自分のやる気に火をつける方法〜恩師との再会で感じたこと〜

先日、キャリアコンサルタント資格の更新講習を受講してきました。キャリアコンサルタント資格は5年ごとに更新するしくみになっていて、更新期間ごとに38時間以上の講習を受講することが義務付けられています。

今回の講師は、資格を取得する前に養成講座を担当いただいていた方でした。ここ2年ほど、コロナ禍の影響で講習もオンラインのみに限定されていましたが、今年に入ってから対面形式も再開されるようになり、講師の名前を拝見した際にぜひお目にかかりたくてすぐに申し込みました。

あれから8年。先生はおそらく何百人(何千人?)の方々を世に輩出されてきたことでしょうから、覚えていらっしゃらないのも無理はないですが、あれからコンサルタントに転身し、独立起業したという報告を、とても穏やかに聴いてくださいました。

久しぶりに先生にお目にかかり、当時を懐かしく振り返ると、思えば私がこの道を志したのは、この方の影響も大きかったなと気づきます。優しさがにじみ出るような温和な方で、私とはまるでタイプが違います。講義スタイルもまったく異なり、およそ真似できるようなものではないですが、知識と理論に裏付けされた豊富な経験をお話しいただき、学ぶのが楽しいという気持ちにさせてくれます。3ヶ月間、毎週楽しみに通っていたことを思い出します。

「そうだ。オレはこういう人になりたかったんだ」と当時の記憶が蘇り、受講後は仕事のやる気が大きく上がりました。

外発的動機づけと内発的動機づけ

「やる気を上げる」ことを「動機づけ」と呼びます。仕事の成果を上げる上では意欲も重要で、管理職研修などでは部下の動機づけについてレクチャーすることもしばしばあります。

動機づけには大きく「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2種類があります。

外発的動機づけとは、自分の外側からの働きかけや影響によって意欲を喚起するものです。わかりやすい例としては、昇進する、給与が上がる、ボーナスがもらえるといった「インセンティブ」が挙げられます。他にも、著名人の話を聴いて興奮したり、偉人の伝記を読んで胸が熱くなったり、優秀な同僚の活躍に刺激を受けたりといった、他者からの刺激や影響によって意欲が上がる場合もあります。これを「インスパイア」と呼びます。

どちらの場合にせよ、外発的動機づけは瞬時に意欲が向上するのが特徴です。しかし、その代わり、意欲が消沈するのも早いです。つまり、熱しやすく冷めやすいのです。着火したら瞬時に燃え上がり、瞬く間に消えてしまう「固形燃料」のようなイメージです。

したがって、外発的動機づけだけで意欲を高く維持しようとするには限界があります。火が消えてしまうたびに、その都度固形燃料を入れ替えていては大変です。長続きしません。つまり、報酬や処遇、すごい人からの影響で意欲を維持するのは困難なのです。そのため、意欲を高く維持するためには内発的動機づけが必要になります。

内発的動機づけとは、自分の内面から湧き出る意欲のことで、一般的に「モチベーション」と呼ばれます。外部からの刺激や影響に頼ることなく、自分自身から湧き出るものなので、ひとたびやる気が上がると一定程度長続きするのが特徴です。しかし、モチベーションの難点は、火がつくまでに時間がかかることです。つまり、熱しにくく冷めにくいのです。なかなか火がつかないが、一度ついたらしばらく燃え続ける「炭火」のようなイメージです。

炭火も放っておけば消えてしまう

自分自身から湧き上がり長続きするため、一般的には外発的動機づけよりも内発的動機づけの方が重要だと言われます。企業の研修でも、いかにモチベーションを高めて、それを維持するかということをお伝えすることが多いです。

しかし、モチベーションを保つためには、取り組む活動が自分の潜在的な欲求や価値観に結びついている必要があります。人の行動の95%は無意識によるものです。自分の本心、潜在的な欲求に根ざしたことでなければ、無意識が行動に向かわず、取り組みが長続きしません。

自分の心の奥底に潜む欲求や価値観に気づくためには、深い自己分析・自己洞察が必要です。自分自身に対する理解が不十分であると、目標や課題に取り組む意義や必要性が「腹落ち」しません。表面的な理解にとどまらず、無意識レベルで「やりたい」と思うようになるまで、取り組もうとしていることと自分自身の内面を結びつけて理解する必要があります。

そして、いかに炭火といえども、放っておけばいつかは消えてしまいます。火を維持するためのメンテナンスが必要です。つまり、内発的動機づけを保つためには、定期的に火をつけ直す必要があるのです。

内発的動機づけと外発的動機づけを組み合わせる

内発的動機づけ(モチベーション)を維持するためにも、定期的に外発的動機づけが必要です。炭火を保つためには、一定期間ごとに、燃えやすい素材(着火剤)を用いて火を注ぎ直すことが望ましいです。つまり、両者を組み合わせることで、高い意欲が維持されるのです。

私の場合、独立してから仕事は完全に成果報酬になったため、やったらやったぶんだけ報酬がいただけるようになりました。当然、仕事の意欲は上がります。加えて、勤め人の頃と比べると税制面でもかなり工夫ができるようになったので、それだけでも可処分所得は上がります。そして、収入を維持するためには目先の仕事をしているだけでは不十分で、将来を見据えて投資的な活動をコンスタントに続けていく必要があります。それがやがてまた収入になって返ってきます。それを十分に理解しているからこそ、短期的には収益にならないことにもコツコツ取り組んでいけます。

とはいえ、雇用されている身では完全な成果報酬は難しいです。必ずしも、自分の意志で短期的に収入を上げられるとは限りません。その場合、他者から刺激や影響を受けて着火する、インスパイアのアプローチが有効です。例えば、著名人の講演を聞きに行ったり、セミナーや勉強会に参加したり、読書をしたり、共有の目標を持った仲間と意見交換をしたりすると、やる気に火がつきます。

近年はオンラインで講演を聞いたり、講座を受けたりできる機会が急増したため、こうした機会を設けやすくなっています。私自身も、月1回以上セミナーや講習を受講することを目標に掲げていますが、独立して以降、月1回どころか3〜4回くらいの頻度で何かしらの講座を受けています。オンデマンドの動画視聴を含めたら、ほぼ毎日のようにどなたかの話を聴いています。気づいたこと、学んだことを実践しようという気になり、少なからずそれが仕事に向かう意欲を引き上げてくれていると思います。

自分自身の動機づけを行う

コロナ禍によりリモートワークが普及したことで、仕事の自己管理がますます求められるようになりました。通勤・出社して、職場で同僚とともに仕事をする環境とは異なり、周囲の「空気」によって触発されることがないため、自分自身のモチベーションを高く保つことが必要です。

プロフェッショナルとして仕事の成果を上げるためには、知識や技術だけではなく、意欲も必要です。学習や経験によってスキルを磨くことももちろん必要ですが、高いパフォーマンスを維持できるように自分自身を動機づけして、意欲を高く保つようコントロールすることも求められます。

つまり、自分のモチベーションを自分で管理するということです。そのためには、定期的に他者からの刺激や影響を受けて、自分の心に火をつける機会を設けていくことが効果的です。動機づけのメカニズムを理解し、炭火が消えてしまわないように、一定期間ごとに着火剤を投入し続けることで、仕事のパフォーマンスを高く保つことができます。

モチベーションが高いというのは、必ずしも常に激しく燃え上がっていることを指すのではありません。むしろ、激しく燃焼しすぎると、火が消えてしまうのも早くなります。まさに固形燃料のごとく、すぐに燃え尽きてしまうのです。

何事も、成功するためには長期的な努力が必要です。一喜一憂せず、やるべきことを淡々とやりつづける。内側からじんわりと燃え続ける炭火のように、コツコツとやるべきことをやり続けることが効果的で、日々の小さな努力の積み重ねが、やがて大きな成果に結び付きます。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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