自律型人材
2025.7.22
私が研修講師として10年以上、900日を超える研修に携わり、延べ1万5000人以上の受講者と接してきた中で、「この人は間違いなく仕事ができるだろうな」と強く感じた瞬間があります。
もちろん実際の現場を見ているわけではありませんが、主催者である管理職や人事担当者からも「やはり彼(彼女)は仕事ができるんです」と言われることが多く、印象に残る受講者にはやはり共通点があるものです。
今回は、研修の場で「この人、きっと仕事もできる」と感じた瞬間トップ5をご紹介します。これから「第一印象を上げたい」「周囲に仕事ができる人と思われたい」と考えている方、また部下や後輩を優秀な人材に育てたいリーダーやマネージャーにも必ず役立つ内容です。ぜひ、最後までご覧ください。
仕事ができる人は、まず「挨拶の仕方」で他の人と明らかに違いが出ます。会場に「おはようございます」と入ってきても、誰に向けているかわからない小声や、そそくさと自分の席に座り黙々とスマホを見たり、開始までのわずかな時間でパソコンで作業を始める受講者が大半です。もちろん、それでもマナー違反ではありませんが、印象に残ることは少ないでしょう。
ところが、本当に印象的な人は、会場の入口で立ち止まり、部屋の中にいる全員に向かってしっかりと「おはようございます」と挨拶します。自分の席についたあとも、わざわざ講師の席まで来て、「今日はよろしくお願いします」としっかりと伝えてくるのです。実際にこのような挨拶を受けると、講師である私自身も「この人は違うな」と、開始前から自然と気にかけてしまいます。
挨拶をすることで嫌な思いをする人はいませんし、むしろその人の存在感は一気に高まります。こうした些細な行動ひとつで、その後の印象や関わり方にも大きな差が生まれてくるのです。
研修の休憩時間にも、仕事ができる人とそうでない人の差ははっきり出ます。
多くの受講者は、休憩に入るとスマホに没頭したり、黙々と昼食を取ってすぐにまたスマホ…という過ごし方をしがちです。一方で、優秀だと感じる人は同じテーブルや近くの受講者と積極的にコミュニケーションを取ったり、雑談や情報交換をしたりします。あるいは、わざわざ講師の元まで来て質問をしたり、意見交換を求めてきたりもします。
この「休憩時間の使い方」に、その人の主体性や「今この場でしかできないこと」への意識が表れます。スマホはいつでも使えますが、他部署の人と話したり、直接講師に質問できる機会は限られています。昼食の場でも同じ会社の人同士で話が弾んでいたり、他の受講者と新しい繋がりを作っている人は、やはり情報収集力や対人関係スキルに長けています。
こうした主体的な姿勢や柔軟なコミュニケーション能力は、職場でも確実に活きる力です。その場にしかないチャンスを逃さず行動できる人は、どの組織でも評価され、活躍するものです。
研修ではグループワークや個人演習を多く取り入れますが、ここでも「アウトプットのスピード」には大きな差が現れます。
例えば、「10分間でこのテーマについて自分の考えを書き出してください」と指示を出すと、筆がなかなか進まず、残り2、3分で慌てて書き始める受講者も珍しくありません。一方で、できる人は開始から数十秒で書き出し、考えながらどんどんアウトプットしていきます。
これは単に頭の回転が速いだけでなく、まずはアウトラインを素早く組み立てて、書きながら考えを深めるという「行動しながら思考する力」が備わっている証拠です。時間配分や逆算思考が身についているため、グループワークでもまずはホワイトボードなどに手早くアイデアを書き出し、役割分担を明確にしながら成果物を仕上げていきます。
一方で、アウトプットの遅いグループや人は、準備や話し合いに時間をかけすぎて、発表の時間が近づいてから慌ててまとめ始めることが多いです。結局、完成度も低くなり、発表でも「ここは書けていませんが…」といった説明が増えてしまいます。こうした仕事の進め方は、日々の業務のスピードや仕上がりにも直結するポイントです。
アウトプットのスピードと、ゴールから逆算して最短経路で段取りを組む力―これは確実に「仕事ができる人」の必須スキルと言えるでしょう。
研修のグループワークやディスカッションでは、成果を代表者が発表する場面が必ずあります。
ここで「仕事ができる人」と感じるのは、発表内容を驚くほど簡潔に話せる人です。こうした人は与えられた発表時間(例:3分)をきっちり守りつつ、要点をしっかり押さえた話し方をします。
多くの人は、どうしても全てを丁寧に説明しようとするため、発表が冗長になりがちです。書いてあることを全て読み上げてしまい、優先順位のつけ方や、どこに力点を置くべきかが見えていないことがよくあります。しかし、仕事ができる人は違います。成果物全体の中から「ここが肝だ」という部分を抽出し、抽象度をうまくコントロールしながら端的に伝える力を持っています。
具体的には、「ここは資料を見ていただければ分かりますので、今回はこのポイントに絞って説明します」といった話し方をします。限られた時間の中で、何を話し、何を省略するか。こうした情報の取捨選択や、全体を俯瞰する力が備わっているのです。
準備の大切さもここで明らかになります。発表の順番が来る前から、「この内容はどう説明すれば分かりやすいか」「自分の発表をどこまで掘り下げるべきか」などをしっかりとシミュレーションしている人は、本番でも落ち着いて話をまとめることができます。これができる人は、職場でもプレゼンテーションや会議進行を安心して任せられる存在です。
私が最も「この人は間違いなく仕事ができる」と感じるのは、研修で課される「事前・事後課題」にどれだけ真剣に取り組んでいるかという点です。単発の研修ではあまりありませんが、シリーズものの研修や長期間のプログラムでは、受講前・受講後にレポートや課題の提出を求めることが多くなります。
ここで決定的な差が出ます。仕事を言い訳にして「忙しいから」と課題を適当に済ませたり、期限を守れなかったりする人は、やはり現場でも同じ傾向を持っていることが多いのです。逆に、どんなに本業が忙しくても、与えられた課題をきちんとこなし、期日を絶対に守る人―そういう人は、例外なく現場でも信頼されています。
印象的だったのは、当社が行っている半年間続く自律型人材の週間チャレンジコースで、毎週欠かさず報告課題を提出し続ける受講者の存在です。24週間、1度も遅れることなく、しかも内容も毎回しっかりと考えられている。これは自己管理能力やリスクマネジメント力の表れでもあります。例えば、「忙しくて提出を忘れそう」と自分で判断したら、余裕を持って早めに課題を出してくる―こうした先回りの行動力は、現場でのトラブル回避や信頼構築にも直結します。
実際、課題の内容が並レベルだったとしても、「必ず締め切りを守る」「手を抜かない」「誠実に向き合う」といった姿勢そのものが高く評価されます。逆に、課題を軽視して適当に済ませる人は、どんなに普段の仕事ができていても、信頼感や成長意欲という点で差がついていくのです。
ここまで、「この人は仕事ができる」と強く感じた受講者の行動や姿勢について紹介してきました。まとめると、仕事ができる人には以下のような共通点があります。
これらは特別な才能ではなく、意識や行動習慣によって誰でも高めていけるポイントばかりです。研修の場だけでなく、日常の仕事や職場のあらゆる場面で活かせる基本的なことです。
ぜひ、このような基本を、きっちりと一つひとつ積み上げてみてください。その積み重ねが、確実に仕事の成果を上げ、あなた自身の「仕事ができる人」という評価と信頼をつくっていきます。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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