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人材像

2026.10.27

静かな退職とは|職場に表れるサインと早めの打ち手

静かな退職とは、会社を辞めないまま、やりがいや昇進を求めず、決められた仕事だけを淡々とこなす働き方のことです。正社員の46.7%が、この状態にあります。

ただ、これを本人の意欲の問題として扱うと、打ち手を誤ります。きっかけの多くは、職場の側に先に起きているからです。この記事では、職場に表れるサインと、制度の改定を待たずにできることを整理します。

静かな退職とは、辞めない退職のこと

マイナビが2026年に公表した調査では、静かな退職の状態にある正社員は46.7%でした。前年から2.2ポイント増えています。

年代別に見ると、20代が50.5%、30代が49.1%。40代は42.3%、50代は46.7%です。若手に限った現象ではありません。どの年代にも、ほぼ同じように広がっています。

注目したいのは、別の数字です。この状態にある人のうち、73.7%が「今後も続けたい」と答えています。つまり、辞めるつもりがありません。

ここが、この現象のいちばん厄介なところです。退職ではないので、離職率には表れません。欠勤もしません。期日も守ります。経営の数字を見ている限り、何も起きていないように見えます。

職場に表れる3つのサイン

では、何を見れば分かるのか。私がコンサルティングの現場で見てきた限り、次の3つが先に表れます。

  • 依頼した仕事は、期日どおりきちんと返ってくる。ただし、提案が付かない
  • 会議で、反対意見が出ない。賛成の声も出ない
  • 不満が、聞こえてこなくなった

3つ目を意外に思われるかもしれません。しかし、不満は期待の裏返しです。良くなるはずだと思っているから、人は不満を言います。言っても変わらないと分かった後に残るのは、静けさです。

「うちは不満も出ませんし、辞める人もいません。落ち着いています」。ある会社の管理職の方から、そう伺ったことがあります。その数か月後に、中堅の方が2人、ほぼ同時に辞められました。

ただし、この3つは社員を疑うための材料ではありません。3つとも、確認すべきは職場の側です。提案が通る経路があるか。反対意見を出した人が、その後どう扱われたか。不満が持ち込まれたとき、何かが変わったか。見るべきはそちらです。

きっかけの多くは、本人の価値観ではない

同じ調査では、静かな退職を選んだきっかけを4つに分類しています。

このうち、変化や上昇をそもそも求めないという価値観によるものは、5人に1人ほどです。残りは、仕事や職場が自分に合わないと感じた、処遇や評価に納得がいかなかった、割に合わないと判断した、という理由でした。

いずれも、職場の側で起きたことへの反応です。入社した時点で、最低限の仕事だけをしようと決めていた人は、ほとんどいません。

原因は社員の資質ではなく、環境にあります。そして、その環境を用意できるのは経営者だけです。 現場の管理職にも、人事のご担当者にも、しくみそのものを変える権限はありません。

辞める退職と静かな退職の見え方の違いを示した図
図:数字に表れない退職

容認している会社に、共通して欠けている3つ

この調査には、企業側への質問もあります。静かな退職という働き方について、42.2%の企業が賛成と答えました。そういう社員も必要だ、という容認の姿勢です。

同じ企業調査に、もう少し踏み込んだ数字が出ています。

  • 異動や配置、キャリアの道筋を、会社が指示して決めている:41.9%(本人の希望を踏まえる会社は12.4%)
  • 目標を、会社または上司が決めている:33.7%
  • 評価の基準や結果を、本人に開示していない:27.6%

自分で決められる範囲がなく、何を期待されているかも示されず、評価の根拠も見えない。この3つがそろった職場で、最低限の仕事で止めるという判断は、むしろ合理的です。

容認するかどうかを議論する前に、整えるものがあります。評価の基準を本人に見える形にする手順については、人事評価の中心化傾向を防ぐ|全員3から抜け出す基準づくりをご覧ください。決めてよい範囲の渡し方については、部下に裁量がないと人は考えない|自分で動く部下の育て方を参照ください。

自社がこの3つをどこまで整えられているかは、中にいると見えにくいものです。人材像・人事制度・マネジメント・人材育成の4分野について、どこが弱いかを10分で数値にする無料の環境診断をご用意しています。

今週、ひとりに期待を書いて渡す

3つを同時に直すには、制度の改定が必要です。半年から1年かかります。ただ、そのうちのひとつは、今週から始められます。期待を言葉にすることです。

気になる方を1人思い浮かべてください。その人に今期期待していることを3つ、紙に書いて渡す。それだけです。

面談の場を設ける必要はありません。評価の時期を待つ必要もありません。制度が整っていなくても、上司の言葉としてなら、今日渡せます。

正直に申し上げると、これは万能ではありません。「今さら言われても」という反応が返ってくることがあります。長く放置された後ほど、その確率は上がります。それでも、渡されていない状態よりは前に進みます。何も言われていない人は、何を変えればよいのかを知る手がかりすら持っていません。

期待を言葉にする作業を、個人の努力ではなく会社のしくみとして定着させる段階になったら、等級ごとの期待役割を文書にする工程に入ります。具体的な進め方については、人事制度コンサルティングをご覧ください。

まとめ|辞めないことは、問題がないことではない

静かな退職は、離職率にも、残業時間にも、欠勤率にも表れません。数字が落ち着いている会社ほど、見落とします。

46.7%という数字は、あくまで他社を含めた全体の平均です。自社の状態は、提案が付くか、反対意見が出るか、不満が持ち込まれるか。この3つで見るほうが、はるかに早く分かります。

自社の職場に何が用意されていて、何が用意されていないかは、中にいると見えにくいものです。人材像・人事制度・マネジメント・人材育成の4分野について、どこが弱いかを10分で数値にする無料診断をご用意しています。今回の内容は、診断の人材像の項目に対応しています。ご関心のある方は、ぜひお試しください。


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出典

著者

小松 茂樹(こまつ しげき)

株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング 代表取締役社長。中小企業診断士、国家資格キャリアコンサルタント。事業会社で人事制度の再設計や業務改善に携わったのち、2021年に独立。中小企業の人材育成と組織づくりを支援しています。
著作『指示待ち人間からの解放〜自ら考えて行動する社員を増やす4つの柱と7つのステップ〜』『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜』

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