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2017.1.5
昨年、電通の若手女性社員が過労自殺した事件を機に、「働き方改革」や「ワークライフバランス」が一層声高に叫ばれるようになりました。
この動きは、2017年もより加熱していくことが想定されます。
あらゆる業界・業態・職種において、「生産性」を高めるための動きが活発になるだろうというのが、私の考えです。
先月の投稿「人手が足りない時に、人を増やしてはいけない」でも書いた通り、人口が減りゆく日本においては、人手不足をさらなる人員投入で対応しようとするのは、もはや限界です。
これからの時代は、
「一人あたりの生産性が高い企業(組織)と個人が生き残る」
そう断言しても決して過言ではないだろうと思います。
ロジカルシンキングやコミュニケーションなどのビジネススキルも、高いに越したことはありません。
しかし、どれだけ高いスキルを保有していても、価値創造に直結しない作業にばかり時間を奪われていては、会社も自分自身も豊かになることは困難です。
高いスキルは、価値創造に直結する業務で発揮するから意味があります。
どれだけ優秀な人材を揃えていても、不毛な仕事、不効率な仕事をしている限り、それが報われることはありません。
すべての働く人が、いま優先して身につけなければならないのは、
「自分の能力や時間を有効に活用するための、仕事と時間の管理能力」
ではないかと、考えます。
生産性の向上は、企業や組織においては
というメリットが期待されます。
一方、個人においても、
というメリットが期待できます。
生産性の向上は、企業の安定経営と個人の豊かな人生の両方を実現する、現代の重要課題なのです。
ここで、「生産性」とはそもそも何なのかについて考えてみましょう。
「生産性」という言葉はもともと製造業のマネジメントから生まれた言葉で、
生産性 = 付加価値額 ÷ 投入資源
と定義されます。
付加価値というのは、文字通り「付け加えた価値」を意味します。
例えば、「布」という材料を使って「服」を作った場合、その過程で発生する
などが「付加価値」に相当します。
製品と原材料の差分が、この仕事が生み出した「価値」になります。
製造業においては、付加価値の大きさは「品質」「価格」「納期」によって決まります。これを「需要の三要素」と呼びます。
一方、投入資源とは「機械」「材料」「人」を指します。これを「生産の三要素」と呼びます。
優れた設備(機械)を導入すれば生産能力は高くなり、良い材料を使えば製品の価値も高くなります。
人の量(人数)や質(能力)が向上すれば、機械や材料をより効果的に使用することができます。
つまり、
投入した「機械」「材料」「人」に対して、どれだけの「付加価値」を生み出すか
というのが、「生産性」のもともとの定義です。
しかし、これはあくまで製造業の定義です。
人口の7割以上が第三次産業を占める現代日本においては、このまま「生産性」を考えることができません。
例えば、「付加価値」については、販売・輸送・外食宿泊などのサービス業は価値を「付け加えて」提供しているわけではありません。提供する行為そのものが「価値」に値します。
また、ITサービスなど実体のないもの生み出す仕事は、プログラムなどの「情報」が提供する「価値」に相当します。必ずしも、原材料に何かを付加しているわけではありません。
それゆえ、付加価値額は「価値の創造量」と言い換えた方が適切です。
一方、投入する資源についても、製造業の定義をそのまま用いるのは不適切です。
例えば「機械」については、使用しているパソコンが5万円のパソコンでも30万円のパソコンでも、それによって生み出す価値が著しく変わるということはありません。
また、無形のサービスを提供しているならば「材料」はないに等しいと言えます。
営業職にしても、企画職にしても、事務職にしても、業務上用いるのはせいぜい「情報」で、提供しているサービスの大部分は「人そのもの」なのです。
したがって、投入資源については「機械」「材料」についてはほとんど考慮する必要はなく、考えるべきは「人」だけだと言えます。
厳密に言うと、人の「能力」と「時間」がこれに相当します。
まとめると、第三次産業の場合は、
生産性 = 価値の創造量 ÷ (人の能力 × 人の時間)
によって決まるのです。
そして、ここで留意しなければならないのは、
ということです。
能力は「知識 × 経験」によって培われますが、どちらも習得するのに時間がかかります。
そして、それ以上に問題なのは、多くの場合において、
価値創造に直結する仕事をする時間は、総労働時間のごく一部に過ぎない
ことです。
例えば、営業の仕事をしているならば、価値創造に直結する仕事(=本業)は「お客様との商談」のみです。
移動時間、提案書の作成、見積書や請求書の発行、社内のミーティング、日報の作成・・・など、お客様との商談以外の仕事はすべて「付帯業務」であり、これをしている間は1円の価値も生み出していません。
もちろん、これらの付帯業務も本業を行うために必要な仕事ではありますが、これらの時間が多ければ多いほど、本業に割り当てる時間は少なくなります。当然、その分だけ価値の創造量が減ることになります。
すなわち、生産性を考える上では、
(総労働 - 付帯業務)=価値創造に直結する業務
として、実質的に価値を生み出している業務(=本業)を算出し、
生産性 = 価値創造に直結する業務量÷ (人の能力 × 人の時間)
として、生産性を考えていく必要があります。
労働の総量を増やすには限界があります。能力を一朝一夕で向上させることも困難です。
したがって、生産性を向上させるために最も考えなければならないことは、
「付帯業務をいかに削減するか」
ということです。
言い換えれば、価値創造に直結する「本業」に、可能な限り集中することが求められるのです。
悲しいことに、どれだけやるべきことが多くて多大な労働時間を割いていたとしても、それが必ずしも価値の創造に直接つながっているとは限りません。
付帯業務を減らせば減らすほど、「本業」に割く時間が増えます。それが価値創造に直結します。
そして、「本業」としてやるべきことはそれほど数多くはありません。本来であれば、限られた1~2つの業務に集中すれば良いはずのです。
組織の肥大化や社会の動き(コンプライアンスなど)の影響で、付帯業務は著しく増え続けています。
場合によっては、丸一日が付帯業務だけで終わってしまうこともありえます。
そんな仕事の仕方をしている限り、企業も個人も、いつまで経っても豊かになることはできません。
これが、生産性向上に取り組む上での優先課題なのです。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。