小学5年生の甥から「稼げる仕事」を聞かれたのでこう答えました

(写真は甥ではなく娘です)

先日、弟家族や母と一緒に動物園に行きました。転居を今月末に控え、気軽に会える距離ではなくなることもあって、妻たちが企画してくれました。コロナ以前は家に集合するスタイルが多かったので、ここ一年はなかなか集まる機会も作れていませんでした。屋外で久々の集合です。

久しぶりに会った甥っ子(小学5年生)から「お金を稼げる仕事」について聞かれたのですが、とっさの質問だったのでうまく答えることができず、翌日に改めてメッセージを送りました。あまりこういう切り口で考えることもなかったので、自分の考えを整理する良い機会となりました。

彼に送ったメッセージは下記の通りです。


昨日はありがとう。おかげさまでとても楽しい一日を過ごすことができました。また機会を作って、一緒に遊びにいきましょう。

さて、「お金を稼げる仕事に就きたい」という話について、昨日はとっさの話だったこともあって、うまく回答ができませんでした。申し訳ないです。改めて「お金を稼ぐ仕事」について説明します。

まず、最初にお伝えしておくと、稼げる「職業」というものはありません。なぜなら、同じ職業でも「稼げる人」と「稼げない人」に分かれるからです。これはどの職業でも同じです。

例えば、プロ野球選手でも、トッププレーヤーとして活躍する人もいれば、ファームで終える人もいます。YouTuberでも、チャンネル登録が何百万人にもなる人もいれば、数百人で止まる人もいます。同じように、物を作ったりする仕事、物を売ったりする仕事もでも、「稼げる人」と「稼げない人」に分かれます。

つまり、どんな職業に就くかはあまり問題ではなく、その職業で「稼げる人」になることが必要です。しげきさんの仕事はコンサルタントと言って、稼げない人が稼げるようにしたり、稼げる人がもっと稼げるようにしたりするお手伝いすることです。

お金を稼ぐこと自体は決して難しいことではありません。お金を稼ぐということは「人の役に立つ」ということです。なぜなら、お金というのは、人の役に立ったという功績が、後から形になって現れたものだからです。お金は良い仕事をした結果として得られるものなので、お金を追い求めていくとお金は逃げていきます。人の役に立つ仕事をすることで、お金が後からついてくるのです。

では、どうすれば人の役に立てるのか?そのためには、まず人が困っていることや望んでいることを見つける必要があります。人に関心を持ち、人を観察し、人の話を聞き、人に共感する。そこから、その人が困っていることや望んでいることを見つけます。それを解決してあげたり、実現してあげたりすることが仕事なのです。

そして、より稼げるようになるためには、より多くの人に役立つこと、より大きく役立つことが必要です。したがって、自分の才能を活かせることを仕事として選ぶことが大切です。才能とは自分がやっていて楽しいこと、上手にできることです。そして、才能は誰にでもあります。しかし、残念ながら、自分の才能が何なのかは他人が教えてくれません。自分で探す以外に見つける方法はないのです。

いち早く自分の才能に気づいた人は、早くから仕事で活躍することができます。一方で、自分の才能に気づかないまま、才能を活かせずに一生を終えてしまう人もいます。中には、自分の才能に合っていないことを仕事にしてしまい、うまく結果が出ないで苦しみながら仕事をしている人もいます。もしお金が稼げる仕事に就くことを望むのであれば、自分の才能に適したことを仕事にすることです。

自分の才能に気づくためには、いろいろなことに挑戦してみることが有効です。やっていて「楽しいと思うこと」「向いているな」と思うことは、自分の才能である可能性が高いです。必ずしもスーパースターと比較する必要はなく、純粋に自分が楽しい、おもしろい、得意だということを探せば良いのです。

世の中にはいろいろなチャンスがあります。まずは、選り好みせず、気になったことはどんどん試してみるといいでしょう。いろいろなことに挑戦しているうちに、「やっていておもしろい/つまらない」「うまくできる/できない」ということがだんだん見えてきます。自分が楽しくて、うまくできることを見つけることができたら、それを仕事に活かすことを考えてみると良いでしょう。そこで人の役に立つ仕事ができれば、お金は後からやってきます。

もちろん学校の勉強も大切です。考える力、書く力、話す力は、ないよりもあった方が、仕事がうまくいきます。知識や教養も、ないよりもあった方が良いです。賢い人は、賢い人同士の会話を好みます。自分が賢ければ、良い仲間、良い相手と仕事をするチャンスに恵まれます。しかし、勉強ができるということ以上に大切なのが、自分の才能を活かして、人の役に立つということです。

まずは、いま自分にできることで人の役に立つような生き方をしつつ、いろいろなことに挑戦して自分の才能を見つけてみると良いでしょう。

様々な経験を経て「才能」を自覚する

改めて読み返してみると、図らずもキャリア開発の鉄板フレームワークである「WILL /CAN /MUST」に基づいて書いていることに気づきました。

  • WILL:自分がおもしろいと思うこと
  • CAN:うまくできること、向いていること
  • MUST:人が困っていること、願っていること

書いている時にはまったく意識していなかったのですが、結果としてフレームワークでの記述になっていたのが自分でも驚きです。前向きに考えれば、それだけ自分の無意識に浸透しているのだと捉えることもできますし、何より本当に良くできたフレームだなと改めて実感します。

過去記事「その仕事は「何のために」しているのか ~キャリア自律の基本~」(2019.10.28)

WILLとCANが合致した領域を「才能」と表現したわけですが、世の中の働いている人の中で、この「才能」を発揮できている人が果たしてどれだけいるのだろうと思います。

メッセージにも書いた通り、才能はいろいろなことに挑戦し、試している中で見つけていくものです。私生活を通じても見つけられるものもあるとは思いますが、現実的に「仕事として通用するレベル」でうまくできること、向いていることに気づけるためには、様々な業種や職種の経験を積む必要があります。

就職活動の期間中に、いろいろな企業でインターンシップに参加すれば、運良く才能に気づけることもあるかもしれません。あるいは、大企業や企業グループに就職すれば、異動を重ねていく中で才能に気づけることもあるかもしれません。しかし、中小企業に就職したらそれほど異動の機会はないでしょうし、転職するにしても同業界・同職種への転職であればやることはさほど変わらないので、新たな自分の可能性に気づく機会は乏しいように思います。(実際のところ、同業界・同職種であれば「転社」しているだけであり、職業を変えたことにはなりません)

ジョブ型雇用は必ずしもキャリア形成に有効ではない

コロナ以降、職務領域を明確にした就労形態である「ジョブ型雇用」が注目を集めています。これに対して、総合職採用で役割がたびたび変更になる日本の従来型の雇用形態を「メンバーシップ型」と呼びます。ジョブ型雇用はリモートワークとも相性が良いですし、成果報酬の支払いも運用しやすいので、環境変化が激しい現代には好まれる就労形態だとは思います。しかし、当然ながら職務を規定したジョブ型雇用で働くということは、人事異動・配置転換は発生しなくなります。

いち早く自分の才能に気づき、それに基づくキャリア形成ができた方はジョブ型雇用でうまくいくと思います。しかし、必ずしも最初の就職段階で自分の才能に気づけるとは限りません。もし、自分の才能にそぐわない仕事へジョブ型雇用で従事するとなると、期待されている成果が思うように出せずに苦しむことになるのではないかと懸念します。

私はコンサルタント業や講師業は天職だと思っていますし、この仕事を続けられていることを本当に幸運に思います。しかし、この仕事が自分に「向いているかもしれない」と思ったのは35歳の時であり、それまでに2回の転職、兼務を含めて7回の人事異動を経ています。いろいろな仕事に挑戦させていただいたからこそ見出せた可能性だと思っています。少なくとも22歳の時の私には、自分がコンサルタントになる姿など想像もできなかったですし、そもそもこの職業の存在すら知りませんでした。まさに、クルンボルツ博士の言うプランド・ハプンスタンス(計画的偶発性)の結果であり、予期せぬ偶然の積み重ねによって辿り着いた道だと言えます。

過去記事「夢と現実を見て、計画された偶然を作り出せ!(前編)」(2016.06.10)

ジョブ型雇用が注目を浴び、普及していくことは決して悪いことではないと思います。しかし、皆が皆、学生時代までに自分の才能に気づけるとは限りません。社会人になってから「回り道」を繰り返す中で、自分の可能性に気づくケースもあるはずです。もちろん、転職を繰り返していろいろなことに挑戦すれば良いという考え方もできますが、実際には生活の安定性を確保する上ではリスクも高くなります。収入を確保しながらいろいろなことに挑戦できる方が、安心して仕事に打ち込める側面もあるかと思います。

その意味では、日本の従来型のシステムとされるメンバーシップ型の雇用システムには、人の潜在的な可能性を発掘するメリットもあるわけで、メンバーシップ型雇用が「時代遅れ」のような位置づけになってしまうことは決して望ましいとは言えません。最新テクノロジーなど人材の希少性が高い分野ではジョブ型雇用は適していると思いますが、それ以外の業種・職種について言えば、従来からの日本型雇用システムを維持していくことの方が良い面もあると考えます。

一方で、年齢が早い段階から自分の才能に気づける方が良いに越したことはありません。生徒や学生に対するキャリア教育も、私たちの頃に比べればずいぶんと進化しているようですが、知識として習得する以上に「いろいろなことに挑戦する」という実体験を積むことが望ましいです。

いまだ世の中は、失敗を回避して無難に物事に取り組む人の方が、高く評価される節があるように思います。風土や価値観の問題なので、そう簡単に変わるものでありませんが、少子高齢化・デジタル変革時代においてはイノベーションが必要であり、そのためには無難に物事をこなす人よりも、失敗を恐れずチャレンジする人の方が評価される風土・価値観を築いていくことが欠かせません。

若い世代はもちろん、人生100年時代にまだまだ働き続ける中高年世代も、自分の眠れる才能を見つけて仕事に発揮していくことが、社会に活力を与えることにつながります。そして、そのためにも、チャレンジする人がもっと尊ばれる世の中へと向かっていて欲しいと願います。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

   

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