目標達成
2018.11.8
いま製造業の企業様で人事制度改訂のご支援をさせていただいております。
制度設計にあたり根幹になるのは、職種や等級ごとの望ましい人物像です。どのような人を求めているか、どのような人になって欲しいかについて議論を交わす中で、挙げられるイメージのひとつに「問題解決力のある人」があります。
問題解決というと、たいそう難しいことをするように思われるかもしれませんが、経営層や管理職などの上位職だけではなく、現場レベル、担当者レベルでも問題解決はたびたび行われています。
例えば、共用している機械を使うタイミングが複数の人で重なってしまうと、行列ができて、
それぞれの仕事が停滞してしまうということがあります。それに対して、予約管理ボードなどを設けて使用予定を書き込むようにすれば、他の人と重ならないよう仕事の段取りを変えるなどして、全体としての生産性を高めることができます。
あるいは、日勤と夜勤の引き継ぎがうまくいかず言った/言わないの衝突が起こるようであれば、引き継ぎノートを使って記録に残すなどの方法が有効かもしれません。
問題解決力はさどんな職種や階層の方にも求められる能力です。ただし、上位職になればなるほど、より高い問題解決力が問われるようになります。その差は、問題のタイプの違いにあります。
そもそも、問題とは「現状」と「あるべき姿」の乖離によって生まれます。
本来はこうあって欲しいのだけど現実はそうではない、という差分が「問題」です。
例えば、あなたが新しい洋服が欲しいと思い、お店に行ったとします。
予算は10,000円。店内を眺めていると、とても素敵な洋服を見つけました。価格は12,000円。予算内に収まりません。
あるべき姿は価格12,000円。現状は予算10,000円。ここに「2,000円足りない」という問題が発生します。
問題解決とは、あるべき姿と現状を一致させることです。したがって、問題解決を行うには2通りのアプローチが考えられます。
現状を引き上げるアプローチとしては、予算を追加して12,000円にするという手が考えられます。あるいは、貯金を切り崩す、あるいは来月の予算から2,000円を前借りするという手があります(あまり良い選択とは言えないかもしれませんが)。もしくは、溜まっているポイントを使って、現金10,000円+ポイント2,000円=合計12,000円にすることも可能かもしれません。
あるべき姿を引き下げるアプローチとしては、店員さんと交渉して10,000円まで値切るという手が考えられます。または、インターネット通販などで同じ品が安価で売られているのを見つけられれば、そこから購入するという手もありますし、それを交渉の材料としてお店で買うことも可能かもしれません。
どんな問題であっても、問題解決の基本的な考え方は同じです。
ただし、あるべき姿と現状の所在によって、問題は下記の3つのタイプに分かれます。上位職であればあるほど、より難易度の高い問題に対応できる能力が必要になります。
問題には、下記の3つのタイプがあります。
現状とあるべき姿がともに明かになっている問題です。言わば「誰にでもわかる」問題と言えます。
例えば、売上目標に対して実績が追いついていない、時間外労働がオーバーしている、などです。私生活で言えば、予定よりも貯金が貯まらない、ダイエットが進まない、などです。
どこを目指せば良いのかが明らかなので、担当者レベル、現場レベルでも対応可能な問題と言えます。
問題の本質にある現状とあるべき姿が不明確になっている問題です。言わば「何かがおかしい」と感じるような問題です。
例えば、売上目標は達成しているが顧客からのクレームが増えた、生産量は上がっているが不良品が多く発生している、などです。
現段階ではそれほど大騒ぎするほどのことではないが、このまま放置しておくといずれ大きな問題に発展する可能性があります。
上記の例で言えば、売上目標達成のために手段を選ばず押し込み販売をしている、効率を求めるあまり作業手順を守らずに生産しているなど、結果に至るプロセスに問題があります。
現状とあるべき姿が明確ではないため、自ら問題意識を持ち、結果にいたる原因の本質を自ら探す必要があります。顕在型問題よりもさらに高い問題解決力が問われます。
職場において、ベテランや管理職などに対応が求められる問題です。
仲が悪いというわけではないけど、最近相手との話が盛り上がらない・・・など、恋愛関係や家族関係、友人関係にもこの種の問題が発生することもあります。
いまの段階では現状とあるべき姿が一致して「問題ない」状態にあるが、将来的にあるべき姿が引き上がることが予想されるため、いずれ問題と化すといったものです。
例えば、業界の中で競争が激しくなり、いまの主力製品がいずれ売れなくなることを考えて、新しい製品の開発を今のうちにはじめておかなければならない、などです。
あるいは、いまの幹部クラスが10年以内に定年退職するので、次の世代の幹部をいまのうちに育てはじめならない、といった例も挙げられます。
現時点だけを考えれば問題はないが、将来を考えてあるべき姿の水準を上げることで、「自ら問題を創り出す」というアプローチです。
この問題に対応するためには、将来を見据えて行動するという高い思考力、想像力が問われます。経営者や役員クラスに求められる高度な問題解決です。
将来のキャリアを考えて異動や転職を考える。子どもができた時のことを考えて、今のうちから貯金を積み立てておくなど、個人での生活においてもこの問題解決力が問われる場合があります。
問題解決力とは、目に見える問題に対応するというだけでなく、物事の本質を探ったり将来を予測したりといった、高度な洞察力や思考力を問われる能力です。
今後、定型的な仕事や簡易な仕事が人工知能などの次世代技術に置き換わることが予想されます。私たちには、これからますます、潜在型問題や創造型問題を解決する力が求められていくと言えるでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。