今どきの新入社員は宇宙人なのか?

先週から、今年の新入社員研修シーズンがスタートしました。業界の傾向としても、3月下旬から6月末頃までは、新入社員研修をはじめとする研修案件の繁忙期です。

私の場合、例年このシーズンのスタートは、ある企業様での新入社員の入社前研修合宿です。今年で7年目。研修講師としてのデビューもこの案件であったため、非常に思い入れが深いです。

先週、前半が終了。社会人としての意識変革、ビジネスマナー、コミュニケーションなど、社会人基礎力のトレーニングを行なってきました。再来週に合宿の後半戦で再び現地に伺います。毎年、初心を思い返す場になっています。継続をいただいていることに、ただただ感謝です。

「今どきの新入社員」なんていう人物像はいない

さて、新入社員といえば、「今どきの新入社員は何を考えているかわからない」「今どきの新入社員は宇宙人だ」というような論調を目にすることがあります。40代や50代の方はもちろんのこと、20代後半の方々でさえ「いまの新入社員の感覚はわからない」と言うような話があるそうです。

インターネットの発達により情報の取捨選択ができるようになったこと。SNSの普及により興味・関心や価値観を共有できる人とのつながりにより偏るようになったこと。コロナ禍の影響で対面コミュニケーション能力が低下していること。これらがその背景として挙げられることが多いように感じます。

しかし、私自身はあまりこのように思ったことはありません。ここ数年の新入社員の方々が、それ以前とあまり違うという印象はないですし、特別コミュニケーションが苦手だというようにも思えません。価値観や感覚も、まるで理解できないということもないです。むしろ共感することの方が多いくらいです。私の上世代の考え方や価値観よりも、よほど理解できます。そもそも、いつの時代も若い世代は年上世代から「理解できない」と言われてきたものです。

何より、たとえ同世代であったとしても、人はひとり違う特徴や個性を持っているものです。それを一括りにして、端的にパターン化して論ずるのは、実際にはとても困難です。つまり「今どきの新入社員」なんていう人物像はそもそも存在せず、彼らを理解しようとするなら、一人ひとりの個人を見ていくことが大切なのだと思います。

一人ひとり、みんな違ってみんないい

私は毎年だいたい4~5社、100人前後の新入社員の方にお目にかかります。先週の研修では、新たに12名の新入社員の方々との出会いがありました。一人ひとりがみな違う個性を持っています。

驚くほど話が上手な方もいますし、人前やグループで話をするのが極めて苦手な方もいます。積極的に周囲に関わろうとする方もいれば、他の人から声をかけられるのを待っているような姿勢の方もいます。向上心が高く意欲的に研修に参加している印象の方もいれば、あまり関心がなさそうな態度を見せる方もいます。私によく話しかけてくれる方もいれば、ほとんど自分から関わってこようとしない方もいます。

興味や関心、能力、価値観がみなそれぞれ違います。それを一括りにして「今年の世代は○○だ」と、さも共通点があるかのように表現することは困難ですし、そもそもそんな必要もありません。

産労総合研究所が毎年発表している「新入社員のタイプ」というレポートがあります。その年々の新入社員のタイプを特徴づけてネーミングするもので、例えば2019年度は「AIスピーカータイプ」、2020年度は「厚底シューズタイプ」、2021年度は「ソロキャンプタイプ」とされています。もちろん、こうした調査レポートは毎年の風物詩的な側面があって、その時期の流行や社会背景に合わせてネーミングすることを、半ば楽しむような感じで読むものだと捉えています。当然ながら、その年代だからといって、みながそうした特徴があるわけではありません。

人は一人ひとり違う。そして、みんな違って、みんないい。まさにダイバーシティ&インクルージョン(多様性を包括する)の考え方に沿って、それぞれの個性を見ていくというほうが、コミュニケーションや関係構築に有効だと言えます。

グルーピングは仮説立てには有効

今でこそ中小企業診断士を肩書きの筆頭にしていますが、元々コンサルタントとしての私の原点はキャリアコンサルティングです。「その人にとっての職業生活の成功」を支援すべく、クライエントの考え方、感性、価値観に寄り添い、傾聴し、自己対話を促すことによって、ご自身に対する再発見や自覚を導くのがキャリアコンサルティングです。

まだまだ技術的には未熟ですし、キャリアコンサルティングをしようという心構えで相手に接したとしても、経営コンサルタントの側面が強く出てしまい、問題解決型のアプローチに偏りがちになってしまうことがしばしばあります。とはいえ、対人アプローチの「あるべき姿」を備えているだけでも、無意識に行う相手への接し方、話し方が多少なりとも変わっているはずです。相手の個性を尊重して、感情や思考、価値観に向き合おうとしていることで、相手のことを決めつけずに「その人らしさ」に目を向ける姿勢くらいは保てているのではないかと思っています。

新入社員に限らず、どんな属性のグループであったとしても、大勢の人間を一括りにして特徴づけるのは容易ではありませんし、また現実的でもありません。もちろん、属性に関する特徴や傾向を分析する上ではグルーピングが有効で、統計学的なアプローチで問題解決を図る場合には、あえて一括りにすることが効果的な場面もあります。あるいは、相手に関する情報が不足している中でコミニュケーションをとる場合には、相手の人物像を仮説立てる上で、統計学的なグルーピングが役立ちます。

かくいう私も、初対面の相手に接する際には、世代論的な考え方や、一般的な性差に基づく見解を念頭に入れる場合もあります。また、研修やセミナーで講義する際には、あえてこうしたグルーピングを引用することもあります。わかりやすいし、痛快だからです。ただし、あくまでそれは一般論であり、最終的には一人ひとりを見る必要があることを申し添えています。

付き合いが深くなるにつれて、相手に関するより多くの情報を得ていくと、より深く理解するために氣質診断サイグラムを用いて、相手の生得的な特徴に対する仮説を立てることもあります。とはいえ、仮説はあくまでも仮説です。検証の結果、その仮説を確信に変えていく場合もあれば、棄却する場合もあります。結局、最終的には本人を見て、本人と話をしての判断になるのです。

Z世代も一括りにできない

具体的な職場の人間関係を良好にしようという目的においては、「最近の新入社員は○○だから」「若い世代は○○だから」というフレームはあまり機能せず、むしろかえってステレオタイプを助長して、その人の本質を見にくくしてしまう側面があります。

それこそ、いまの10代〜20代前半は「Z世代」と呼ばれて注目されていますが、実際にその世代の方にお会いしても、いわゆるZ世代の特徴に合致するような方もいれば、まるでそう思えない方もいます。Z世代は確かにスマホネイティブで、情報収集やSNSとの付き合い方などに他の世代と異なる傾向ははありますが、皆が皆サイトを見比べるような購買意思決定をするわけでもないですし、皆が社会問題に高い関心を寄せているわけでもありません。結局、一人ひとり違うのです。

価値観が多様化し、かつてマイノリティと呼ばれた方々が心の声を上げやすくなった現代では、多様性を尊びお互いに受け入れ合う、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方が、今後ますます重要になってきます。本当に多様性に寛容になって、「みんな違って、みんないい」と思い合える世の中を実現するためには、まずは安易にグルーピングして、ラベリングしないことが重要ではないかということを、今回改めて思いました。

一人の大人として、尊重して接する

新入社員とはいえ、もはや子どもではありません。独立した人格を持った立派な大人です。この仕事をしていると、新人や若手の教育や育成に悩む声も少なからず耳にします。しかし、どのような相手や状況にも通用するような「魔法の杖」は存在しません。

一人ひとりと向き合い、個別に対応すること。そして、決して上から目線にならずに、一人の大人として尊重して接するということが、最も効果的な「急がば回れ」の解決策ではないかと考えます。

神戸・大阪で人材育成・社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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