【マイナビ学歴フィルターメール問題】新卒採用で学歴を判断材料にするのは通例です

先週、人材採用大手のマイナビが就職活動中の学生に対して不適切なメールを誤って送信したとの記事がネットの誌面を賑わせました。

「大東亜以下」メールでマイナビが謝罪 “学歴フィルター説”は否定(IT media)

“学歴フィルター” マイナビが理由を説明(日テレNEWS24)

詳しい内容は記事をご覧いただきたいのですが、端的に言うと、社内で暗に使用されていると思われる用語が誤ってメール本文に記載されて学生たちに配信されてしまい、その内容から学歴によってメール送信の有無や送信内容を分けているのではないかという疑惑があがったのことです。学歴によってふるいにかけて、残った者にのみ情報や機会が提供される。これを「学歴フィルター」として揶揄され、批判されています。当然、マイナビ側は当日中にメール誤送信について認めつつも、学歴で情報提供を差別していることは否定しました。

私自身、決して専任ではありませんでしたが、新卒採用を実務として携わっていた経験があります。また、現在はコンサルタントとして企業様と採用についての話を交わすこともあります。その点から申し上げれば、新卒採用では採用活動の初期段階で「学歴フィルター」をかけるのは至極当然なことです。それが正しいかどうかは別として、現実的に採用実務を進める以外には、現時点ではそれ以上に有効で合理的な方法がないからです。将来的に、AI(人工知能)などを活用して、応募者全員について詳細に情報収集や分析ができるようになれば、学歴フィルターはなくなるかもしれません。

しかし、考え方によっては学歴差別はむしろ「公平」ですし、ビジネスパーソンとして求める資質や能力を推し量る上で学歴が一つの目安になることもまた事実です。一定の学歴を取得するまでのプロセスに、仕事をしていく上で必要な能力も含まれています。もし投資対象にするような起業家を探すのであれば、学歴は不問で良いかもしれません。しかし、起業家ではなく「従業員」を採用するわけですから、いくら多様性の時代などと言われようと、あまりに型破りな人を採用するのは現実的には困難です。

一定のルールや制約の中で成果を上げられる人を求めます。受験競争を勝ち抜くことができたかどうかは、今後社員として活躍していけるかどうかを推測する上で、とても重要な判断材料の一つになるわけです。

応募者全員と会うのは無理

まず前提として、決して利用料金が安価とは言えないマイナビを利用できる時点で、ここで採用活動を行なっている企業は一定以上の規模があり、継続的に新卒採用を行なっている組織ということになります。中小零細企業では毎年のように新卒採用などできないので、当然こんな高価なサービスは利用できません。

一定以上の規模や知名度を持つ企業であれば、それなりの人数の応募があります。本来であれば、その全員と面会して、能力だけでなく人間性なども観察するのがベストかもしれませんが、企業側としても採用に割ける人数や時間には限りがあります。全員と面会するのが困難であれば、書類選考で人数を絞るほかありません。送付された履歴書やエントリーシート全員分に目を通して、文字通り書類で「選考」することができればそれも良いのでしょうが、実際にはこれもかなり困難です。

書類に目を通すのにも時間がかかります。全員分をすべてちゃんと読もうとしたら、かなりの時間を要します。仮に採用だけを任務としている方であったとしても、限られた期間の中で膨大な数の書類に目を通すのは決して容易ではなく、また集中力にも限界があるので、仮に読めたとしてもほぼ頭に入りません。事実上不可能だと言えます。そして、もし仮に集中力を保って全部に目を通せたとしても、その文章から能力や人間性を読み取るのは極めて困難です。文字に書くだけであれば、どうとでも書けるからです。時間をかけて完成度を高めることもできるし、表現の仕方によっては話を盛ることも可能です。

加えて、キャリアセンターやエージェントが履歴書やエントリシートの書き方を「指導」しているため、就職活動に熱心な人ほど書類の内容が、他の人と似たり寄ったりになっていきます。つまり、どれも優秀そうな人に見えてしまうのです。結局のところ、対面にせよオンラインにせよ、実際に顔を合わせて話してみないとまともな選考などできるはずもなく、限られた人員と時間の中で「誰と会って話をするか」を決めるためには、何かしらのフィルターが必要になるのです。

中途は実績、新卒は学歴を見るのは当然

これが中途採用であれば、書類選考は文字通り「選考」として機能します。募集している職種や立場で活躍できそうかどうか、本人のそれまでのキャリアを見ることによって、ある程度推測することができるからです。それでも最終的には面接してみないと判断はできませんが、経験や実績を見て明らかにミスマッチであれば、面接するまでもなく判断を下すことが可能です。

もちろん、中には経験や実績がなくても、採用したら活躍する方もいるかもしれません。その可能性はゼロではありませんが、どちらかといえば期待はずれに終わることが多いです。何より過去の経歴に関係なく活躍できそうな人は、異業種や未経験であったとしても、これまでの実績の中で何かしら目にとまるポイントがあります。それで十分、会ってみる価値があると判断できます。

しかし、新卒採用の場合は実務経験がありません。それまでのキャリアから、活躍できる可能性(ポテンシャル)を判断することがそもそもできないのです。長期間のインターンシップに取り組み、実務に関与して何かしらの実績を上げたとしたら、それは加点材料にはなるかもしれませんが、それだけで入社した後に活躍できそうかどうかを判断するのは困難です。長いと言っても数ヶ月程度の間です。それも実際には稀で、インターンシップの多くは数週間から数日程度の話です。加えて、限られた期間のインターンシップで、学生さんが一定の学習経験と満足度を得て帰ってもらえるよう、受け入れる側もしっかりと準備を整えています。こう言ってはなんですが、お膳立てした場所で活躍できるのは、言わば当然の話です。

同様に、アルバイト経験も「職歴」としてはほとんど機能しません。学生さんからすればアルバイトを職務経験として主張したいと考えると思いますが、社会人を数十年やっている身からすれば、アルバイトに任せられる仕事の範囲はかなり限定的であり、ほとんどが定型的な業務です。また、どんなに長くても数年程度(しかもパートタイム)の話です。ないよりはあった方が加点材料にはなりますが、それだけで正規社員・職員として活躍できるかを推し量ることは難しいです。となると、結論としては学歴以外に判断材料がないのです。アルバイトや部活動にどれだけ注力していようと、学生の本分はどこまでいっても「学業」であり、応募者がどのような物の考え方、取り組み方をするかを一目で判断できるものは、残念ながら学歴しかないのが現状です。

捉えようによっては、学歴ほど公平なものはありません。家柄や人脈などに影響されず、実力勝負で評価されます。親の収入が高い方が学歴が高くなるという研究もありますし、塾や予備校などへ投資できるかどうがで大きな影響を受けることは否めません。しかし、高所得世帯の子ども全員が高学歴であるわけではなく、低所得世帯から高学歴が生まれないこともありません。厳しいようですが、本人の問題でもあります。

大学受験で考えるならば、高校3年間という限られた期間に、志望校合格という目標を達成するために、どのような戦略と計画で取り組んでいくか。過去問を分析したり、勉強のスケジュールを立てたりして、目標達成に向けて資源(時間)を戦略的に投下していく。これは社会人に求められる能力そのものです。そのプロセスをも検証できたら良いのでしょうが、現実には困難です。結果で測るしかありません。したがって、学歴評価にならざるを得ないのです。

加えて、これを言ってしまっては身も蓋もないのですが、「学歴が高い人の方が優秀な人である可能性が高い」という命題が経験則として成立します。私は年に4〜5社ほど、新入社員研修の講師を務めておりますが、高学歴者を採用している企業の受講者ほど、講義の理解度、演習のクオリティが高いことは否めません。学歴がすべてではなくても、優秀な人材を効率的に採用しようとしたら、学歴で判断した方が「ハズレが少ない」のです。

ひとたび社会人になったら実力と実績がすべて

ただし、ここまでの話はすべて、「大企業の新卒一括採用の採用時点」での話に過ぎません。決して学歴偏重を礼讃するものではなく、現実的に可能なスケジュールの中で効率を重視すると、学歴に頼らざるを得ないというのが実情だということです。

ひとたび働き始めたら、その後は実力と実績がすべてです。学歴によって昇進、昇格、賞与が決まることなどありません。転職するにあたって学歴を見られることも、ほぼないと言えるでしょう。当然にして、経歴と実績を見て判断することになります。たとえ新卒採用時に学歴で不遇だったとしても、社会に出てからの働きぶりによっては、それを補って余りあるほどのものを得ることができます。金銭的な報酬はもちろん、仕事の充実感や能力発揮の機会なども、経歴と実績、仕事への取り組み姿勢などによってもたらされます。

仮に高学歴によって、一般的に良いとされている就職先に勤めるようになったとしても、そこで懸命に働き、成果を上げることができなければ、処遇は頭打ちになります。学歴フィルターは一見問題のように見えても、それはあくまでスタート地点をどこにセットできるかということだけであり、その後の数十年にわたる長い職業生活においては、学歴が影響を及ぼす場面はほぼ皆無と言えるでしょう。

いまや市場全体が人材難になっています。日本は少子高齢化がますます著しくなるため、良い人材は常に不足している状態になります。かつては新卒入社でしか入れなかった企業であったとしても、プロフェッショナル枠として中途採用で入社できる状況になっており、今後ますますその門戸は開かれることでしょう。何より、経済環境と価値観の多様化によって「良い会社」の定義も変わってきています。

良い人材は、どこの業界でも常に不足しています。10年前、20年前と比べれば、門戸はかなり開かれています。そして、社会に出た後で学歴を問われることは、よほど専門的で研究色の強い仕事でもない限り、ほぼありません。実力と実績がすべてです。良い仕事に巡り合い、良い環境、望む報酬を得るためにも、真摯に仕事に打ち込んで腕を磨き、代わりゆく社会の中でも優秀な人材で居続けることが重要です。そして、そこには学歴フィルターは介在しません。本人の意欲と姿勢、努力のみが結実する世界なのだと私は思います。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

   

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