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時間管理

2025.10.8

本当に重要な仕事を見極めるための判断基準

緊急度と重要度をどう判断するか

前回の続きです。私たちの仕事は、それぞれ「緊急度」と「重要度」という二つの軸で整理することができます。

緊急度はとてもシンプルです。日付や期限が設定されているかどうか、または放置した場合に誰かに悪影響を与えるかどうか。これが緊急度の基準です。明確な締め切りがある仕事や、日時の決まっている仕事、対応を遅らせれば誰かに迷惑がかかる仕事は、緊急度が高いといえます。

一方で、重要度はもう少し複雑です。自分にとっては「やらなくてもいいのでは」と思える仕事でも、上司や組織にとっては非常に重要である場合があります。逆に、上司から見れば優先順位の低い作業でも、現場の担当者にとって大事と思える仕事もあります。つまり重要度は、立場や視点によって認識が異なるため、多面的に捉える必要があるのです。

寓話「3人のレンガ職人」

では、どのように重要度を判断すれば良いのか。それをイメージしやすくするために有名な寓話があります。それが「3人のレンガ職人」という話です。

昔ある場所で、レンガを積んで壁を作っている3人の職人がいました。そこに旅人が通りかかり、彼らに「ここで何をしているのですか?」と尋ねました。

1人目の職人は「レンガを積んでるんだよ。単純労働だし大変なんだよ。なんでこんなことしないといけないのか。」と答えました。彼にとって仕事は目の前の作業そのもの、つまりレンガを積むことがすべてでした。

2人目の職人はこう答えました。「壁を作っているんだ。重労働だけど、これのおかげで家族を養っているんだよね。」。彼は作業の先にある目的を理解し、また生活の糧として仕事を認識していました。

そして、3人目の職人はまったく違う答えをしました。「歴史に残る大聖堂を作っているんだ。この教会が完成すれば、街の人々が集まり、祈りを捧げて、悲しみを祓うんだ。とても誇りある仕事だよ。」彼は作業ではなく、事業の目的を理解し、人々の未来や街全体に与える影響を見ていたのです。

視野の広さによる仕事の捉え方の違い

ここで重要なことは、3人ともやっている「作業」は同じだということです。しかし、その目的が違います。同じ作業をしていても視野の広さによって重要度の捉え方が大きく変わるのです。

1人目は与えられた作業だけをただこなすだけです。非常に視野が限定的で、目の前の作業しか見えていません。

2人目は少し視野が広がり、作業の目的を理解し、また家族や生活のためという自分の目的を持って仕事をしています。

そして、3人目はさらに大きな視野を持ち、社会や未来への貢献を意識していたのです。

やっている作業は同じ「レンガを積むこと」でも、見えている世界がまったく違うのです。3人目の職人は目的を理解し、作業の先を見ています。そのため、他の人が気づかない問題や課題にも先回りして対応できる可能性があります。結果として、より高い価値を生み出すことができます。

視座を高めることの大切さ

物事を俯瞰し、全体像を把握するためには、視野が広いことが求められます。しかし、視野は「広げる」ことはできません。

視野とは、目に見える範囲のことです。そして、その中で一点に焦点を当てたものが視点です。目に見える範囲には限界があります。より遠くを見ようと思っても、目の性能を上げて、高倍率で見ることはできません。せいぜいできるとしたら、反対側に立つことくらいです。つまり、「相手の立場」に立つことで、物事の見え方が変わることはあります。

それでも、目に見える範囲には限界があります。では、どうすればより遠くが見えるのか。その答えは「高い位置から見る」ことです。例えば、地上に立っていたら、1Km先を見るのも困難でしょう。しかし、高い場所から見れば、より遠くを見通すことができます。東京スカイツリーやあべのハルカスの展望台から見下ろせば、数十Kmを見渡すことができるのです。

ものを見る位置のことを「視座」と言います。広い視野を持つためには、視座を高めることが必要です。

例えば、新入社員であれば自分の担当業務しか見えませんが、主任や係長になればチーム全体、管理職になれば部門全体、経営者なら会社や業界全体を見ます。立場が上がるにつれて視座が高くなり、広い視野を持つようになるのです。

狭い視野で捉える重要度と、広い視野で捉える重要度は大きく異なります。そして、必ずしも実際に立場が上がらなくても、それを想像して、より高い視座から物事を見ようとすることで、視野が「広がる」のです。

時間軸によっても広がる視座

視野が広がるためのもう一つのアプローチは、「より先の未来」を見ようとすることです。

例えば、現場担当者にとって最も大事なのは、目の前の仕事でしょう。いま進行しているプロジェクト」を予定通りに進めることが課せられている仕事です。

しかし、管理職の立場になると、それだけでは不十分です。目の前の仕事を完遂させることはもちろん、その先の仕事を見据えて準備や根回しを進めておく必要があります。1〜3年後の目標を達成させるため、そこから逆算して、今のうちにやっておくべきことを先回りするのです。

さらに経営層になると、5年後や10年後の会社の姿を見据えて、いまのうちに必要な意思決定をしていくことが求められます。孫正義氏に代表されるようなビジョナリーな経営者は、50年先の未来を見据えて、いまの行動を決めています。

遠い先のビジョンを描き、そこから逆算していまを考える。これも時間軸に基づく「視座の高さ」であり、それは必ずしもトップ経営者ではなくても、誰にでもできることです。

目先と未来の両立

ただし、誤解してはいけないのは「目先のことを疎かにして良い」という話ではありません。

どんなに高い視座や長期的で広い視野を持っていても、日々の小さな仕事を丁寧に積み重ねなければ未来はつくれません。夢は大きく、足取りは一歩からです。今日の仕事をきちんと終えなければ、明日の成果は得られないのです。

ただし、1人目のレンガ職人のように目の前の作業にしか意識を向けないと、重要度の低いことに時間を奪われてしまうリスクがあります。

「締め切りが近いから」「今やらなければ怒られるから」と緊急性に流され続けると、将来に向けた投資活動に時間が割けず、長期的な成果を失うことになります。

だからこそ、短期的なタスクと長期的なビジョンの両立が欠かせないのです。すなわち、「夢と現実の両方を見る」のです。

まとめ

私たちが日々取り組む仕事は、緊急度と重要度という二つの軸で整理できます。

緊急度は期限や他者への影響で決まるシンプルな判断基準ですが、重要度は視座の高さ、時間軸の長さ、視野の広さによって認識が大きく変わります。

同じレンガを積む作業であっても、単なる作業と捉えるのか、壁づくりと考えるのか、街を支える大聖堂の建設と捉えるのかで、仕事の意味も価値も変わるのです。

視座を高め、長期的な視点を持ちながら、日々の仕事を進めていくこと。それが本当に重要な仕事を見極め、成果につなげるための鍵となります。

緊急性に流されるだけでなく、未来を見据えた判断基準を持つことで、自分の仕事はより意義深く、成果のあるものへと変わっていくのです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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