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人材育成

2025.4.25

今さら聞けないOJTの本当の意味〜成果につながる育て方とは〜

OJT、やっているつもりが「なんちゃって」になっていませんか?

こんにちは、小松茂樹です。今回は「今さら聞けないOJTの準備と進め方」についてお話しします。4月も後半になり、新入社員が職場に配属されてきた企業も多いと思います。

OJT担当に選ばれた若手・中堅社員の方、あるいは育成を任せる立場にある管理職の方にとって、今回のテーマはまさに今知っておくべき内容です。

多くの現場で「OJTをやっています」と言われますが、詳しく聞いてみると、「まず自分がやって見せて、新人にやらせてみて、うまくいかなかったらフォロー。あとは困ったら聞いてね」というやり方にとどまっていることがよくあります。

一見するとOJTに見えますが、これは本来の意味からすると不十分です。私はこうした状態を「なんちゃってOJT」と呼んでいます。このやり方では、目の前の作業だけを覚えることになり、仕事全体の流れや考え方、そして自分で考えて動ける力は育ちません。

本来のOJTとは、現場の実務を通じて一人前の社員に育てる「戦略的な育成プロセス」です。しっかりと目標を立て、計画を作り、定期的に話し合いながら段階的に成長を促していく必要があります。

OJTの本当の意味とは?定義を正しく理解しよう

OJT(On the Job Training)とは、「職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、育成の目標と計画を立てたうえで、日々の仕事の中で対話をしながら教えていく」という育成方法です。

よくある「なんちゃってOJT」では、「現場で仕事をやらせて終わり」になってしまい、育成の目標や計画、コミュニケーションが抜けていることがほとんどです。これでは、教えられる側が「何のためにこの仕事をやっているのか」「将来どうなっていくのか」がわからなくなってしまいます。

OJTを成功させるためには、「どんな力をつけてほしいか」「どんな社員に育ってほしいか」を明確にし、そのゴールに向けてステップを踏んで教えていく必要があります。

OJTの出発点は「育成のゴールを決めること」

まずは、どんな姿になっていてほしいのかという育成のゴールをしっかり決めることが大切です。たとえば、「1年後にはこのレベルの仕事が一人でできるようになっていてほしい」といった具合に、明確なイメージを持ちましょう。

ここでは、ただスキルや知識だけでなく、「社会人としてどうあるべきか」や「会社の一員としてどんな心構えを持っていてほしいか」といったマインドの部分まで含めて考える必要があります。

このゴールがないまま教えていると、1年後に「まだこんなこともできないの?」となってしまうのです。そして、それは教えられる側だけでなく、きちんとした計画を持って教えられなかった側の責任でもあります。

今の実力を見て、教える内容を明確にする

次にやるべきは「今の力を見極めること」です。新入社員といっても、学生時代の専攻やアルバイト経験などから、すでにある程度の知識やスキルを持っている場合もあります。

たとえば、情報系の学部を卒業した新入社員なら、ITに関する知識がある程度あります。一方、文系出身で同じ職種に入った人は、ゼロからのスタートかもしれません。

このように、スタート地点が人によって違うことを理解し、その差を把握することで、「1年間で何を教えて、どこまでできるようになってもらうか」が明確になります。こうして、OJTの具体的な内容が決まっていきます。

そのうえで「育成計画」を作っていきます。「何月までに何を習得するか」というスケジュールを月ごとにざっくり決めておくことで、進捗の確認や必要な調整がしやすくなります。

計画は教える側・教わる側で共有しよう

育成計画を立てたら、それを新入社員にも共有することがとても重要です。「こういう順番で仕事を覚えていこう」「1年後にはこんな姿になっている予定だよ」と伝えることで、新人に安心感を与えられます。

先が見えずに「今月はこれ、来月はこれ」と言われるだけだと、新入社員は不安になりますし、「この仕事を続けていて自分は成長できるのか」と感じてしまいます。それがやがて離職にもつながってしまうのです。

逆に、成長の見通しを共有することで、「この会社で頑張ってみよう」という気持ちが生まれやすくなります。だからこそ、OJTの最初の段階で計画を共有することは、とても大切なのです。

業務は「育成計画にそって」実践する

育成計画を新入社員としっかり共有できたら、次はいよいよ現場での実践に移ります。このとき大事なのは、ただ仕事を教えるのではなく、「計画にそって段階的に教えていく」ことです。

たとえば、「今月はこの仕事を覚えよう」と決めたら、それに向けて「今週はここまでできるようになろう」と週単位で目標を立てて進めていきます。そうすることで、新入社員も「今やっている作業が次の成長につながっているんだな」と理解しやすくなります。

こうして流れが見えてくると、新人の方も「この先はこうなっていくのか」「次はこういう力が求められるんだな」と考えるようになり、自分で工夫したり、前向きに取り組んだりする姿勢が育っていきます。

逆に、何の説明もなく「これやって、次はこれ」と指示され続けると、新人はただの“作業係”になってしまい、成長意欲もわかなくなってしまいます。数ヶ月、数年後に大きな差が出てくるのは、この「目的を意識した仕事の進め方」ができているかどうかにかかっているのです。

「毎日の振り返り」が成長を加速させる

仕事を教えるうえで、もう一つとても大切なのが「振り返り」です。できれば毎日、最低でも週に数回、新入社員と指導担当者が1対1で話す時間を設けるのが理想です。

時間がなければ、5〜15分程度でも構いません。大事なのは、「その日やったこと、できたこと、つまずいたこと、わからなかったこと」などを一緒に確認することです。

この時間を通じて、新入社員は「自分は何ができて、何が苦手なのか」を把握できるようになります。そして、次に取り組むべきことが明確になっていきます。

もし、ある仕事がうまくできなかった場合、その理由も一緒に探ります。そもそも知識が足りていないなら、そこは「教える」ことで補います。

でも、知識はあるのに応用できない場合は、「考える力」が必要です。そんなときは「どうすればよかったと思う?」「他にどんなやり方があったかな?」と問いかけて、本人が自分の力で気づくように導くのが効果的です。

こうした丁寧な振り返りがあるかないかで、新人の成長スピードは大きく変わってきます。

振り返りを習慣化するための工夫

とはいえ、現場は忙しく、毎日じっくり時間を取るのは難しいという声も多く聞きます。そんなときにおすすめなのが「振り返りの時間をあらかじめ決めておくこと」です。

たとえば、定時が17時なら、16時45分からは毎日ミーティングをする、と決めてしまうのです。こうすると、先輩社員も「その時間までに自分の仕事を片付けよう」と意識しますし、新入社員も「ここで先輩に質問できる」と考えながら仕事を進めるようになります。

あらかじめ時間を取るだけで、日々の業務の中に「学びの時間」が自然に組み込まれるようになり、育成のサイクルが回り始めます。これができる職場とできない職場では、やがて育成の質に大きな差が出てくるのです。

月に一度の「棚卸し」で成長のズレを正す

日々の振り返りに加えて、月に一度の「振り返りミーティング」もとても重要です。ここでは、その月に予定していた内容と、実際にできたことの差を確認します。

たとえば、「今月は3つの業務を覚える予定だったけど、2つはできた。1つはまだ経験できていない」といったように、計画と現実を見比べていきます。

あわせて、「このスキルは自信がある」「これはまだ少し不安」「これは経験していない」というチェックリストを使って、習得状況を整理していきましょう。これにより、次の月の育成計画を見直し、調整することができます。

最初の計画通りにいかないことはよくあることです。大事なのは、そこで立ち止まって振り返り、「今どこにいて、どこに向かうのか」を再確認することです。この積み重ねが、1年後のゴール達成につながっていきます。

「教える余裕」を作るのも仕事のうち

よく聞かれるのが「教育に時間をかけたくても、業務が忙しくて余裕がない」という悩みです。でも、ここで大切なのは、「余裕がない状態そのものが問題」だと気づくことです。

本当に育てたいなら、教えるための時間をつくる必要があります。そのためには、普段の業務を見直すことが大切です。たとえば、無駄な会議を減らす、手作業を効率化する、業務の標準化を進めるなど、教育の時間を生み出す仕組みが必要です。

OJTの質を上げるには、「教えることができる環境」をつくることもマネジメントの一部です。教育は負担ではなく、未来の投資です。

育成に時間をかけることで、新入社員の戦力化が早まり、最終的に組織全体の仕事がスムーズになります。すると、上司や先輩たちの負担も減っていきます。こうして、良い循環が生まれるのです。

まとめ:「育てる覚悟」がOJTを成功に導く

OJTは、ただの「仕事の教え方」ではありません。「計画的に人を育てていく」ための仕組みです。目標を決め、現状を把握し、月ごとに教える内容を整理し、日々・月単位でしっかり振り返る。このプロセスを繰り返すことで、新入社員は着実に一人前へと成長していきます。

大切なのは、「育てる覚悟」を持つこと。教える側が本気になれば、教えられる側も必ず応えてくれます。

「なんとなくOJTをやっている」のではなく、「成長の道筋をつくる戦略としてOJTを行う」。この意識を持つことが、これからの人材育成のカギになるのです。

そして、それを支えるのは日々の現場でのコミュニケーション、そして何より「育てる覚悟」です。教える側が本気にならなければ、教えられる側も本気にはなれません。

「OJTをなんとなく行う」のではなく、「育成戦略として行う」という視点を、ぜひ持っていただきたいと思います。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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