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2016.11.30
今回のシリーズでは、モチベーションは「上がる」ものではなく、「上げる」ものとして捉え、
の3つをコントロールすることによって、モチベーションを「スキル化」するというお話をしております。
前回はスキル化の一つ目のステップとして「思考のコントロール」について述べました。
3話目となる今回は「感情のコントロール」についてお話いたします。
▼これまでの流れ▼
第1回:モチベーションは「上がらない」
http://growingtree.jp/archives/2166
第2回:「やるべきこと」は細かく砕いて積み上げる
http://growingtree.jp/archives/2179
第1回の投稿で、「快」の感情がモチベーションを向上させ、「不快」の感情がモチベーションを低下させると述べました。
人はみな無意識的・本能的に、
「痛みを避けて、快楽を求める」
という習性を持っています。
取り組もうと思っている事柄が「痛みを連想させる(=不快)」ものであれば、それを遠ざけようとし、「快楽を連想させる(=快)」ものであれば、それを得ようとします。
したがって、いかにして「不快」の感情を遠ざけ、「快」の感情を感じるように自分をコントロールするかが、モチベーションを「上げる」スキルの要となります。
感情のコントロールのポイントは、次の3つです。
一つ目のポイントは「焦点」、すなわち「物事のどこを見るか」ということです。
私たちは常に、自分の価値観に基づいて物事を見ています。
物事には多様な側面があるにもかかわらず、私たちは無意識のうちに、自分が正しいと思っているひとつの観点で物事を捉えてしまうのです。
例えば、リアクションが早く、命じられた仕事にすぐに取りかかる人がいるとします。
行動に移るまでのスピードが早く、アウトプットの仕上がりも速いのですが、スピードを重視するあまり、ところどころ粗が目立ってしまいます。
見る人によってはこの人を「行動が早い」と肯定的に捉えるかもしれません。
しかし、別の人はこの人を「仕事が雑」と否定的に捉えるかもしれません。
やっている行動は同じなのに、人によって評価が正反対になってしまうのです。
これはその人のどこを見るかという「焦点」の問題です。
私たちは概ね15歳くらいまでの間に、周囲の環境(人や出来事)の影響を受けて、自分なりの価値観が8割方形成されます。そして、25歳になる頃には価値観はほぼ完成の域に達します。
もちろん、その後も周囲の様々な影響や、内省の結果を踏まえて価値観が変化することもありますが、それを変えるのは相当なインパクトが必要であると考えた方が良いでしょう。
価値観は私たちの無意識に根ざして、私たちの思考・感情・行動に多大な影響を与えています。
「物事をどのように捉えるか」という焦点のあて方も、無意識のうちに、自分の価値観が定めています。
上記の例では、肯定的に捉えた人は「行動の早さ」に価値を置き、否定的に捉えた人は「仕事の丁寧さ」に価値を置いている、ということになります。
価値観は無意識のうちに作用しているので、それ自体を変化させるのは容易ではありません。
しかし、自分の価値観に縛られて物事を見ているが故に、物事の他の側面や可能性を見逃しているのも事実です。
したがって、ここで大切なことは「他の見方も存在する」ということを認識することです。
職場や私生活など、身の回りで起きる何かに不快な感情を感じるのであれば、それは自分の焦点のあて方、そしてその基になっている価値観が原因でそう感じているのだと認めることです。
そして、可能性として「他の感じ方」があることを前提として捉え、可能であれば別の焦点のあて方から出来事や現象を捉え直すよう試みます。(これを心理学では「リフレーミング」と呼びます)
物事の見方には無限の可能性があり、どこに焦点をあてるかは「自分の勝手」です。
一見、不快に感じることであっても、見方を変えれば良い解釈ができる可能性があります。
自分の勝手で物事の見方を変えられるのであれば、自分が「快」「喜び」に感じることに捉え直すことで、感じ方を正反対にすることもできます。そして、リフレーミングは訓練です。
二つ目のポイントは「時間軸」です。
すなわち、短期で捉えるか、長期で捉えるか、ということです。
ある実験によると、
「人は将来の大きな利益よりも、目の前の小さな利益を取ってしまう」
という結果が出たそうです。
つまり、待つのが苦手なのです。
モチベーションで苦労することのひとつは、長期的に取り組まなければならない課題に対して、行動を持続させることが難しいということではないかと思います。
この例としてわかりやすいのが、夏休みの宿題です。
子どもにとって、1ヶ月以上も取り組まなければならない夏休みの宿題は、とても気の長いプロジェクトです。
毎日コツコツやれば、1回あたりは数十分で終わるようなことであっても、「まだまだ時間があるし、今やらなくても十分間に合うだろう」と思い、夏休みに入るとすぐに遊びに夢中になってしまいます。
そして、あと数日で新学期を迎える8月の末になって、泣きそうになりながら1ヶ月半分の宿題にまとめて取りかかる羽目になるのです。(もちろん、ちゃんと計画的に自分を律して宿題をするお子さんもいらっしゃいますが)
が衝突した結果、遊びたい気持ちが勝ってしまうとこうなります。しかし、その結果最後に待っているのは、やってもやっても終わらない大量の宿題です。
よくよく考えれば、こうなることは簡単にわかりそうなものなのに、それでも「いま遊ぶ」という誘惑に勝てません。目先の快楽を優先させてしまうのです。
これは、必ずしも子どもに限った話ではありません。大人であっても、この習性を克服するのはなかなか至難の業です。
会議の前に慌てて作る資料。〆切が近づくまで後回しにしてしまう企画書。経理部から催促がきて急いでやる経費精算。大掃除の日が来るまで山積みになってしまうシュレッダー書類・・・などなど。
これらはみな、目先の楽を優先して、つい先送りにしてしまう象徴的な物事です。
こうした時に、向き合わなければならないのが、
「将来の大きな利益よりも、目の前の小さな利益を取ってしまう」
という人間の習性です。
これも焦点と同じで、まずは自分にもそういう気質があるということを、受け入れることからはじまります。
「すぐにやっておいた方が後で楽なのに、いま楽をしたい」という気持ちが沸いてきそうになったら、自分はいまこの習性に支配されてしまっているのだと、自分を客観視してみましょう。
ここまで、焦点のあて方、時間軸の捉え方について話をしてきましたが、そうは言っても「不快なものは不快だ」という感情が拭えないことが、現実にはあるかと思います。
そこで、最後のポイントとなるのが「自己肯定感」です。
不快な場面に直面した時、自分の存在を大事にしたいという気持ちは、自分を行動へと駆り立ててくれます。
具体的には、
といった気持ちです。
感じているのは不安、悔しさ、屈辱といった不快な感情ではありますが、それを正しい方向へとバネにしていけば、プラスの行動を生み出す原動力となります。
私自身のキャリアを思い返してみると、仕事のレベルが上がったと感じた時、壁を乗り越えたと思った時には、決まって職場の他の人に対する「今に見てろ」という反骨心があったことを思い出します。
職場の上司・先輩(特に、自分が好意を感じない相手)から「こんなの、簡単にできるだろ」などと言われようものなら、悔しさのあまり無我夢中で勉強したり、何度も取り組んだりしたものです。
今でこそ、そのおかげで成長できたと感謝を覚えますが、その当時は不快で仕方ありません。しかし、その不快な感情が「見返してやりたい」という気持ちとなって、自分をより高いレベルへと導いてくれたと思います。
これを発揮するには、自分自身の人格や人生を大切にする気持ち、すなわち「プライド」が必要です。
こうした気持ちが沸き上がってくるには、自己肯定感が高い状態である必要があります。
「自分に自信がない」「自分はこの程度だ」「自分なんかが・・・」
このように考えてしまうと、不快な感情がさらに意欲を減退させ、次第に何もできなくなってしまいます。負の連鎖が起きてしまうのです。
一方、自分の底力に自信を持ち、自分の可能性を信じ、自分という存在を大事にしたいというプライドを持っていれば、たとえ不快な感情を感じた時も、その状況を打開するプラスの行動へと向かうことができます。
もちろん、プライドは適度であることが大切で、それが過信や慢心につながってしまうと、自己を保身しようとする負の行動に向かってしまいます。
プライドを持つことと、謙虚さや誠実さを失わうことはイコールではありません。
他人に対する敬意は保ちつつも、自分自身を大切に思う気持ち。
それが、不快な感情を「快の行動」へと転換してくれる原動力となるのです。
以上、モチベーションをスキル化する2つめの要素として「感情のコントロール」についてご説明しました。
次回は、モチベーションをスキル化する最後の要素となる「行動のコントロール」についてお話いたします。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。