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2015.12.1
前回、「好きなことを仕事にする」をテーマに専門性についてお話しいたしました。
今回はその続きで、「複数の専門性を持つこと」「高い倫理観を養うこと」について述べていきます。
繰り返しになりますが、高い専門性とは「知恵」「体系化された知識」「自論」に裏付けられたプロフェッショナルの水準です。
この域に達することができると、「自分の好きなこと」がその人の価値と魅力として職業レベルで輝くことになります。
とはいえ、世の中には同じ領域で活躍している方々が大勢います。
ある一つの領域をどれだけ高めたとしても、その中で必ずしも唯一無二の存在になれるとは限りません。世の中、上には上がいるものです。
もし、好きなことを仕事にしようとするならば、単にレベルをひたすら上げるよりも、別の角度から専門性を発揮することを考えた方が効果的です。
それは、
「専門性を2つ以上掛け合わせる」
ということです。
例えば、「英語や中国語に堪能なレストランやホテルのスタッフ」などがイメージしやすいかもしれません。
語学と接客レベルがある一定以上の水準であれば、
(語学力)×(接客力)=(外国人対応に長けた接客のプロ)
として、存在の希少性が高くなります。
複数のキャリアを組み合わせることで、経歴を強みとして活かすこともできます。
例えば、広告宣伝業に従事していた人が、小売業のマーケティング部門に転職した場合、前職の知恵と人脈を活かし、転職先で「宣伝分野のプロ」として強みを発揮することができます。
ITエンジニアが一般の事業会社の情報システム部門に転職する場合なども、同じような効果が発揮されます。
仮に前職のITシステム会社では「並の能力」として評価されていたとしても、転職先では「その道の第一人者」になることができます。
このように、複数の領域を掛け合わせることで、特定分野における自分の価値をさらに高めることができるのです。
異なる別々のものを組み合わせることで、新しい価値を生み出すことを「イノベーション」と言います。
「イノベーション=発明」というイメージがありますが、近年の発明はまったくのゼロから何かを生み出すというよりも、別々のものを掛け合わせて新しいものを作るケースが主流になっています。
目新しいところでは、「俺の株式会社」が展開する「俺のイタリアン」という立食型イタリアンレストランが良い例です。
(高級イタリアン)×(立ち呑み居酒屋)
を掛け合わせることで、従来になかった価格と味のバランスを実現し、支持を得ています。
古くは、ヘンリー・フォードが開発したベルトコンベア生産方式も、
(自動車製造)×(肉牛の解体工程)
というまったく異質のものを組み合わせることによって生まれたと言われています。
このように、すでにある別々のものが掛け合わさることで、新しい価値が生まれることがあります。
自分自身においても、これまでに得てきた知識や経験を掛け合わせることで、「独自の専門性」をつくり出すことができるのです。
例えば、私の場合、
(キャリアコンサルティング)×(経営コンサルティング)
として、組織の問題解決やマネジメント手法を取り入れたキャリア開発を「自分の専門」と位置づけて独自性を磨いています。
また、営業企画、マーケティング、総務・人事、情報システム、物流など、経験部門が多いこと自体が、今の仕事にとても役に立っています。
自分が今まで得てきた知識や経験は、自分の資産です。
うまく組み合わせることによって、それが個性・独自性となって自分を輝かせてくれるようになります。
好きなことを仕事にするもうひとつのメリットは、「職業上の倫理観が養成される」ということです。
これは非常に単純な話ですが、
「自分が好きなことをして、人に喜んでもらえる」
ことの喜びから、顧客に高い価値を提供できるからです。
業種・職種を問わずあらゆる仕事の目的は、商品やサービスを通じて
・顧客の欲求を満たすこと
・顧客の問題を解決すること
のいずれかに該当します。
そして、その双方において重要なことは、
「顧客が支払う価格と同等以上の価値を、顧客に提供する」
ということです。
そのためには、提供する商品・サービスの質はもちろんのこと、それに加えて提供者からの
「顧客に喜んで欲しい」
「顧客の役に立ちたい」
という姿勢が大切です。
すなわち、本気で顧客に貢献しようとする「サービス精神」が問われるということです。
仕事が自分の好きなことである場合、そうでない場合と比べて顧客への接し方が大きく変わります。
・その商品やサービスの素晴らしさや魅力を、自信をもって説明することができます。
・その商品やサービスを、正しい目的と正しい方法で提供することができます。
・「ただ売れればいいや」ではなく、「この素晴らしさを実感して欲しい」という態度で提供するので、最低限の労力で済ませたり、機械的な対応で済ませることなく、真摯に顧客に向かい合うことができます。すなわち、倫理観が高くなるのです。
自分の好きなことは、他人にも好きになって欲しいものです。
それを仕事として他人に提供するならば、自分の好きなことに対して悪いイメージを抱かれることは極力避けたいという気持ちが生まれます。
必然的に商品やサービスの水準が高くなります。
自分が好きなことを仕事にすることは、自分自身の職業上の倫理観を養うことにもつながるのです。
子どもの頃は「大きくなったら○○(好きな仕事)になりたい!」と言うと、周囲からは「なれるといいね~」と好意的に話を聞いてもらえたものです。
ところが、大人になるにつれて、「そんな夢みたいなこと言うな」と、次第に否定的な態度をとられることが多くなるように思えます。
しかし、これまで述べてきたように、自分の好きなことを仕事にすることは、
・高い専門性が身につく
・職業上の倫理観が養成される
という、自分と相手の双方に大きなメリットを生み出します。
好きなことを仕事にするためには、
・やりたいこと
・できること
・大事にしたいこと
・実際に社会の中で果たせる役割
という自分自身に対する理解が必要です。
そして、それらを踏まえて、実現に至るプロセスを戦略的に進めていく必要があります。
自分自身への深い洞察が、好きなことを仕事にする人生を可能にしてくれるのです。
「今はできていないけど、好きなことを仕事にする人生を送りたい!」と思われる方は、私がまとめた「じぶん理解ワークブック」を通じて、自分自身に対する理解を深めてみてください。
また、一人ではなかなか進められないという方は、来年に開催するセミナーにぜひご参加ください。
自己分析はしっかりやればパワフルな効果を生み出してくれますが、一人で進めるには根気と時間が要ります。時間と場所を決めて集中的に行うと効率的です。
http://growingtree.jp/seminar/jibunrikai/kouza.html
自分自身についてより深く知ることは、あなたの可能性を引き出す第一歩となることでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。