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自律型人材

2025.6.10

「なぜ指示待ち部下が増えたのか?」現場マネジャーが陥る3つのワナ

なぜ部下が指示待ちになるのかを深掘りする

今回は、多くの現場マネージャーが頭を抱えがちなテーマ、「なぜ部下が指示待ちになってしまうのか」について解説します。職場でよく見かける、つい無意識に陥ってしまいがちな3つの罠について、一つずつ分かりやすく説明していきます。


「うちの部下は自分の頭で考えない」「言われるまで動かない」「もっと主体的に動いてほしい」と感じている方には、部下に対するアプローチを見直すきっかけになる内容です。ぜひ最後までご覧ください。

指示待ちが生まれる典型的な職場の風景

まず少しイメージしてみてください。ある朝、若手社員が上司であるあなたのところにやってきて「この仕事ってどうやって進めたらいいですか?」と尋ねてきたとします。あなたは忙しい合間をぬって、「これはこういうふうにやって、これもこうすれば早いよ」とすぐに教えます。


その後、また別の部下が「この仕事、どう進めたらいいですか?」と聞きに来る。 「もうこれはこうやって、こう進めたほうが早いよ」とまた即答で指示を出します。こうしたやりとりが何度も何度も繰り返されて、一日が終わる頃には「今日はずっと指示ばかり出していたな」と感じることも多いのではないでしょうか。

これはおそらく、どこの職場でもよくある日常の光景です。部下が質問してきて、それに対して上司が答える。一見、何の問題もないように見えますが、実はこの繰り返しこそが、部下がますます「指示待ち」になり、自分の頭で考えなくなる原因にもなっているのです。

なぜ部下は自分の頭で考えないのか。極論を言えば、「考える必要がない環境」になっているからです。自分で考えなくても、聞きに行けばすぐに答えをもらえる。その繰り返しが、「自分で考える力」をどんどん弱めてしまうのです。

陥りやすい罠1:すぐに答えを教えてしまう

最初の罠は、「すぐに答えを教えてしまう」というものです。部下が「この仕事、どうしたらいいですか?」と尋ねてきたとき、親切心からすぐにやり方を教えてしまうことはありませんか?

一見すると丁寧な対応に見えますが、これが繰り返されると、部下は「わからなければ上司に聞けばいい」「質問すればすぐに教えてもらえるから、自分で工夫する必要がない」と考えるようになります。結果として、だんだん自分で考えることがおっくうになり、その筋力(=自律的に考える力)が弱まってしまうのです。

短期的には効率的に見えても、組織全体としては「上司が指示を出さないと動けない人ばかり」になってしまう危険性があります。理想は、マネージャーがいなくても自分なりに考え、行動できる人が集まったチームです。そのためには、すぐに答えを教えない場面を意識的に作ることが重要です。

部下の自律を促すために意識したいこと

最近、あなたも部下からの質問にすぐ答えてしまった経験はありませんか?もちろん、基本的なこと、仕事を進めるうえで絶対に必要な知識については、最初はきちんと教える必要があります。しかし、基礎が身についているはずの部下には、「これはどうしたらいい?」と聞かれた時、一度「自分ではどう思う?」「どう進めたらいいと思う?」と返してみてください。

もし「なぜ教えてくれないんですか?」と不満そうな顔をされた場合は、その理由や目的を伝えましょう。「全部こちらが教えてしまったら、あなた自身が自分で考える力が伸びなくなる。私がいないときに仕事が止まってしまう。自分なりに考えて行動できるようになってほしいから、一度自分で考えてみてほしい」と説明することで、納得してもらいやすくなります。

実際の現場では、たとえば「2分間、自分で考えてみて。わからなかったらまた聞きに来ていいよ」といった考えるための時間を意識的に設けるのも効果的です。この「2分ルール」は意外と使えます。頭の中に情報が入っていることなら、短時間でも答えが出ますし、もしまったく見当がつかない場合は、その時点で再度指導すればOKです。こうして少しずつ自分で考えてみる体験を積ませていくことが、部下の自律を促す第一歩となります。

陥りやすい罠2:正解を求めすぎる空気

次に陥りがちなのは、「正解を求めすぎる空気」が強い職場です。失敗が許されない、間違いがあってはいけない、上司の期待には必ず応えなければいけない―そんな雰囲気が蔓延している職場はありませんか?

例えば、部下が書類作成や資料づくりをするたびに、必ず上司に「これでいいですか?」と確認に来る。これは単に本人が自信がないから…というだけでなく、実は上司の好みや基準を探ろうとしている場合も多いのです。

論理的に「ここが良い・悪い」「基準はこれ」と説明できれば、部下も自分で判断できるようになるかもしれません。しかし、上司ごとのイメージの違いや、好みが強調されすぎると、部下は「結局、正解は上司しか分からない」となり、ますます自分で考えなくなってしまうのです。

職場に「一発でパーフェクトな正解を出さなければならない」という空気があると、誰もが失敗を恐れてチャレンジしなくなり、無難な答えばかりを求めるようになります。そうならないためにも、部下のアウトプットを認め、部分的な成功を評価しつつ、フィードバックを重ねて成長を促す姿勢が大切です。

ミスを恐れる空気が指示待ちを生む

前の段落でお伝えしたように、職場の空気が「失敗してはいけない」「間違いが許されない」といった雰囲気になっていると、部下はどうしても正解を探して上司に頼るようになってしまいます。

特に若手社員や経験の浅いメンバーほど、ミスを恐れるあまり何かあるたびに「これで大丈夫でしょうか」「ここはどう修正すればよいですか」と細かく確認に来るようになります。
この行動の裏側には、「自分の判断だけでは叱られるかもしれない」「上司の好みや評価基準が分からない」という不安があるのです。

そのため、本人が本当に分からないから質問しているだけでなく、実は上司の好みや期待値を探っている場合も少なくありません。「合っているかどうかは自分で考えてごらん」と言っても、そもそも何が正解かが不明確な環境だと、部下は不安ばかりが先立ってしまいます。

部下のチャレンジを認める雰囲気づくり

この問題への対処法のひとつは、完璧さばかりを求めず「60点、70点でもまずはやってみよう」という姿勢をリーダーが示すことです。部下が作ってきたアウトプットを一度認めた上で、「この部分とこの部分はよくできているね。ただ、ここはもう少し工夫できそうだよ」という形でフィードバックを重ねていきます。

まず「よくやった」「挑戦したこと自体が素晴らしい」といった承認を与えた上で、具体的な改善点を伝えると、部下も自信を失わずに次の行動に移りやすくなります。全否定せず、肯定的な言葉をはさみながらアドバイスするのが大切です。

逆に「これじゃだめ」「イメージと違う」「0か100かで判断する」といったコミュニケーションが続くと、部下はどんどん自信をなくし、ますます指示待ち人間になってしまいます。リーダー自身が「多少の失敗はOK」「トライすることが成長につながる」という空気を作ることを意識しましょう。

陥りがちな罠3:問いかけ不足と指示出し一辺倒

もうひとつの大きな罠は、「指示出し一辺倒」になってしまうことです。上司としては「これをやって」「あれもやって」「ここはこうしておいて」と的確に指示を出すことが多いでしょう。しかし、その背景や目的、なぜこの仕事が必要なのか、どう進めるのがよいのか、という問いかけを省略してしまうと、部下は「言われた通りやる」ことがゴールになってしまいます。

本来であれば、「この仕事のゴールは何か」「自分ならどんな手順でやるか」「どんな工夫ができるか」など、考えるきっかけを与えることが重要です。

例えば、「今度の会議でこういう発表をするから、この資料を作ってほしい。ちなみに、あなたならどんな内容を盛り込みたいと思う?」「この案件を進める上で気を付けるポイントは何だと思う?」といったように、具体的な問いを投げかけることで、部下は自分の頭で考える癖がついていきます。

少しずつ考える力を伸ばすアプローチ

もし、「うちの部下に問いかけても『分かりません』『できません』ばかり言う…」という場合は、最初から大きな期待をせずに、「指示の具体性」を少しずつ弱めてみてください。
これまで100%指示を出していた内容を、80%、60%、というふうに、少しだけ抽象度を上げてみるのです。

部下がどうしても分からない部分はその都度教えればOKですし、「自分なりに考えて進めてみる」経験を増やしていくことが大切です。「まずは一度やってみて、それでも困ったら相談してね」というスタンスで、少しずつ自律の芽を育てていきましょう。

部下の自律を促すには、日常的な問いかけと、考える時間・チャンスを与えることが欠かせません。これを意識して続けることで、必ず少しずつ「自分の頭で考えて動く」部下が増えていきます。

チャレンジの機会とフィードバックの重要性

部下が自分で考え、行動する力を育むには、失敗を極度に恐れない環境を作ることも欠かせません。ミスを完全に避けようとする空気や、上司の細かすぎる好みを満たすことだけが評価基準になる職場では、人は伸び伸びと考えられなくなります。

マネージャーは「まずはやってみよう」「自分の考えをぶつけてみよう」という空気を意識的につくり出し、多少の失敗やズレがあっても、「挑戦したこと自体が成長につながる」とフィードバックしてあげてください。

まとめ:自律型人材が増えることで組織は強くなる

今回は、現場マネージャーが陥りがちな3つの罠―「すぐに答えを教える」「正解を求めすぎる空気」「問いかけ不足」―を軸に、部下の指示待ち問題について深掘りしてきました。
部下が自分の頭で考えない背景には、本人だけでなく職場全体や上司のあり方が大きく影響しています。

もし自分の職場で「指示待ち」や「自律性の欠如」が気になったら、まずは問いかけの数を増やすこと、フィードバックの質を上げること、そして完璧よりチャレンジを評価する空気をつくることを意識してみてください。

 本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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