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リーダーシップ

2025.6.26

リーダーとしての自覚がない人を覚醒させる方法

ここのところ、企業の管理職や経営者の方から「リーダーとしての自覚がない中間層をどう育てるか」というご相談が増えています。特に、主任・係長クラスから課長代理・課長クラスの社員に向けて、「リーダーとしての自覚を持たせる研修をしてほしい」といったニーズが高まっているのです。

実際にお話を伺うと、リーダーになったにもかかわらず、プレイヤー時代と同じ感覚で仕事をしており、経営的・管理的な視点を持たずに業務を遂行している方が多く見受けられるそうです。役職がついても、名ばかりのリーダーで、意識はプレイヤーのまま。

そうした状態の方々に対して、「リーダーとしての自覚を持たせて欲しい」という話なのですが、たとえ私がプロの研修講師だとしても、ただ「自覚を持ってください」と伝えるだけでは、何も変わらないのが現実です。

「プレイヤー気分を抜け出せ」「リーダーの視点を持て」「意識を変えろ」と言ったところで、自覚が芽生えるわけではありません。本当に自覚を促すには、自ら気づいてもらうプロセスが必要なのです。では、なぜ役職が変わってもリーダーとしての自覚を持てないのでしょうか。その理由は非常にシンプルです。「リーダーとは何者なのか」「求められる役割や行動が曖昧で分からない」からです。

リーダー像が曖昧だと自覚は育たない

人は何かを期待されれば、それに応えようとします。しかしその「期待」が曖昧で、ふわっとしたものだとしたら、どう応えればいいのか分かりません。特に「リーダーなんだから」と言葉だけで済まされると、何を変えたら良いのかがわからず、結局今まで通りプレイヤーとしての動きしかしないのは当然です。

だからこそ、リーダーに対しては「やって欲しいこと」「果たして欲しい役割」を明確にする必要があります。曖昧な期待ではなく、具体的な期待値を伝え、行動に落とし込ませることで、初めてリーダーとしての動きが生まれるのです。つまり、リーダーとしての自覚を持ってもらいたいなら、「リーダーに求められること」を具体的に示すことが最も効果的なアプローチになります。

今回は、そうした期待役割をどう具体的に示すか、実際の研修で活用している手法を交えながらご紹介していきます。中間層に対して「もっと自覚を持って動いてほしい」とお考えの企業様、あるいはご自身がこれからリーダーとして活躍したいと考えている方にとって、きっと参考になるはずです。

リーダーの役割とは「変化への対応」である

まず根本の話として、リーダーとは何者なのかを言語化しておく必要があります。よく「人を引っ張る人」や「チームの先頭に立つ人」といったイメージで語られますが、それだけでは抽象的で具体的な行動に落とし込みにくいのです。そこで私が研修などでよく用いるのが、ハーバード大学のコッター教授のリーダーシップ論です。

コッター教授によれば、リーダーとは「環境変化に対応する人」です。世の中の環境や状況がもし変わらないのであれば、今までと同じことを同じように続ければよく、リーダーなど不要となります。しかし現実には、そのような環境はあり得ません。テクノロジーの進化、人口構造の変化、経済の不安定化など、変わらざるを得ない要因があちこちにあるのです。

その中で、事業を維持するだけでなく成長・発展させるためには、今のやり方を見直し、新しいやり方を創造していく必要があります。つまり「変革を推進する人」こそがリーダーであり、それが求められる理由なのです。

マネジメントとの違いを理解する

リーダーは、いわゆる「マネージャー」とも混同されがちですが、実際には役割が異なります。マネージャーとは、複雑な状況を整理し、経営資源(人・モノ・金・情報)を最適に配分する役割です。例えば、商品や取引先、従業員が多数存在し、状況が複雑化している場合、それを適切に管理し、成果を最大化させるのがマネージャーの使命です。

理想的には、少ない資源で大きな成果を出すこと。そのためには、効果的かつ効率的な意思決定と業務の遂行が求められます。そして企業の管理職は、この「リーダー」と「マネージャー」の両方の機能を担っていることがほとんどです。つまり、変化を推進する一方で、現実の資源を管理し成果を出すという、二重の役割が期待されているのです。

ちなみに、私の実体験で言えば、マネージャーとして最も重要な意思決定は「誰に何を任せるか」です。役割分担と仕事の割り振りによって、成果が大きく変わります。そのため、マネジメントにおいては採用や育成はとても重要な要素の1つだと言えるのです。

プレイヤーとの本質的な違い

では、リーダーとプレイヤーとは何が違うのでしょうか。プレイヤーは、与えられた業務を遂行し、個人の成果を出す役割を持っています。目の前のタスクを確実にこなす、いわば実務の遂行者です。一方、リーダーやマネージャーは組織の成果を上げることが仕事です。自分だけではなく、チームや組織全体を見て動くことが求められるのです。

リーダーとして昇格しても、プレイヤー気分が抜けない方は、「与えられたことをきちんとこなしていればOK」と考えてしまいがちです。しかし、リーダーとは本来「変革の推進者」であり、自ら問題を見つけ、未来を描き、新しいことに挑戦し続ける存在であるべきなのです。

そして、こうした役割の明確化は、可能であれば人事制度や評価制度と連動させるのが理想です。いくら変革を推進するように指示しても、評価制度が従来通りプレイヤー重視であれば、わざわざリスクをとって新しいことに挑戦する理由がなくなってしまうからです。

リーダーとして覚醒させたいのであれば、「プレイヤーとして優秀でも、変革に取り組まなければ評価が上がらない」といった設計が必要です。人間は、損得に敏感な生き物です。「やらなければ損をする」「やれば報われる」という仕組みの中で、ようやく行動が変わっていくのです。

自覚を促すには「自分ごと化」させること

とはいえ、こうした考え方をただ説明しただけで人が変わるなら、誰も苦労はしません。実際には、「リーダーの自覚を持て」と言われたところで、「なぜそれが必要なのか」が腑に落ちていない限り、人は動かないのです。頭では理解していても、「面倒だな」「変わりたくないな」と思ってしまうのが人間の本音でしょう。

そこで重要なのが、自分自身で「必要性」を実感してもらうプロセスです。私の研修では、「リーダーとメンバーの違い」や「それぞれに求められる成果・能力・行動」を、参加者自身の手で言語化してもらう演習を行います。

この演習を通じて、「自分はまだプレイヤー的な発想のままだったな」「リーダーとして任命された以上、視点を変えていかないといけないんだな」という自覚の芽が育ち始めるのです。上司や講師がどれだけ語っても、本人の中に納得感がなければ行動は変わりません。だからこそ、「自分で気づかせる」「自分で作る」ことが最も効果的なのです。

組織制度と結びつけるとより効果的

また、こうした「役割の違い」は可能な限り、人事制度や評価制度にも組み込んでいくべきです。

等級制度の中に、一般職・監督職・管理職といった階層を設け、それぞれに必要な行動・能力・成果などを明記しておくと非常に分かりやすくなります。「この項目を満たしていなければ、リーダーとは言えない」とはっきり示すことができるので、評価の基準が曖昧にならず、納得感のある階層設計につながります。

しかし実際の現場では、こうした制度が整っていない会社も多く見られます。だからこそ、私は研修で「自分たちでその期待役割を作ってみましょう」という演習を行います。

これにより、「リーダーとは何か」「メンバーとの違いは何か」「成果とは何を指すのか」を深く考える機会となり、自然と意識が変わっていきます。研修に限らず、社内での勉強会や昇格時の面談などでも、このプロセスを取り入れることで大きな効果が見込めるでしょう。

リーダーに求められる思考と行動

では、リーダーには具体的にどのような意識や行動が求められるのでしょうか。

まず大切なのは「問題解決力」と「イノベーション思考」です。リーダーは、現状に疑問を持ち、「このままではいけない」「もっとこうすべきだ」というあるべき姿を思い描き、その実現に向けて組織を動かしていく存在です。現状と理想のギャップを「問題」と捉え、それを解決していくプロセスを描き、周囲を巻き込んで実行していく。これこそがリーダーシップの本質です。

また、既存のやり方を改良する「改善」だけでなく、全く新しいアプローチに挑戦する「イノベーション」も求められます。改善は比較的リスクが低く、小さな成果を積み上げていく方法ですが、イノベーションはハイリスク・ハイリターンの取り組みです。失敗の可能性も高いですが、過去のやり方に縛られず、ゼロベースで構想を練り直す姿勢が、変化の激しい今の時代には必要不可欠だと言えるでしょう。

プレイヤーとリーダーの能力の違い

プレイヤーとしての役割は、実務を確実に遂行し、与えられた目標を達成することです。高い実行力や責任感、自己統制能力が求められます。そしてセルフマネジメントの力、報告・連絡・相談などの基本的な組織行動も不可欠です。

一方、リーダーには「思考力」と「対人能力」が強く求められます。論理的に、かつ多角的・批判的に物事を捉える力。そして、自分の考えを分かりやすく伝え、他者の意見を引き出し、調整・交渉していくスキルが必要です。

現場で起きている課題の本質を見抜き、必要な情報を収集し、戦略的に意思決定する。環境の変化に適応し、巻き込んでいく。こうした高度な能力が求められるのです。さらに、リーダーは「流れを変える人」でなければなりません。

職場の惰性やマンネリを断ち切り、新しい方向へと舵を切る。そのためには、多くのエネルギーが必要ですし、周囲からの反発にも向き合わねばなりません。そうした挑戦に耐え抜く胆力も、リーダーに求められる重要な要素です。

自覚は押しつけでなく「芽生えさせる」

最後に繰り返しになりますが、リーダーとしての自覚は「押しつけて」育つものではありません。本人の内側から「そうあらねばならない」という気づきがあって初めて、自発的な行動が生まれるのです。そのためには、「上からの指示」ではなく、「対話」「参加型の設計」「自分ごと化」が不可欠です。

私の研修では、「リーダーとして必要なことは何か」を一緒に考えるプロセスを大切にしています。たとえば、昇進直後の面談で「リーダーの視点とは何でしょうか?」と問いかけてみることからでも、自覚の種が芽吹くきっかけになります。

こうした取り組みを通じて、評価制度や昇格制度そのものを見直すことにもつながっていきます。「我が社のリーダーに求めることは何か」を明文化し、制度として定着させていくことができれば、組織の成長にも大きく貢献するはずです。

今回の内容を通じて、プレイヤー気分が抜けずに変わらない中間層にお悩みの方も、ぜひ一度、「期待される役割を明確にする」ことから取り組んでみてください。思った以上に、意識と行動が変わり始めるはずです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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