仕事の「はやさ」を上げれば、仕事がデキるようになる

先週も新入社員研修ウィークでした(今週もですが)。

ある企業様の研修では、開始前に参加者の代表がスピーチをしたり、経営理念を唱和したりしています。この際、発声者を立候補で募っているのですが、これがなかなか手が挙がらない。厳密には、一人とても積極的な方がいて、毎回のように率先して手を挙げていただくのですが、すべてその方にするわけにはいかず、殿堂入りのような扱いで遠慮をしていただきました。それ以外の方は、なかなか手を挙げず伏し目がち。他の誰かがやってくれるだろうと、お互いに思っているから、結果として誰も手を挙げなくなる。

やがて沈黙に耐えきれず、おずおずと数名が手を挙げ始めるのだが、待ち時間が長くなるため、本来3分もあれば終わるようなことが5分6分とかかったりする。みな内心「早く終わってくれ」と思っているに違いありません。しかし、他人任せにしても状況は進みません。であれば、自分が率先して動くしかない。自分が早く動けば、物事は早く片付く。みながそう考えるようになれば、本来はサクサクとすすむはずなのです。

たかが朝礼かもしれませんが、結局こういうところから仕事への姿勢と能力が窺い知れます。おそらく殿堂入りの方は、職場に配属されてからもご活躍されることでしょう。

仕事にはスピードも重要。朝礼のフィードバックとしてそれを解説しようとした際、ふと頭の中に次の方程式が思い浮かびました。

新・能力の方程式

仕事の能力=知識 × 経験 × スピード

すなわち、スピードは仕事の能力の一部であるということです。私は元来、「能力=知識 × 経験」であると解説してきました。事前に体系的に知識を習得していなければ、やみくもに経験を積んでも能力として培われない。一方、どれだけ勉強をしたとしても、実践して経験を積まなければ、習得した知識は能力として発揮できない。知識と経験は能力を構成する両輪であり、その掛け合わせが能力になるのです。

この考え方自体は基本的には変わらないのですが、仕事の能力を構成する要素として、ここにスピードが加わるのではと思いました。たとえ、知識や経験が乏しくても、スピードを早めることによって仕事の成果を上げることができる。こう考えれば、スピードがはやいか遅いかは、仕事の能力の一部だと言えます。

これから仕事をはじめる新入社員の方々には、仕事に必要な知識も経験もほとんどありません。加えて、知識や経験の量を瞬時に増やすことも困難で、これから時間をかけて蓄積していく必要があります。しかし、スピードだけはすぐに早めることができます。率先して行動し、時間を浪費しないようにすれば、早く仕事を終えることができます。つまり、スピードアップは新入社員であってもすぐに取り組み、成果を上げることができる貴重な要素なのです。

スピードは「デキる人」を象徴する能力の一つ

しばしば「仕事はデキる人のもとに集まる」「仕事は忙しい人に頼め」と言われます。仕事は優秀な人のもとに集まるため、優秀な人は概して忙しいです。忙しいので、引き受けた仕事をできるだけ早く終わらせようという動機が働きます。いかに効率的に成果を上げるかを考え、試行錯誤を繰り返していく。そうして、大量の仕事に挑み続ける中でさらに能力が磨かれ、効率も上がる。その仕事の成果が評価と評判を上げ、さらに多くの仕事がその人のもとに集まってくる。こうして、仕事をするたびに次の仕事を呼び込んでくるわけです。

仕事がデキるかどうかを左右する重要なポイントの一つがスピードです。上司からの指示であれ、取引先からの依頼であれ、仕事を誰かにお願いする際には、当然「はやくやってくれる人」にお願いしたいと思うものです。

ここでいう「はやい」には2つの意味があります。「速さ」と「早さ」です。

「速さ」とは、仕事に着手してから終了させるまでのスピード。すなわち「作業の所要時間」を指します。当然、仕事を頼む立場からすれば、速く終えてくれるに越したことはありません。速く対応・納品してくれれば、頼んだ方も後工程が楽になります。

とはいえ、速さには限界があります。それ以上無理に速く終わらせようとすると、工程に無理が生じて、不具合を起こしたり、品質が低下したりします。工夫・改善・効率化に終わりはないかもしれませんが、それにも限度があります。例えば、1時間を要する作業を55分や50分に短縮することはできるかもしれませんが、5分や10分に短縮することは、よほど劇的なイノベーションでも起きない限り現実的ではありません。速さには限界があるのです。

しかし、スピードにはもう一つの側面があります。それが「早さ」です。これは「作業に着手するまでの所要時間」であり、この「早さ」と「速さ」の合計が、案件が生じてから完了するまでトータルの所要時間となります。

どれだけ処理速度を短縮したとしても、着手するまでの時間がかかるようだと、依頼を受けてから提出するまでの時間はトータルで長くなります。逆に、たとえ処理速度が遅くて作業に時間を要するとしても、着手するまでが早ければ、依頼を受けてから提出するまでの時間をトータルで短くすることもできます。依頼した方からすれば、作業をどれだけの速度でできたかどうかはさほど問題ではありません。納期に間に合ってくれさえすれば、過程は相手にお任せなのです。

実際、仕事がデキる人は受けた仕事に着手するまでが早いです。すぐに手をつけてすぐに納品・提出するため、一定期間あたりの受けられる仕事量が多くなります。そのため、大量の仕事に対応できるようになり、その実績が次の仕事を呼び込んでくることになるのです。

仕事ができない人は、速度が遅いという以上に、この着手するまでの時間が長いです。依頼主が進捗を確認すると「まだ手をつけていなかったの?」というケースも散見されます。仕事は寝かせれば寝かせるほど、取り掛かるのが億劫になります。最もモチベーション高く、生産的に仕事ができるのは、依頼を受けた直後なのです。

知識や経験が乏しい新入社員の方々が、自分の意思や努力によってすぐに変えることができるのは、仕事のスピードだけです。すぐに取り掛かることだけは、誰にでもできます。

仕事に「早く」取り掛かれば、より多くの経験を積むことができます。その経験が次の仕事に生かされ、量を積んでいくうちに仕事が「速く」できるようになります。そして、誰よりも早く率先して動くようにすることで、より多くのチャンスを自分の元に引き寄せることができます。

仕事の能力 = 知識 × 経験 × スピード

今日と明日も、別の企業様で新入社員研修です。「与えられた仕事にはすぐに取り掛かれ」この意味をしっかりと伝えていこうと思います。

神戸・大阪で人材育成・社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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