リーダーシップ
2025.11.7

目次
リーダーとして何をすべきか。多くの管理職・監督職が一度は悩んだことがあるテーマかと思います。それを考える上では、まず「リーダーとは何か」を定義することから始めてみましょう。
「リーダーとは何者か」については様々な定義がありますが、多くの説に共通するのは「リーダーは他の人に変化と影響を与える存在である」ということです。つまり、リーダーとは単に指示を出す人ではなく、周囲に影響を与え、人の心を動かし、行動を変化させる人のことを指します。
この「変化を与える力」がリーダーシップの本質です。そして、リーダーの影響はメンバーにモチベーションを与え、組織全体の生産性や成果に直結していきます。リーダーは、自らの言葉や行動を通じて、周囲にエネルギーを生み出す存在なのです。

リーダーとして成果を出していくためには、大きく3つの要素が必要です。それが「意識」「能力」「行動」です。これらは、それぞれ独立して存在しているわけではなく、密接に関連し合っています。
まず「意識」とは、仕事に対する考え方や姿勢、価値観を意味します。次に「能力」とは、スキルや知識、経験を指します。そして「行動」とは、実際にどのように動くかという具体的な実践や活動のことです。
リーダーシップを発揮し、メンバーを導くには、これら3つの要素がバランスよく整っていることが理想です。たとえば意識が高くても、行動が伴わなければ成果は出ません。逆に能力が高くても、意識が低ければ周囲を動かすことはできません。
このように「意識」「能力」「行動」は、リーダーシップを構成する三本柱のようなものなのです。
私は、リーダーとしての成長を考える際に、まず自分自身を客観的に見つめることが大切だと考えています。そのための第一歩として、意識・能力・行動の3つをそれぞれ自己評価してみるのが有効です。
例として、私が「リーダーシップ研修」で実際に行っている演習を1つご紹介いたします。まず、自分が理想とするリーダー像を思い浮かべます。これは実在の人物でも、架空の人物でも構いません。そして、その「理想のリーダー」が持っているであろう「意識」「能力」「行動」を3つずつ挙げます。
唯一絶対の答えはありませんので、あくまで「自分にとっては大事だ」と思うもので構いません。他人の答えと違っていても問題ありません。職種や立場が違えば、重視すべきポイントも異なるのは当然だからです。
そして、列挙した項目のぞれぞれについて、「自分はどの程度できているか」を5段階評価で自己評価してみます。一般的な水準を3としたとき、自分はそれより高いのか低いのか。直感的で構いません。その上、高いと思えば「なぜそう感じたのか」、低いと感じたなら「どんな点が足りないのか」を言語化していきます。
このプロセスを通じて、「理想のリーダー像」と現実の自分とのギャップを把握し、自分の強みや弱み、あるいはこだわりを認識することができます。

この3つの中で、リーダーが最も重視すべきなのは「行動」です。意識も能力も大切ですが、最終的に成果を生み出すのは行動だからです。どれほど優秀な人でも、実際に何も行動を起こさなければ成果は0です。
「成果の公式」という私の持論があります。仕事の成果は、まず「行動」によって生まれます。どんなに頭が良くても、どんなに知識があっても、行動しなければ何も変わりません。行動がゼロなら、成果もゼロ。逆に行動が1以上であれば、必ず何かしらの結果は出るのです。
そして、その行動の質やレベルを左右するのが「能力」です。同じ1回の行動でも、能力が高い人と低い人では得られる成果がまったく異なります。とはいえ、能力は誰にでも少なからず備わっています。少なくとも、社会人として組織に採用されてい人であれば、一定以上の基礎的能力はあるはずです。
重要なのは、その能力をどの方向に使うかです。能力を正しい方向へ導くか、間違った方向へ使ってしまうか。それを決めるのが「意識」です。
ここで注意が必要なのは、行動や能力とは異なり、意識だけは「マイナスの影響」を及ぼすことがあるという点です。
例えば、行動力が抜群で1日に数十人もの顧客と会話をし、商品知識や専門知識が豊富で、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力が高く、人心掌握に長けた・・・詐欺師。最後の一言が、それまで述べたすべてを台無しにしてしまいます。
同じ能力や行動でも、意識の方向が間違っていれば、マイナスの成果を生むということです。さすがに詐欺師は極端な例ですが、日常の中にも「マイナスの意識」というものがあります。
「こんな仕事やっても意味がない」「どうせ結果は変わらない」といった後ろ向きな意識で行動すれば、当然成果は上がりません。逆に、「楽しい」「面白い」「もっと良くしたい」「自分がやる意味がある」と前向きに取り組むことで、同じ能力と行動でも成果は大きく変わります。
つまり、成果は「意識 × 能力 × 行動」という掛け算で決まるのですが、この中で常にプラスの値を取るものは能力だけです。行動がゼロなら、成果もゼロになります。そして、意識がマイナスだと、成果もマイナスになるのです。

ここで大切なのは、意識と能力は「目に見えない」「大きさを測れない」ということです。したがって、意識と能力を直接コントロールすることはできません。
例えば、部下が同じミスを何度も繰り返す場合、上司は注意します。しかし、注意された部下は「気をつけます」「次から頑張ります」と答えるものの、翌日も同じミスをしてしまう。こうした状況は決して珍しくありません。
なぜそうなるのかと言えば、意識の大部分は「無意識」だからです。人の意識のうち、自覚できる領域(顕在意識)はわずか5%にすぎません。残り95%は無意識であり、自分の自覚がないところで動いていると言われます。つまり、「気をつけます」「頑張ります」といった言葉で表せる範囲は、全体のわずか5%程度にすぎないのです。
そして、その5%ですら、実際に確認することはできません。本当に気をつけているのか。注意しているのかは、他人からはもちろん、自分でも確かめることができないのです。したがって、「意識を変える」というのは非常に難しいのです。目に見えないものは、コントロールができないからです。
能力も同じです。コミュニケーション能力やリーダーシップ、行動力など、口では何とでも言えます。しかし、本当に能力があるのかどうかは、行動を通してでしか確認できないのです。「行動」というフィルターを通して初めて、意識や能力の実態が見えてくるのです。
意識と能力は目に見えず、直接コントロールできません。では、私たちは何をどう変えればいいのか。その答えは「行動」にあります。
行動だけが、私たち自身の意思でコントロールできるものです。意識は気持ちの問題であり、能力は経験の積み重ねによって徐々に育つものですが、行動は「今この瞬間に選択できる」ものです。たとえ意識が不安定でも、行動を選び取ることはできるのです。
目に見えるものは「成果」と「行動」の2つですが、成果は「結果」です。そして、結果そのものはコントロールできません。たとえば、野球部が毎日早朝から夜遅くまで練習しても、必ずしも甲子園に行けるとは限りません。勝負は時の運もあります。相手チームの実力や試合当日のコンディションなど、結果にはさまざまな要因が絡みます。
しかし、行動をしなければ結果を得ることはできません。「どうせ甲子園に行けるかいけないかわからないから」と練習を怠って「試合で奇跡が起きるかも」と願っても、勝てる確率は0%でしょう。行動しなければ、欲しい成果を得ることはできません。私たちが唯一、確実にコントロールできるのものは「行動」だけなのです。

では、行動さえすればすべてがうまくいくのかというと、そう単純ではありません。大切なのは「正しい行動」を積み重ねることです。正しい行動とは、目的や理想に沿った方向で、合理的な努力をすることです。これができれば、後から意識や能力が変化していきます。
車の運転を考えてみましょう。最初は誰でも下手な素人です。緊張しながら、一つひとつの操作を確認します。ミラーの角度、サイドブレーキ、アクセル、ブレーキこれを確認した上で発信し、車間確保や車線変更、駐車など、最初はすべて意識的に行うことでしょう。
しかし、何度も練習を繰り返すうちに、意識せずとも体が自然に動くようになります。つまり、特定の行動を繰り返すことで、無意識でできるようになることで、意識が変化し、能力が高まっていくのです。これはどんな仕事にも共通する原理です。
行動によって経験が蓄積され、積み重なった経験が意識を変えます。意識が変われば次の行動の質も上がり、さらに成果が出る。この循環を作ることが、リーダーとして成長する最も確実な方法なのです。
ここで改めて3つの要素の関係性を整理してみましょう。
まず、「意識」は行動の方向性を決めます。どんな価値観や目的で動くかがここで定まります。次に「能力」は、その行動をどれだけ効果的に、効率的に行えるかを決めます。そして最後に「行動」は、実際に結果を生み出す唯一の原動力です。
この3つは常に影響し合っています。意識が高まれば、行動の精度が上がり、経験を通じて能力も磨かれます。能力が上がると、より大きな行動ができるようになり、それが自信と意識の変化を生む。このようにして好循環が形成されるのです。
リーダーとして重要なのは、この循環を自分の中で回し続けることです。停滞すれば意識は鈍り、行動が減り、能力も伸びません。だからこそ、「まず動く」「行動を止めない」ことが、リーダーにとって最も大切な原理なのです。

正しい行動を積み重ねることで、意識と能力が変わり、成果が出始めると、人は大きく変わります。周囲から見ても、「信頼できる」「頼りになる」「一緒に働きたい」と感じるような魅力的なリーダーへと成長していくのです。
意識・能力・行動のすべてが高い水準で揃った人は、どんな組織でも強い影響力を持ちます。なぜなら、思考もスキルも行動も一致しており、言葉と実践に矛盾がないからです。こうした人の周りには自然と人が集まり、チームも前向きな雰囲気になります。
リーダーを目指すなら、まず行動から変えること。意識を変えようと考える前に、動くことを選びましょう。行動が変われば、やがて思考も変わり、結果も変わります。これこそが、仕事がデキる人の行動原理なのです。
リーダーに求められる3つの要素―意識、能力、行動。この中で最も重要なのは、「行動」です。行動によって経験が積まれ、能力が磨かれ、意識が変わります。そして、その積み重ねが成果を生み、リーダーとしての信頼を築いていくのです。
変わりたいなら、まず動く。行動こそが、意識と能力を育てる唯一の道です。今日からできる小さな一歩を積み重ねていきましょう。それが、自分を変え、チームを動かし、組織を変えていく最初の一歩になることでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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