時間管理
2025.9.29
目次
時間は有限である。1日は24時間。時間を増やすことはできないので、限られた時間を有効に活用することが大切。
この前提のもとに、多くの人はより生産的で、効率的な働き方、生活の仕方を求めています。
近年では、若い世代を中心に「タイパ(=タイムパフォーマンス)」という言葉が広がり、とにかく無駄なことをせず、効率的に物事をこなそうという考え方が蔓延しているように思います。
しかし、この生き方は果たして本当に幸せなのでしょうか。常に時間に追われ、限られた時間の中で、より多くのタスクをこなそうとする。これを続けている限り、いつも何かに追われてる感覚に陥り、疲弊していくばかりです。
どれだけ効率的に物事をこなしても、決して「満たされる」ことはないでしょう。
時間的に、そして精神的に、より豊かに余裕を持って生きるためには、発想を変えてみるのも一考です。確かに物理的には、1日は24時間かもしれない。
しかし、過ごし方次第では、私たちは1日に24時間以上の価値を受け取ることができるのです。
私はこれを「一石二鳥時間」と呼んでいます。
一石二鳥時間には2つの意味があります。ひとつは「何かをしながら別のことを同時に行う」時間です。
例えば、通勤中の読書。通勤電車に1時間乗り、その1時間ずっと本を読んでいたとします。ここで得られた価値は、通勤1時間+読書1時間です。つまり、1時間で2時間の価値を産んでいるのです。
これは決して、30分ずつにはなりません。1時間の通勤をしたことも、1時間読書したことも事実だからです。「一粒で二度美味しい」時間の使い方なのです。
もうひとつの一石二鳥時間は「ひとつの行動に複数の意味を持たせる」時間です。どちらも日常の中で意識して取り入れると、仕事や生活の質が大きく変わっていきます。
例えば、友達と一緒にスポーツをするとします。これは、「運動」の時間であると同時に、「交際」の時間になります。やっている行為は1つですが、そこから2つ以上の価値を受け取ることができるのです。
このように、一石二鳥時間を過ごすことで、1日24時間から、「24時間以上の価値」を受け取ることができるのです。
個人的な話になりますが、私は今年から妻との競技ダンスを再開しました。最後に出た競技会が2014年なので、実に11年ぶりです。
競技ダンスは学生時代から始めました。卒業後もアマチュア選手として活動を続け、一時は週に4〜5日の練習をして、月に1〜2回の競技会に出場していました。バリバリの現役選手だったのです。
もともと東京で活動をしていて、2011年に前々職の転勤で大阪に移って、新しく探したダンスのパートナーが妻です。結婚後もしばらくダンスをしていましたが、再び転勤で東京に戻り、その後に転職してコンサルタントになり、やがて子どもができて、、、という中で、活動休止(引退と言った方が正確かも)になっていました。
開業して4年が経ち仕事が安定してきたこと、子どもが大きくなってきたこともあり、実に11年ぶりに再開することにしました。練習はできても1〜2回程度なので、以前のようにバリバリの上昇志向ではできませんが、気長に続ける趣味として復帰です。
再開したのは、運動するためでもありますが、最も大きな理由は妻とのコミュニケーションを増やすためでした。家庭にいると生活の中心が家事や育児に偏りがちで、「夫婦の時間」が乏しくなります。コミュニケーションが減っていくと、関係性にも影響が出てきます。子どもも生活も大切ですが、夫婦として「自分たちの時間」を確保することが必要だろうと判断し、実際に改善されていることを実感します。
このように、一石二鳥時間は「運動と人間関係構築を同時に満たす」ものとしても機能します。パートナーとの共通の趣味や、運動を兼ねた活動を取り入れることは、自分にとっても生活全体にとってもプラスになるのです。
一石二鳥時間の中でも、特に大きな効果を発揮するのが「ながら時間」です。特に、通勤などの移動時間では、スマホゲームやSNSに没頭するばかりでなく、学習や情報収集の時間に充てることをおすすめします。実際に、私が中小企業診断士の資格を取得したときも、この「ながら時間」を最大限に活用しました。
中小企業診断士試験は、およそ1,000時間の勉強が必要だと言われます、実際に多くの受験生が数年がかりで苦労して取得するそうです。私もコンサルティング会社に勤務するようになってから、中小企業診断士資格が欲しいと考えるようになりましたが、そう思う頃には案件も多くいただけるようになり、とても資格取得をするほどの勉強時間は確保できそうにないと、半ば諦めていました。
ところが、2020年の2〜3月にかけてコロナ禍が発生し、半年ほどの仕事がほぼ全滅になるような状況に陥りました。期せずして「まとまった時間」を手に入れることになったため、「いま逃したら一生挑戦できない」と考え、年内の資格取得を目標に掲げました。
教材を取り寄せたのは4月、一次試験は7月に実施でした。たった3ヶ月で7科目を合格ラインにまで乗せる必要があります。普通に考えれば、およそ無茶な挑戦です。しかし、私は日頃から研修で受講者の方々にお伝えしている「一石二鳥時間」の考え方を活用することで、これをクリアできるだろうと考えました。
購入したのは、動画や音声などの視聴覚コンテンツを中心とした教材です。講義動画を視聴し、過去問を解く。間違えが多かった領域を中心に、「耳で復習する」ことを徹底しました。講義パートの音声部分だけを抜き出したMP3(音声)ファイルが添付されていたので、それをすべてiPhoneに入れて、文字通り「朝から晩まで」聴き続けたのです。
掃除機をかけながら、料理をしながら、洗濯物を畳みながら、生活の時間はすべて耳からの学習。耳が疲れてきたら、テキストを読む、問題を解くなど目を使って学習。一区切りついたら、また耳から学習。これをひたすら繰り返します。さらに、当時は外出自粛の中で、運動不足の解消のためにランニングする人が増えました。私も走りながら講義を聞き、1日10時間近い勉強を毎日していました。
このように「ながら時間」で耳を活用することは、学習効率を飛躍的に高めます。読書は「主体的に読む」意識が必要ですが、音声学習はただ耳で聞いていれば情報が流れ込んできます。受動的でありながら知識を取り込めるため、勉強の「面倒くささ」が下がるのです。
その甲斐があってか、無事に(1科目はギリギリでしたが)7月の一次試験を突破し、12月のその後の二次試験も論述対策を続けて1年でストレート合格を果たすことができました。これは家族の協力があったことはもちろんですが、耳からの学習を軸に「ながら時間」を使い切った成果だったと思います。
現代はaudibleなどの音声配信サービスが充実しており、月数百円から学びを得られる環境があります。これを活用すれば、通勤や家事の時間を「学習時間」へと転換でき、1日を30時間に近づけるような感覚を得られるでしょう。
一石二鳥時間を考える上で欠かせないのが、ワークライフバランスの視点です。なぜ仕事と生活のバランスを考える必要があるのか。それは、仕事の時間は放っておくといくらでも膨張してしまうからです。空いた時間があれば、つい仕事を入れてしまい、自分の時間を犠牲にしてしまう人は少なくありません。
しかし、それでは生活全体が仕事に飲み込まれてしまいます。子育てや介護を抱える人に限らず、誰にとっても「自分の時間」を意識的に守る工夫が必要です。私はその方法として「予定を先に入れてしまう」ことを強く勧めます。夜に趣味の予定や家族との約束を入れておけば、自然と仕事を調整する力が働くからです。
ワークライフバランスを整えるためには、まず「仕事以外の予定を先に入れる」ことが有効です。
その中でも特に効果が高いのは、お金のかかる趣味を持つことです。月に1万〜2万円程度かかる習い事や定期的に予約が必要な活動を始めると、その予定を優先する意識が強まります。当日キャンセルすると費用が発生するため、「この日は必ず行こう」という意識が自然と働きます。
こうした仕組みを取り入れることで、ダラダラと残業を続けるのではなく、「今日は早く切り上げて趣味に行く」という区切りが生まれます。最初は週に1回からでも構いません。慣れてきたら週2回、3回と増やしていけば、仕事と生活のメリハリがより鮮明になり、日々に張りが出てきます。
実際、このように予定を入れている人のほうが結果的に仕事も効率的にこなせることが多いのです。
もうひとつの大きな工夫は「朝活」です。
私は出張がない日、基本的に夜9時には子どもと一緒に寝てしまいます。以前は子どもを寝かしつけてから夜に仕事をしていましたが、疲れが蓄積して長続きしませんでした。そこで思い切って生活リズムを切り替え、夜は早く寝て朝4時半に起きるようにしました。
家族がまだ寝ている時間はとても静かで、自分だけの集中できるゴールデンタイムになります。6時半に家族が起きてくるまでの約2時間を仕事や学習に充てることで、驚くほど効率的に物事を進められるようになりました。
夜の疲れた時間に無理をして作業するよりも、朝の頭が冴えている時間に集中したほうが、はるかに成果が出ると実感しています。
一石二鳥時間は、ただ効率的に時間を使うだけではなく、生活全体を豊かにするための考え方です。共通の趣味を通じたコミュニケーション、ながら学習による知識習得、耳からのインプットを活用した効率的な勉強法。どれも一見小さな工夫ですが、積み重ねることで大きな成果につながります。
さらに、趣味や朝活といった仕組みを生活に組み込むことで、仕事に時間を奪われすぎないバランスが生まれます。ワークライフバランスを守りながら、自分にとっての理想の生活を設計し、そこに必要な習慣を加えていく。この姿勢が、学びと成長を持続させる最大の秘訣だといえるでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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