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ブログ

2020.12.7

「自分の頭で考えない」のは、○○がないから

「自分の頭で考えて欲しい」
「自分で考えて行動する人が欲しい」

企業の経営幹部や管理職の方とお話する時、若手や中堅クラスに対する要望としてよく挙がるフレーズです。最近に限ったことではなく、何年も前からずっと、自分で考えて行動する「自律型人材」があらゆる職場で求められています。コロナ以降リモートワークが普及した今となっては、この要望はきっとより強くなっていることだろうと思います。

今回は、自律型人材に求められる要件についてお話いたします。

自律型人材に必要なもの

私自身、何年も前から「自律型人材の育成」に興味を抱き、コンサルティングや企業研修などで様々なサービスを試行錯誤しながらご提供しております。最近やっているプログラムとしては、参加者に毎週、自己課題の目標を設定していただき、その結果をビジネスチャットに報告していただくというものがあります。目標を自分で決め、それを実行し、講師や参加者同士で承認しあうというプロセスを繰り返すことによって「自分で考えて、行動する」という習慣を定着させていこうという取り組みです。

構想は以前からあったものの、お客様のご理解やご協力を得て今年ようやく形になったプログラムで、まだ途中ではありますが、一定の成果を感じています。

参加者の方々は、それぞれご自分の状況に即した課題を自分の意思で設定し、その対策を自ら考え、実行に移されています。毎週の目標は達成できる場合もあれば、達成できない場合もあります。達成できないケースには、目標設定の失敗や計画の曖昧さが原因となるものもありますが、多くの場合が時間管理の失敗です。日々実践の中で、段取りやスケジューリング、タスクの調整などのスキルを身につけていくことによって、実行力を高めていくことができます。

課題の自主設定と実践、振り返りのサイクルを何度も繰り返すことによって、実行力のスキルは次第に身についていきます。したがって、毎週の個別課題が達成できたかどうかについては、私はあまり注視していません。重要なのは目標設定の方であり、「自分自身の課題を自分の頭で考える」ことがより難しく、より重要だからです。

自律型人材には、

  • 自分の頭で考える(課題設定力)
  • 考えたことを行動に移す(実行力)

の2つの要件が求められます。

両方とも大切な要件ではありますが、順序としては考える(課題を設定する)方が先になります。先に「自分の頭で考える」方ができていないと、実行段階に移ることができません。

自律して行動できるようになるためには、まずは自分の頭で考える力が必要です。そして、あくまで私の仮説ではありますが、自分の頭で考えられるかどうかを決定づけるものは「当事者意識の有無」にあるのではないかと考えています。

自分の損得でしか人は動かない

以前のことですが、ある企業様で業務改善のコンサルティングに入らせていただきました。参加者を複数のチームに分けて、各チームで改善したい業務をそれぞれ挙げていただき、計画を立てて自主的に取り組んでいただくというプロジェクト形式をとりました。あくまで実行するのは参加者の方々で、私は定期的にミーティングに参加して進捗を確認し、必要に応じて助言を申し上げるという立場です。

半年間の取り組みでしたが、プロジェクトの進捗はチームによってまったく異なるものでした。優れたチームは、計画を立てた後にすぐに実行に移り、その結果を記録して、集計・分析し、着実に構想を形にしていきました。当然ながら、取り組みの効果も顕著に表れ、時間や労力の削減、心理的な負担の軽減につながりました。

一方、プロジェクトが一向に進まず、ほとんど停滞したままの状態に終わったチームもありました。私の指導力不足も要因の一つにあるかもしれませんが、うまくいっているチームもあるわけで、この差は何なのだろうと当時かなり考え込んだものです。

目標を設定し、タスクを明確化して、具体的なスケジュールに落とし込むという流れは、他のチームとまったく同じです。まさに「後はやるだけ」という状態になっていながら、一向に前に進まないのです。

結論から言えば、そのチームが設定した課題は、本心から「自分の課題」と呼べるものではなかったということです。研修だからやっている、コンサルに言われたからやっている、会社の指示だからやっている。何かしら「やらなければならない」から、とりあえず「それっぽい」ものを課題に挙げて、「それっぽく」計画を立てた。きっとそんなところだろうと思います。

本心から「なんとかしたい」「解決したい」と思っているわけではないので、解決に向けたプロセスを考える時間も真剣度も不足していますし、チームメンバー同士の対話も不足しているので合意形成が得られていません。自分の意思が十分に反映できていないので、目標や計画が他人事になり、当然ながら活動にも身が入らない。すべては「当事者意識の欠如」が原因だと言うことができます。

その時に改めて思ったのは、結局のところ「人間は、自分の損得を実感できるものに対してにしか動かない」ということです。それをやることによって、自分が楽になったり、達成感を得たり、成長を感じたりといったメリットを認識すれば、必然的に実行に移ります。

逆に言えば、それが感じられない限り、自分の意思で動くことはありません。他人に言われたから「仕方なくやる」レベルの行動しかしないので、必要最低限のことしかしようとしないし、壁に当たったらそこでおしまい。軌道修正も改善もされることはありません。当然ながら、次第に停滞していきます。

もしその仮説が当たっているとすれば、何かを成し遂げるためには、その課題が「自分のこと」として認識できることが必要不可欠であるということです。自分事として取り組んでいれば、つまり当事者意識を持って取り組んでいれば、試行錯誤を重ねていく中で、実行力は後からついてくるものです。

「自分の頭で考えて欲しい」
「自分で考えて行動する人が欲しい」

もし組織の人材にそれを望むならば、まずは組織の事業や個々の仕事が、個人としてのキャリア形成にどのような好影響を与えるのかをしっかりと考えてもらったり、考える材料を提供したりすることが必要になります。

ビジネスの環境はどんどん高度で複雑になっています。指示命令で動いてもらえるレベルでなんとかなるほど、事業運営は甘くなくなっています。組織の構成員一人ひとりが「自分で考えて、行動する」自律型人材であることが求められますし、そういう組織でなければ生き残ることも困難になっていきます。

そして、自律型人材になれるか/なれないかの境目にあるのは「当事者意識があるか/ないか」です。だからこそ、これからの時代は、仕事の意味や意義が一層問われるようになりますし、組織の事業や業務内容と個人のキャリア観、欲求を関連づけて、一つひとつの仕事に自分の意思を反映させていくことが必要となるだろうと私は考えます。

あなたは、自分の仕事を、自分の意思でやっていますでしょうか。その仕事を通じて、自分が何を得られるのかをぜひ考えてみてください。どんな仕事にも、金銭+αの収穫があります。それは自分の解釈によって決まるものであり、仕事の意味は与えられるものではなく、自ら作るものなのです。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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