

たとえば理念に「挑戦」があり、高業績者の観察から「前例のない依頼を断らずに一度検討する」が出てきたなら、この2つは重なります。理念にあっても、実際には誰もやっていない項目は、いったん外します。

残した項目は、次の基準で点検します。その行動を、第三者が見て確認できるか。

「主体性がある」は確認できません。「指示された作業の前後の工程を確認してから着手する」であれば確認できます。前者は評価もできず、育成の目標にもなりません。しかし、後者は誰もが共通の認識を持つことができます。

この点検を通らない項目は、書き直すか外します。5つから7つの項目に絞れば十分です。

手順4|等級別・職種別に落とし込む

全社共通の人材像ができたら、それを等級と職種に分けます。

同じ「自ら考えて行動する」でも、新入社員に求める水準と、中堅社員に求める水準は違います。新入社員なら手順を習得しつつ不明点を自ら調べる段階、中堅なら自ら課題を設定して解決を進める段階です。この差を文章にします。

ここまで来ると、評価項目にそのまま接続できます。評価基準が形容詞のままだと5段階の判断ができないという問題については、5段階評価で全員が3に集まる会社の共通点をご覧ください。人材像・等級・評価が一本の線でつながっていることが、制度が運用される条件です。

作った後は、掲示して終わりにせず、採用の基準育成の目標評価の項目という3か所で実際に使ってください。使われない定義は、1年で忘れられます。

自社の状態がどうなっているかは、10分の無料診断で確認できます。

今週できるのは、手順2の一部です

4つの手順を通すには数か月かかります。そこで、今週から着手できることを3つ挙げます。

  • 成果を上げている社員を3人挙げ、その方の行動を1人5つずつ書き出す
  • 書き出した項目のうち、第三者が見て確認できるものに印をつける
  • 現行の人材像や評価項目と並べ、重なっているものを数える

1つ目で性格の言葉しか出てこなければ、まだ観察が足りていません。行動を思い出せるまで具体化してください。

3つ目でほとんど重ならなければ、現行の人材像は実態と接続していないということです。これは経営に持っていける事実になります。「人材像が形骸化しています」という相談は動きませんが、「実際の高業績者の行動と、現行の項目は1つしか重なりませんでした」という報告は動きます。

なお、等級定義や評価項目まで含めて設計する場合、社内だけで進めると「今いる人に合わせた定義」になりがちです。外部を部分的に使う方法もあります。弊社が実際にどう関わっているかは人事制度構築の支援内容に記載しています。

まとめ

求める人材像が抽象的な言葉で終わるのは、理念か実在する社員のどちらか一方しか見ていないからです。両方を突き合わせ、第三者が観察できる行動の言葉に直し、等級別に落とし込むところまでが作業になります。

自社の人材像がどうなっているかは、内側からは見えにくいものです。人材像・人事制度・マネジメント・人材育成の4分野について、どこが弱いかを10分で数値にする無料診断をご用意しています。今回の内容は、診断の「人材像」の項目に対応しています。

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本記事の内容は、拙著『指示待ち人間からの解放』の第3章をもとに再構成したものです。


著者

小松 茂樹(こまつ しげき)

株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング 代表取締役社長。中小企業診断士、国家資格キャリアコンサルタント。事業会社で人事制度の再設計や業務改善に携わったのち、2021年に独立。中小企業の人材育成と組織づくりを支援しています。
著作『指示待ち人間からの解放〜自ら考えて行動する社員を増やす4つの柱と7つのステップ〜』『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜

原因は、社員ではなく環境にあります。自社の環境がどうなっているかは、10分で数値になります。

TEL.
078-600-2761