自律型人材
2025.1.4
目次
ChatGPTの登場から2年が経過し、急速に普及する生成AIが私たちの仕事のあり方を根本から変えつつあります。これは一時的なブームではなく、新たな標準として定着していく「時代の転換」です。パソコンの登場によって仕事の仕方が変わり、スマートフォンの登場によって生活スタイルが大きく変わったように、生成AIを使うことが仕事や生活の標準になる時代をまさに迎えようとしていると言えます。
生成AIは仕事の効率を劇的に向上させ、主体性やチャレンジ精神のある人の仕事の成果を飛躍的に高めてくれるでしょう。一方、受け身の姿勢で、自分の意思で行動しようとしな「指示待ち人間」の仕事を、確実に奪っていくことになるでしょう。
定型的な業務、単純な業務、明確な正解がわかっている業務は、生成AIに委ねる時代がやってきます。これからの時代に求められる仕事の姿勢は、間違いなく「自ら考えて行動する、自律型人材」となるはずです。自律型人材こそが、AIをうまく使いこなし、AIの恩恵を大きく受けられるビジネスパーソンの姿なのです。
ここ数年間で、文章生成AI、画像生成AI、音楽生成AIなど、さまざまな分野で生成AIの技術が発展してきました。これにより、情報収集、企画、資料作成、診断ツールの開発といった仕事のスピードが飛躍的に向上しています。
AIは明確な指示に対しては、迅速に回答を出すことができます。ハルシネーション(幻覚)のリスクはあるとは言え、それは人間に仕事を頼んでも同じこと。少なくとも、現在のAIであれば、並の人間よりははるかに優れたアウトプットを高速に導き出すことができます。
しかし、AIにできるのは指示されたタスクの遂行に限ります。自分の意思で動くことはなく、ビジョンを描くことも、目標を設定することも、課題を見出すこともできません。究極の「指示待ち」なのです。
課題を発見し、創造的に解決策を考えること、それを実行することは人間の役割です。AIができるのは、あくまでも人間がやろうとする創造・意思決定活動の途中プロセスである「作業」の部分だけです。そして、課題を設定し、解決策を実行することは、まさに自律型人材の本懐なのです。
確かに、AIの普及によって、業務の効率は飛躍的に向上しました。かつては多大な時間を要した情報収集やデータ分析は、情報検索AI、データ分析AIを活用することで、瞬時に結果を得ることができるようになったと言えます。AIを活用すれば、多言語対応のコンテンツを短時間で作成することができ、グローバル市場での競争力を高めることもできます。事業のアイデアを数分で100個挙げることも、作業手順書を数分のうちに書き上げることもできます。
しかし、いずれも「人間がやろうとしていること」を代わりにしてくれているだけです。最初に何かをしようとする意思や欲求がなければ、AIは何もしません。
それを考えれば、あくまでもAIは「人間の能力を拡張してくれるもの」に過ぎず、「AIが人間の仕事を奪う」など被害妄想に過ぎないことも明白なのです。生成AIが仕事のスタイルを変えていく中で、AIを上手く取り入れ、より高度な仕事にシフトしていくことが、私たち一人ひとりに求められています。
生成AIの使用が前提となる時代においては、単に作業をこなすだけでは「仕事をした」と言えなくなります。AIに作業の指示を与え、AIが行った作業の成果を評価することが「人間の仕事」になります。
そのためには、次のようなスキルが求められます。
AIは指示がなければ何もしません。理想と現実の乖離から問題を認識し、解決すべき課題を設定するのは、人間にこそ求められるスキルです。
生成AIのポテンシャルを発揮するには、AIに対して適切な指示を出すスキルが必要です。こちらの意図をしっかりと伝えられるよう、構造的に、明確に指示を出すことが求められます。論理的思考力、言語化力を発揮して、AIに的確な指示文(プロンプト)を伝えることが重要です。
AIの作業結果を評価し、適切なフィードバックを行うことも重要です。AIは時に誤った情報を生成することもあり、誤りではなくともこちらの意図と異なる結果を導くこともあります。AIの生成結果を鵜呑みにせず、クリティカルシンキング(批判的思考)や分析力を発揮して結果の是非を判断する必要があります。
生成した結果が期待に反する場合など、AIを使用する上では、必要に応じて追加・修正指示を出すことが求められます。加えて、期待に合致するものを最初から導くのは、たとえ高いプロンプトエンジニアリングスキル(適切な指示文を記述する能力)を持っていたとしても容易ではありません。段階的にAIとの対話を進め、都度フィードバックを伝えていくことで、より精度の高いアウトプットを得ることができます。このプロセスを繰り返すことで、AIを最大限に活用できるようになるでしょう。
生成AIは情報処理や分析において圧倒的な作業スピードやクオリティを発揮しますが、その実態は文字列の統計的な処理に過ぎません。あくまで人間の知的作業を模倣、擬態しているものに過ぎませんし、分析や推論など一部の知的活動しかできません。
AIが決して持つことのない、感情や価値観こそが人間ならではの持ち味です。人間が持つ感性、直感、創造力こそが、AIとの違いを生み出すポイントだと言えるでしょう。例えば、ビジネスでは顧客の感情やニーズを理解し、共感を得ることが成功の鍵となります。ここには、たとえ生成AIがどれほど進化したとしても、人間の役割が残ることでしょう。
製品デザインやマーケティング、商品開発などの分野では、AIの分析力と人間の直感を組み合わせることで、より魅力的な商品やサービスを生み出すことができます。また、教育やカウンセリングのように、人と人とのコミュニケーションが重視される分野では、人間ならではの共感力が欠かせません。
加えて、AIが生み出したアイデアや企画を実行に移すのも人間の仕事です。情報空間で生成されたアイデアを、現実世界でどのように適用するかを考え、実行する。これは、情報空間にしか存在しないAIには決してできないことなのです。当然、過程で起こるであろう利害関係者との対立、モチベーションが低下したメンバーの動機づけなど、リーダーシップやコミュニケーションが求められる領域も、AIには決して介入できません。
その意味で、生成AIは私たち人間を、より「人間くさい」領域に集中させる存在でもあると言えるでしょう。
今後、生成AIの普及が加速する中では、これまでの仕事のやり方に固執することは、非常に危険だと言えるでしょう。生成AIを積極的に活用しながらも、自らの意思で考え、行動することのできる「自律型人材」こそが、これからの時代に求められる人材です。
企業においても、自律型人材の育成がますます重要な課題となります。どんなにAIが進化しても、社会を動かすのは人間です。自分ならではの強みを理解し、AIをうまく活用しながら新たな価値を生み出すことで、これからの仕事で活躍できるようになりましょう。
自律型人材として成功するためには、学び続ける姿勢が欠かせません。AIの技術は日々進化し、次々と新しいツールや手法が登場しています。できる限り最新の情報を取り入れ、柔軟に対応することで、AI時代においても価値を発揮し続けることができます。
また、他者との協力やコミュニケーション能力も重要です。AIを活用しながらも、チームとしての成果を最大化するために、人間同士の連携を強化することが求められていくでしょう。
AI時代においては、指示待ちの単なる作業者ではなく、自律的に行動し、創造的に価値を生み出す人材が必要とされます。あなたも、自律型人材としてのスキルを磨き、AIをうまく使いながらさらなる成長を遂げて、より輝かしいキャリアを築いていきましょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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