若手社員が主体的・自律的になるために必要なことを考えてみた(前編)

毎年1月から3月は来期に向けた提案シーズンです。お客様が次年度の予算編成を行うのがこの時期なので、特に教育予算にかかわる研修業務の提案が集中します。ありがたいことに、お声がけを多くいただき、連日研修プログラムの企画を考え、提案書を作成しています。

今年お声がけいただく研修案件のオファーは、

  • 若手社員の主体性、自律性
  • 管理職やベテランのコミュニケーション

が多い印象です。

もちろん、以前からあるような王道のテーマではありますが、今年は特に多い気がします。コロナ禍も3年目に突入し、リモートワークをはじめとしたコミュニケーションロスの問題がますます顕在化しているからかもしれないと勝手に思っていたのですが、お客様によくよくお話を伺ってみると、どうやらそういう問題ではなさそうです。むしろ世代ごとの意識や価値観の差が、ここにきて一層浮き彫りになっていることが原因として挙げられそうです。

あくまで私見ではありますが、いまの新入社員、若手社員の方々は、過度に楽観も悲観もせず、自分にとっての幸せな生活を営むべくやるべきことを淡々とやるというような印象があります。彼らは生まれた時からすでに失われた30年にいます。経済成長はもはや期待できず、少子高齢化社会では永遠のマイノリティ。夫婦共働きでワークライフバランスも志向しており、仕事と私生活の両面で「それはそれ、これはこれ」という線引きができているように思います。

一方で、スマホネイティブで、欲しい情報には容易にアクセスできる上、SNS上で自分と価値観が会う人や自分の好きな人とコミュニケーションが取り合える。嫌いな人や苦手な人と無理をしてまで付き合う必要はないと、人間関係を割り切って考えることができます。加えて、チャットやメッセンジャーなどのテキストコミュニケーションに慣れているため、明確で整然とした意思疎通を好みます。仕事中心、会社中心、対面コミュニケーション中心であった旧来の日本企業型文化とは、いよいよ本格的に相容れなくなってきたのだと思います。

優先すべきは管理職のコミュニケーション力強化

「若手社員の主体性、自律性」と「管理職やベテランのコミュニケーション」は互いに連動しています。両方とも改善すべき課題ですし、当然、両方に手をつける方が望ましいです。とはいえ、教育予算の配分などの問題で、このうちどちらかを選択しなければならないという場面がしばしばあります。その際、私は迷わず「管理職やベテランのコミュニケーション」を選択するようお勧めしています。優先すべきは間違いなく上席者の方です。

ところが、どちらかというとお客様は若手社員の方を選びたがる傾向があります。早期戦力化や離職防止のため、若手社員に投資をしたいという意向はわかります。加えて、もはやベテランの意識や行動を変えるのは困難だろうという諦めもあるかもしれません。とはいえ、本当に職場の問題を解決したいとしたら、立場が低くて弱い若手の方を強化したとしても、上席者である管理職やベテランの方が何も変わらなければ、結局は何も変わらないのです。

若い世代は本当に消極的なのか

私は研修講師として、毎年複数の企業の新入社員や若手社員の方々にお目にかかっています。最近では若手社員の方々と1対1の面談をするという機会をいただき、労働環境やご自身の心境について深く掘り下げて話を伺うこともできました。あくまで自分の知りうる範囲での話ですし、もちろん個人差はありますが、若い世代の方々が必ずしも受動的だったり、消極的だったりするわけではありません。

多くの方々は自分の考えや意志を持っていますし、自分の考えに基づいて仕事をしたいと望んでいます。自分の発案に耳を傾けてくれたり、認めてくれたりしたら喜びます。自分の意見が尊重されたら嬉しいと感じます。そして何より、自分の将来のキャリアを考えて、成長したい、仕事ができるようになりたいという意欲を持っています。本来的には、十分に主体的で自律的なのです。

しかし、残念ながら会社組織や上司がそれを潰してしまっているケースがあります。自分なりに考え、意見を述べたとしても、それを否定されたり、拒否されたり、相手にしてもらえなかったりする経験が積み重なって「もう言っても仕方がない」と諦めモードになってしまう。そしてついには、自ら考えることも放棄してしまうのです。

悪意はなくても、結果的に部下を抑圧している

これは必ずしも、いまの新入社員や若手社員にのみに言える話ではありません。いま管理職やベテラン社員と呼ばれている40代や50代の方々もまた、若手社員の頃にそのような過ごし方をしてきたのです。

入社以来、上司の指示命令に忠実に従って仕事をすることを求められ、自分なりに考えたり思いついたことを言おうとしても、

  • ウチの業界では昔からこうだから
  • ウチの会社ではこういうものだから
  • 決めるのは上の仕事だから

と、およそ論理的な根拠とは呼べない慣例を理由にして、取り合ってもらえない。そんな経験が続ければ、誰しも自分で考えるのがアホらしくなります。

それが十数年続き、およそ自分の意見が通ったり、何かに影響したりという経験が乏しいまま、今度は自分が上司側の立場になる。自分の経験として上司に話を聞いてもらったり、仕事を任せてもらったりしたことがないので、逆の立場になった時にうまく対応できない。部下の話に耳を傾ける、本人の自主性に任せる、失敗を恐れずに挑戦させるなど、やるべきことは頭ではわかっているのに、それが思うようにできないのは、自分が過ごしてきた若手社員の頃と、いま求められていることの間に大きな隔たりがあるからです。

  • 部下の話を聞こうと思っていたのに、気がついたら自分の方が話してしまっている。
  • 部下の意見や言い分を尊重しようと思っていたのに、気がついたら至らない点を指摘し、指導してしまっている。
  • 部下とじっくりと話をする機会をとろうと思っているのに、毎日目の前のことが忙しくて、ずっと先送りにしてしまっている

決して悪意はなくても、結果として部下を尊重したり、部下の話に耳を傾けることができていない。これが悲しい現実であるように思います。

人はみな、過去から繰り返されてきた思考や行動のパターンに基づいて、考えて行動します。自分が実体験していないことを自然にできるようになるのは決して容易ではありません。訓練が必要です。若い世代に主体的、自律的に働いてもらうために必要なことは、決して難しいことではありません。

自己決定権、尊重と承認、考える材料。この3つを提供していけば、自ずと「自ら考えて行動」できるようになります。しかし、これを提供するのはすべて上司の側です。したがって、まずは上司側の部下に対するアプローチを変えていかなければ、どんなに若手社員自体に働きかけても、期待通りに動いてくれるようになるのは難しいでしょう。

次回に続きます。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

   

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