コミュニケーション
2026.3.7

目次
仕事の指示や依頼をする際、同じことを伝えているにもかかわらず、部下によって反応がまったく異なるという経験はありませんか。
例えば、「細かいことは気にせず、自由にやってほしい」と仕事を任せると、ある部下は快く引き受けて意気揚々と取り組み始める一方、別の部下は「それでは分かりません。もっと丁寧に説明してください」と戸惑いを見せることがあります。
そこで反省し、仕事の背景や目的、作業手順を丁寧に説明すると、今度はその部下は納得して引き受けてくれます。ところが同じやり方で別の部下に指示を出すと、「そこまで細かく言われるなら、私でなくても、誰でもできるのではないですか」と、やる気が下がってしまう。こうしたことが起きてしまうのです。
人はみな、それぞれ考え方や感じ方が異なります。理想を言えば、一人ひとりに合わせた接し方をすることが望ましいと言えるでしょう。しかし、すべての人に個別対応していては際限がなく、現実的ではありません。
そこで役立つのが、人のタイプを大まかに分類し、自分のタイプと相手のタイプに合わせてコミュニケーションの取り方を調整するという考え方です。今回は、そうしたタイプ別分類のひとつである「ソーシャルスタイル診断」をご紹介します。

ソーシャルスタイル診断とは、1960年代にアメリカの産業心理学者デビッド・メリルとロジャー・レイドが開発した、コミュニケーションにおける人の行動傾向を分類する理論です。この考え方では、人間の行動傾向を「感情表現の強さ」と「自己主張の強さ」という2つの軸で捉え、それぞれの強弱を掛け合わせることで、大きく4つのタイプに分類します。

感情表現は抑えがちで、自分の意見を主張しやすいタイプです。結果を重視し、決断が早く、効率的に目標達成へ向けて直線的に進んでいきます。要点を捉えて簡潔に物事を表現することを好む傾向があります。
感情表現が豊かで、自分の意見も積極的に主張するタイプです。感情豊かで創造的かつ社交的であり、アイデアや夢を語ること、人との関わりを大切にすること、熱意を持って話すこと、ビジョンを共有することを好む傾向があります。
感情表現は豊かですが、自分の意見を主張するよりも相手の意見を聞く姿勢を取りやすいタイプです。協調的で思いやりがあり、安定思考でチームワークを重視します。対立を避けてなるべく穏便に済ませようとし、穏やかで聞き上手という特徴があります。
感情表現も自己主張も抑えがちで、相手の意見を聞くタイプです。論理的で慎重、正確性を重視し、データや事実に基づいて判断します。リスクを慎重に評価し、詳細な情報を求め、物事を論理的に説明する傾向があります。
これらの4つのタイプはどれが優れていてどれが劣っているというものではなく、それぞれに一長一短があります。
例えば、牽引型はリーダーシップや意思決定力、目標達成力が強みである一方、相手への配慮が不足しがちであったり、スピードを重視するあまり性急な判断をしてしまうこともあります。
表現型は豊かな創造性やプレゼンテーション力、人のモチベーションを高める力が強みですが、感情的な判断をしたり、細かいことへの配慮が及ばないこともあります。
協調型はチームの調和を図る力や傾聴力、サポート力が強みである一方、自分の意見を主張しにくく引っ込み思案になったり、決断が遅くなりやすいという側面もあります。
分析型は計画立案や品質管理、分析能力に優れていますが、柔軟性に欠けたり、完璧主義に陥りやすいという面もあります。

ソーシャルスタイル診断が職場のコミュニケーションを考える上で非常に役立つのは、4つというシンプルな分類でありながら、明確で実践的な指針を立てやすい点にあります。タイプが10種類や20種類、あるいは100種類にもなると、日常のコミュニケーションに活かすことが難しくなります。その点で、このフレームワークは非常に使いやすいと言えるでしょう。
部下のタイプ別に、具体的なアプローチは以下のように変わります。
牽引型の部下は、直線的にスピード感を持って物事を前に進めていきたいという特性があります。明確な目標を設定し、必要な材料を与えて仕事を委任するというやり方が、本人も活き活きと仕事に取り組める環境を生み出します。
表現型の部下は、必要最低限のことを端的に伝えるだけでなく、笑顔や相槌といった感情表現を交えることが大切です。また、数字だけでなく、ビジョンや物語、仕事の目的・価値観・意義を伝えることで、本人は強い意欲を持って取り組むようになります。
協調型の部下は、急かされると追い詰められてしまいます。考える時間や心理的な余裕を与えることが重要です。また、仕事の話だけでなく個人的な会話を交えるなど、相手への配慮を示すアプローチを取ることで、信頼関係が築きやすくなります。なお、急な変更に振り回されることをとても嫌がりますので、先々の見通しを伝えた上で段階的に物事を進めていくと、安心して仕事に取り組めるようになります。
分析型の部下には、感覚的な言い方を避け、事実や数字を用いて説明することが効果的です。じっくりと考えながら進めたいタイプですので、十分な準備時間を与えることで、自分のやり方で仕事を進められるようになります。

弊社が行う管理職向けのコミュニケーション研修では、実際にソーシャルスタイル診断を受けていただき、自分のタイプを踏まえた上で、部下のタイプ別にコミュニケーションの取り方をどのように変えていくかを考えていただきます。相手に合わせたコミュニケーションを実践することで、仕事の指示・命令、進捗管理が格段にスムーズになります。
さらに、研修を受けた方の中には、部下にも同じ診断を受けてもらい、お互いのスコアを共有するという活用方法を実践している方もいます。部下自身も自分のタイプが分かることで安心感を得られますし、お互いのタイプが異なると分かれば、「なぜいつも話が噛み合わないのか」「なぜ思うように伝わらないのか」という長年の疑問が腑に落ちるようになります。そして、タイプの違いを踏まえてお互いに気遣いながらコミュニケーションを取ることで、仕事がよりスムーズに進むようになります。
職場のコミュニケーションを改善するための秘訣は、まず「自分を知ること」、次に「相手を知ること」、そして「自分と相手の違いを理解した上で相手を認めること」、この3つのステップを踏んでいくことにあります。
同僚・お客様・取引先など、周囲の人がすべて同じタイプであれば仕事はとてもやりやすいものですが、現実にはそうはいきません。だからこそ、ソーシャルスタイル診断を活用して相手のタイプを理解し、コミュニケーションの取り方を柔軟に調整していくことが、職場における円滑な人間関係と生産性の向上につながるのです。
弊社では、自分のソーシャルスタイルを確認するための診断ツールを公開しております。あなたもぜひ、自分がどのタイプかを確かめてみてください。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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