時間管理
2025.1.11
現代では、多くの人が仕事に追われ、忙しい日々を送っています。仕事だけでなく、家事や育児、地域の行事など、私たちは生活の中で様々な役割を担い、それぞれのタスクを同時進行で進めることが求められています。
「やるべきことが多すぎて、何から手をつけたらいいかわからない」と感じることも、決して少なくないことでしょう。すべてのタスクを完璧にこなそうとするのは現実的ではありません。だからこそ、優先順位をつけて、重要なことから取り組む必要があります。
優先順位をつける上では、「何をやるべきか」だけでなく、「何をやらないか」を明確にすることが重要です。人が一日に使える時間には限りがあります。すべてのタスクに対処しようとすると、結果的にどれも中途半端になり、自分が本当に得たいと思っている成果が得られなくなってしまいます。
このような状況を避けるためには、「時間をかけるべきタスク」と「時間をかけるべきでないタスク」を切り分け、限られた時間の中で最大限の成果を生み出せるように、適切に時間配分を行っていくことが求められます。
「時間をかけるべき仕事」と「時間をかけるべきでない仕事」を見極めるためには、「手段の目的化」に陥らないようにすることが重要です。目的と手段を混同すると、本来は時間をかけるべきでないタスクに時間を浪費する羽目に陥ってしまいます。
あなたは、上司から「そんなことに時間をかけるな」と指摘されたことはありませんか。私自身、若い頃は細部にこだわりすぎて、必要以上に時間をかけてしまっていました。特に、資料作成や会議の準備などに膨大な時間を割いてしまい、実際の成果を生む業務が後回しになってしまっていたものです。「仕事をしている感」はあっても、実際には価値を生み出さない仕事に時間を奪われている典型的な例だと言えます。
手段が目的化してしまうと、本来の目的を見失い、成果を生まない仕事に貴重な時間を浪費してしまうことになります。特に忙しい時ほど、「やるべきこと」と「やらなくてもいいこと」の判断が鈍り、不要な業務に時間をかけてしまいがちです。だからこそ、個々の仕事について、その目的を明確にし、無駄な時間を削減する意識が欠かせません。
あらゆる仕事は、大きく分けると「本来業務」と「付帯業務」の2つに分られます。
「本来業務」とは、自分が担っている役割に求められている成果に直結する業務のことです。企画、製造、販売、サービス提供など、付加価値を直接的に生み出す作業を指します。
一方、「付帯業務」とは、本来業務を遂行する上で運営・管理上発生する作業のことです。代表例として、書類作成や記録、ミーティングなどが挙げられます。
付帯業務が不要というわけではありません。組織として仕事をする上では、報告・連絡・相談をはじめとした情報共有は不可欠ですし、それが間接的に成果にもつながります。しかし、付帯業務にいくら時間をかけても、それが直接、付加価値を生み出すことはありません。
したがって、付帯業務はできる限り必要最低限の時間で済ませる工夫が求められます。例えば、段取りや事前準備を徹底して会議の時間を短縮する、テンプレートや定型書式を用いて書類作成を簡素化する、メールではなくチャットを使うなどして、コミュニケーションを簡潔にするなどの方法が挙げられます。
また、本来業務にかける時間を確保するためには、付帯業務を外部に委託することも有効です。例えば、私の場合、税務処理と社会保険手続きを税理士さんや社会保険労務士さんに一任し、自分は本業に集中するようにしています。コストはかかりますが、それ以上に稼ぎが増えるので、トータルでは利益が上がります。
何に時間を注ぐべきか。これは個人よりも、まず企業単位で考えてみるとわかりやすいです。
企業の活動は「つくる」「売る」「管理する」の3つの業務に分けられます。成果を直接的に生み出すのは「つくる」「売る」業務であり、「管理する」業務はそれを支援するものです。管理業務も重要ですが、そこに時間をかけすぎると、付加価値を生み出す「つくる」「売る」に時間が割けられなくなり、収益が下がってしまいます。
例えば、製造業で「管理部門」ばかりが肥大化し、「製造部門」と「販売部門」が手薄になってしまったらどうなるでしょうか。製品を作る人や売る人が少なくなり売上が低下します。そして、管理コストが増えて売上を食い潰し、収益が悪化してしまいます。逆に、管理業務を効率化し、製造と販売に多くのリソースを投入できれば、売上が向上し、利益を上げることができるのです。
個人の仕事においても、これと同じことが言えます。自分の仕事において、成果に直結する「本来業務」にできる限り時間を割き、その遂行に付随する「付帯業務」にかける時間を最小限に抑えるのです。
例えば、営業職の人がパワーポイントの資料作成やシステム入力に時間をかけすぎて、肝心の顧客との商談に時間を割けなくなってしまうと、明らかに営業成績は悪くなることでしょう。営業職にとって最も重要なのは、顧客との接点を増やし、提案機会を創り、受注を獲得して売上を立てることです。付帯業務を最小限にし、営業活動に集中することが、成果を上げるためには欠かせません。
製造や販売と異なり、求められる「成果」がわかりにくい管理部門の方々においても、この考え方を適用することができます。
管理部門の「本来業務」は究極的には2つの性質に収斂されます。1つは「経営資源の調達と運用」、もう1つは「リスクマネジメント」です。これに類するものは「本来業務」であり、それ以外のものは「付帯業務」と位置付けると判断基準は明確になります。
例えば、人事部門であれば、「優秀な人材を採用し、育成し、定着させること」が成果となります。給与計算や社会保険の手続きは確かに必要な業務ですが、それが人事部門の「成果」を直接生むわけではありません。そのため、それらの業務は可能な限り効率化し、最小限の時間と労力で遂行する仕組みを整えることが必要です。
本来業務と付帯業務の分類は、どんな業種や職種にも応用できます。どんな仕事にも必ず目的があり、成果があります。その成果に直結する仕事にできる限り時間をかけ、そうでない仕事には時間をかけない。これが時間管理の原則です。
私の仕事で言えば、「1人でも多くの方に研修サービスを提供すること」「経営者やマネージャーの方々に経営改善の助言をすること」が成果に直結する仕事です。そのため、研修やコンサルティングはもちろん、SNS投稿やホームページ更新など、将来の売上につなげるための情報発信には、時間をしっかり割いています。一方、先ほどの会計処理や税務申告、社会保険手続きなどに加え、定型的な業務、単純作業はどんどんアウトソーシングして、本来業務に集中できるようにしています。
組織レベルでも個人レベルでも、「成果を生む仕事」に集中することで、業務効率が上がり、業績が向上し、成功と成長につながります。あなたもぜひ、自分の仕事の目的と成果を明確にし、それに直結する業務に時間を割くようなセルフマネジメントを意識してみてください。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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