外に出よう。体を動かそう。

先日、ある企業様の新入社員フォロー研修を担当してきました。

研修では、入社から半年間の振り返りを行います。演習の一つに、感情の変化のアップダウンを曲線グラフで表現するというものがあります(モチベーションカーブと呼びます)。楽しい・嬉しいなど肯定的な感情であればプラスのエリアに、辛い・悲しいなど否定的な感情であればマイナスのエリアに、感情のラインを描きます。

当然、同じ会社に勤めているとはいえ、一人ひとり配属先や業務内容も異なるし、私生活は千差万別です。描かれるグラフには個人差がありますが、今年は例年にはないある傾向が見られました。

なんかテンションが上がらない

参加しているほぼ全員が、現在の感情をマイナスに位置付けていたのです。

こちらの企業様で行う新入社員研修シリーズは今年で6年目。毎年この時期に描いていただいているので、例年の傾向もある程度は記憶しています。途中経過には個人差はあったとしても、現在の状態をプラスに捉える人の方が、マイナスに捉える人よりも多いのが通例でした。

今年は明らかに何かがおかしい。気になったので、その後で受講者の方々に「なぜ、現在マイナスなのか」と尋ねてみました。

  • 仕事が劇的に忙しいとか、キツイということでもない
  • 人間関係など環境面に問題があるわけでもない(むしろ、上司や先輩は親切)
  • 処遇面で何か不満があるわけでもない
  • プライベートで落ち込むことがあったわけでもない

どなたも、これといった理由が特に見つからないのです。聞けば聞くほど、よくわからなくなるといった具合でした。

しばらく話を続けていると、受講者の一人がこうおっしゃいました。

「特に何が不満とか辛いとかいうわけでもないんですけど、なんかテンションが上がらないんですよね」

これを聞いた時に、ハッと気づきました。何かの問題や出来事があって気分が下がっているわけではなくて、慢性的に気持ちが停滞しているのだと。

感受性が下がっている

今年の新入社員の方々は、昨年、学生時代最後の年に新型コロナウィルス感染に見舞われました。就職活動はオンライン、卒業旅行もなし、行事や飲み会なども軒並み中止。自粛ムードの中で学生生活を終えました。

入社した時には緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で、歓迎会なども特になし。先輩や同僚と飲みに行く機会もない。休日に友達と遊びに行く機会も激減。行ったとしても飲み食いは憚られる。そして、一日中ずっとマスク。

朝起きて出社して、仕事をして、そのまま真っ直ぐ家に帰る。休日も家にいることが多い。人に会う機会もめっきり減った。ただ淡々と流れていく毎日。遊びたい盛りの若い頃に、こんな日々を送っていてテンションが上がるわけがない。

つまり、感受性が乏しくなっているのです。嬉しいこと、楽しいことが激減し、世の中全体も暗いムード。感染に対するリスクももちろんあるでしょうが、それ以上に出歩いたり遊んだりして、周囲から白い目で見られる窮屈さの方がむしろ大きいかもしれません。

閉塞感に見舞われた日々が長期化し、気持ちが上がりにくくなっているのです。全体的にマイナスで描かれる方も少なくなかったですが、そう考えれば理屈は通る。決して何かがイヤとか辛いとかではない。でも、楽しくない。つまらないのです。

体が動けば、心が動く

もちろん、コロナウィルスを軽視するわけにはいかない。自分自身を感染から防御することはもちろん、感染を広げないために、感染対策は継続する必要はあるでしょう。しかし、外に出ない、人と会わない生活をずっと続けていけば、気持ちが滅入ってきます。長期化すればするほど、一層テンションが上がらなくなっていきます。

体の健康と合わせて、自分の心の健康を守るためにも、いま許される範囲の中で外に出たり、体を動かしたりすることが必要です。外に出ず、体も動かさず、誰にも会わないような日々が続くと「感じる力」がどんどん低下していきます。

体の動きと心の動きはつながっています。激しい運動をすると爽快感が味わえます。少し体を動かすだけでも血の巡りが良くなります。太陽の光を浴びるとビタミンDが生成されます。体を動かし、整えることが心を整えることにもつながります。

散歩やランニング、自転車もいいかもしれない。緑地の中で歩いたり走ったりする「グリーンエクササイズ」も有効です。忙しいと時には、お風呂上がりや寝る前に軽いストレッチをするだけでもいいかもしれない。いまYouTubeを見れば、インストラクターが動画で体の動かし方を教えてくれます。今の状況下でも、何かしらできることはあります。

ワクチンの摂取率が上がってきていますし、やがて徐々に緩和される方向にはむかうと思います。治療薬が開発され、潤沢に生産されるようになれば、コロナの収束も見えてるでしょう。さすがにいまの状態があと5年も10年も続くわけではないと考えれます。

本格的に動き出せるようになったその時に、自分の体や心がすっかり弱りきっていたら、たとえやりたいことがあっても、やり切る力がなくなってしまいます。それこそ、新入社員さんのようにこれから長きにわたって活躍していただく世代の方々が、ここで意気消沈して立ち上がらなくなってしまうのは非常にまずいです。もちろん、私も含めて、もっと上の世代もまだまだ長い人生が控えています。こんなところで気力や体力を失うわけにはいきません。

外に出ましょう。体を動かしましょう。感性が鈍らないようにして、いまの状況の中で楽しめること、嬉しいことを見つけていきましょう。それがきっと、いつか来るコロナ収束後に動き出せるようにするための、自分自身のメンテナンスになると私は思います。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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