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2017.6.15
先週、ある企業様で新入社員フォロー研修の講師を担当せていただきました。
学生から社会人への転換を迎えた4月の新入社員研修から二ヶ月が経過。
仮配属先で少しずつ仕事や職場のことを覚えはじめ、抱えている不安や悩みも、
抽象的で漠然としたものから、具体的で明確なものへと変わりつつあるようでした。
不安や悩み、つまり問題の解決は、問題が具体的で、現象や対象が明確に定義されるほど、論理的・合理的に対処できるようになります。
これから見聞と経験を重ねて、職業人としての基本的な能力、そして専門的な能力を磨いていっていただけたら嬉しい限りです。
問題解決力を高めるためには、
の2つが必要となります。
論理的な思考力(ロジカルシンキング)は、分解と再構築によって問題の本質を構造的に捉え、合理的な解決策を導き出すために必要な能力です。
あらゆる問題は、
・問題の発生箇所の特定(where)
↓
・問題の原因究明(why)
↓
・課題の設定(what)
↓
・解決策の立案(how)
の順に考えることによって、解決に向かうことができます。
とはいえ、これは問題の解決策を導き出すまでのスキルです。
たとえ、理論理屈の上では何をするべきかが明らかになったとしても、いざ実行するとなると二の足を踏んでしまうこともあります。
こうした恐怖や不安が頭をよぎり、頭ではわかっていても、導き出した解決策を実行に踏み切れないということが起きてしまうものです。
そこで、問題解決の実践場面では、アイデアを実行に移すための力が別に必要になります。
その決め手となるのが、「未知への不安に対処する力」です。
心理学の用語に「コンフォート・ゾーン」という言葉があります。
コンフォート(comfort)とは、「快適な」「心地よい」という意味です。
つまり、自分にとって「快適な領域」「安心な領域」を指します。
これは、文字通り「快適で」「心地の良い」環境を表すこともありますが、
広い解釈をすれば「自分がすでに知っている領域」と捉えることもできます。
例えば、たとえ難易度が高くても、一度やったことがある仕事であれば、比較的安心して臨むことができます。
途中で困難に見舞われても、最後は成果に結びつけられることを記憶しているからです。
これは、その仕事が自分のコンフォート・ゾーンの内側にあることを意味します。
すなわち、記憶の中にあることは、たとえ困難でも自分にとっては安心領域なのです。
一方で、まったくやったことのない仕事、先例のない仕事には、心理的な負担がかかります。
進め方、スケジュール、成果の是非が不透明だからです。
レベルの高低を問わず、未知であるがため、不安や恐怖を抱えることになります。
知らないこと、つまりコンフォート・ゾーンの外にあることは、誰しも怖いものなのです。
しかし、だからといって、自分が経験したことばかり繰り返していても、自分の力量を現状維持するだけです。
自分の可能性を広げ、成長することにはつながりません。
同じ仕事を繰り返し続けていれば、経験が蓄積されてスキルが強化されるではないか、と思われるかもしれません。
ところが、それは「できることが、より早く正確にできるようになる」ことを意味するのであり、
「新たな問題に対応する力」に結びつくわけではありません。
環境変化の激しい現代においては、できることの品質や生産性を高めることも重要ですが、それ以上に、未知の出来事に対処する力が求められます。
そのために必要なのは、自分のコンフォート・ゾーンを広げて、知らないことに立ち向かう際の不安や恐怖を軽減する力なのです。
コンフォート・ゾーンを広げる方法は至ってシンプルです。
それは、
「毎日、何か新しいことを行う」
ということです。
事の大小はあまり考える必要はありません。
昨日までの自分にとって新しいことであれば、何でも、どんなレベルでも良いのです。
例えば、
など、比較的容易にできる「新しいこと」は無数にあります。
仕事においても、
など、すぐに試せることはいくらでもあります。
こうして、少しずつ新しいことに挑戦する習慣が、自分のコンフォート・ゾーンを広げることにつながります。
そして、それが次第に、「知らないことに対処する力」、すなわち問題解決の実行力につながっていきます。
新入社員の方々へは、研修の最後に
「どんなに小さいことでもいいから、毎日、何か新しいことに挑戦してください」
とお伝えしました。
私自身が、このコンフォート・ゾーンの考え方を知ったのは、つい数年前のことです。
過去を取り返すことはできませんが、少なくとも「今からは自分も未知への対応力を磨こう」と、できる限り、新しい仕事、新しい余暇の過ごし方、新しい人間関係を選ぶように心がけています。
しかし、キャリアを形成する初期の頃から、こうして問題への対処力を磨いていけば、怖いものなしです。
きっと5年後、10年後には組織や社会を牽引する素晴らしい人材になってくれるのではないかと期待できます。
先の不透明な時代だからこそ、これから求められるのは、確実なことを確実にやる人材よりも、不確実なことに挑戦できる人材なのではないかと思います。
新しいことをはじめましょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。