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2016.2.4

​人生はロールプレイング〜役割の数だけ人間の幅が広がる〜 その1

先日、(株)ビジネスグランドワークス様の講演会に参加させていただきました。

ご講演されたのはソニーエンジニアリング(株)の前・代表取締役社長の加藤哲夫様で、

産業技術の変遷、イノベーション、industrie4.0(ドイツの描く第四次産業革命)など、夢のあるお話をいろいろと聞かせていただきました。

 

私は、会社の仕事では情報・通信業界の企業様が主要なお客様でいらっしゃるので、

業界の前線で奮闘されていたトップの方から直接お話をお伺いできるのは、とても刺激的な機会でした。ありがたい限りです。

 

目の前の仕事ばかり見ていると、コンサルティングに直結しそうな領域にインプットが偏りがちになるので、技術系の方々のお話にも触れて感覚を研ぎ澄ませることも大切だと、改めて思いました。

講演を聞いて、「イノベーション創造の考え方を、人生設計やキャリア開発に応用するとおもしろいだろうな」とアイデアが浮かんだので、このテーマについてもまた改めて書きたいと思います。

 

では、本題へ・・・

役割が人格と能力を育む

さて、実はその前日はというと、ある企業様の会議にお邪魔して約3時間の講義をさせていただいておりました。

前の日には壇上にあがって「話し手」を担い、その翌日には受講者として「聴き手」になる。

状況や場面に応じて、同じ人間が逆の立ち位置になる。

日頃あたり前のようにやっていることですが、改めて考えると、ここに人間の複雑さとおもしろさがあるなと思いました。

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人間にはいくつもの「役割」があります。

たとえ同じ人であっても、その時々の状況や場面によって、果たすべき役目は異なります。

ある時は、夫/妻であり、
ある時は、父/母であり、
ある時は、会社員であり、
ある時は、市民・国民であり、
ある時は、何かの団体の会員であり、
ある時は、学ぶ人であり、
ある時は、趣味を楽しむ人であるのです。

 

そして、場合によっては、立ち位置がそっくりそのまま入れ替わるということもたびたび起きます。

先の例で言えば、「講師」と「受講者」。

他にも、

・ある人に対しては「上司」、別の人に対しては「部下」
・ある人に対しては「お客様」、ある人に対しては「サービス提供者」
・親に対しては「子」、子に対しては「親」
・「兄/姉」に対しては「弟/妹」、「弟/妹」にとっては「兄/姉」

という逆の役割を両方とも担うことは、しばしばあります。

 

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私はキャリアコンサルタントでもあるので、職場の相談や転職の相談をいただくことが度々ありますが、

自分が転職活動をする際には、他の方に相談にのっていただきました。

 

また、私の妻は社交ダンスのドレス制作を仕事にしていますが、

お客様に対してドレスの提供者になる一方で、自分が踊る時にはドレスの利用者になるわけです。

 

さらには、逆の関係ではありませんが、

「夫(妻)」であると同時に「父(母)」である

といったように、同じ場所や空間(この場合、家庭)においても複数の役割を兼任することもあります。

 

人間の社会生活は、異なる複数の役割によって構成されています

そして、それぞれの役割には、期待され、果たすべき役目があります。

複数の役割を併せ持ち、それぞれの役目を果たすことによって、そこから得られる経験や学びが統合されて、人格と能力が形成されていきます。

 

これはすなわち、

どのような種類の役割を担うのか
どれだけの数の役割を担うのか

によって、人の人格や能力の形成に影響が及ぼされることを意味しています。

 

私がキャリアコンサルティングで自己イメージの描写を行う際、一般的な「興味」「能力」「価値観」に加えて「役割」を分析の切り口として扱うのは、この考え方に基づくものです。

 

「仕事」=「役割を演じること」

自分が日頃行っている一つひとつの行動が、自分の担う「役割」に基づくものだと捉えるようになると、自分自身の感情や行動を制御したり、パフォーマンスを上げたりすることに役立ちます。

 

あまり良い例ではないかもしれませんが・・・

 

私がはじめて、部下を預からせていただく立場になった26歳の時、当時勤めていた会社はイケイケの売上志向から、利益を確保する体質へと経営方針の転換を迫られていました。

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私は事務方のマネージャーでしたが、間接部門のコストを削減する必要性から、組織の縮小を余儀なくされました。

そのため、ITシステムの利用や地方への業務移管を通じて、1年がかりで業務の削減や縮小に取り組んでいましたが、

正直なところ、やっていて気持ちの良い仕事とは、とても言えません。

 

部下には年上の方もいたので、ご家族のことを考えると心苦しくなることもありましたし、

プロジェクトの完了は、最終的に自分のポジションの消失にもつながるので、心境はかなり複雑でした。

 

とはいえ、会社には会社の事情があり、それゆえに与えられている任務なので「やりたくない」と言ったところでどうしようもありません。

これは当時の私にとっては最優先の「やるべきこと」であり、その役割におけるミッションと言えるものでした。

 

この状況にどう臨もうかと考えた末に、私がたどり着いたのは、

「仕事」=「役割を演じること」

である、という考えでした。

 

つまり、

「これはオレではない。オレの意思ではない。」

「台本に沿って、オレの役割を演じているだけだ。」

と思って仕事をしたということです。

 

もちろん、そんなに簡単に割り切れるものでもありませんでしたが、

この考え方をすることによって、多少なりとも自分のやっていることに対する心理的な抵抗や自己矛盾は弱まっていたように思えます。

 

「やりたいこと」には意欲的、積極的、情熱的にに取り組む一方で、

「やるべきこと」にも淡々と、冷静に、適切に対応する。

 

職業人にはこの両方の側面が必要であり、特に後者がしっかりできる人こそ、成果を上げ、周囲からの信頼を得ることもできると考えます。

 

そして、「仕事とはロールプレイ(役割を演じること)である」という考え方によって、自己コントロールが可能になり、「やるべきこと」にもしっかり力を注げるようになるのです。

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これが私の2005年における最大の学びでした。

そして、おそらく2000年代で最も仕事が(精神的に)キツかったのがこの時期であり、それゆえ、大きく力をつけたのもこの時期だったと考えています。

 

結果として、この経験が、私の職業観を大きく変える転機にもなりました。

 

続きはまた明日お届けします。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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