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2022.3.14
前回の投稿で、若い世代に「自ら考えて行動」してもらうためには、上司である管理職の方から変わっていく必要があることをご説明しました。
決して悪意はなくても、自身の経験、業界や会社の慣例、責任範囲などから無意識のうちに部下を否定して、やる気を削いでしまうものです。ポジションパワーも上で経験豊富な自分の発言は、想定以上に部下に大きく捉えられてしまうことを自覚しておくことが求められます。
今回は前回の続きとして、部下の主体性や自律性を引き出すアプローチを3つご紹介いたします。
若手社員が主体的・自律的になるために必要なことを考えてみた(前編)
「自分で考えて」と言っておきながら、本人に意思決定の権限がなかったり、極めて限定的な範囲でしか自分で決められなかったりしたら、当然ながら自ら考えて行動することはできません。意思決定権、つまり裁量を与えることが必要です。
とはいえ、何でも自分で決めて良いとしてしまったら、もし誤った判断をしたり、方向性がズレてしまった時に修正がきかなくなる場合があります。したがって、本人に決めさせるといっても、判断基準と範囲を定めておく必要があります。
判断基準としては、組織のミッションやビジョン、価値観や行動指針、戦略などを、定期的に確認しておくことが必要です。組織の価値観と異なる意思決定をされたら、場合によっては経済的、ブランド的な損失を被る可能性があります。そもそも、組織で仕事をしている意味はなくなってしまいます。
また、意思決定できる範囲を明確に決めておくことも必要です。例えば、「○○万円までなら自分で判断して良い」「社内の調整は任せるが、外部に何かを依頼するときには事前に相談して」など、自分で決めて良い範囲とダメな範囲を明らかにしておくことが有効です。
権限を与えるとしても、定期的に報告をしてもらうルールを定めることも必要です。任せることと丸投げすることは違います。決して放任するのではなく、判断や実行は任せるけど責任の所在は上司にあることを認識させ、やったことに対する報告をもらうことは必要です。報告義務があることと権限がないということは決してイコールではありません。任されたとしても報告は必要です。
加えて、これを実現するためには失敗に寛容な組織文化も必要になります。仮に権限を与えられたとしても、失敗したときに執拗に責められうようでは、思い切った判断ができず、前例踏襲の無難な意思決定にとどまってしまいます。さらには、部下の失敗を過度に上司に求めるような文化があると、上司も部下に権限を委ねるのを萎縮してしまいます。経営トップが自ら中心となって、失敗を恐れず果敢にチャレンジさせる風土をつくっていくことが大切です。
任せた以上は、部下の考えや意図を尊重する必要があります。これは必ずしも本人の言い分を全面的に「受け入れる」というわけではありません。本人の言い分を「受け止める」のです。
部下が自分なりに考えて、行動した結果です。仮に判断が誤っているように見えても、いきなり否定したり指摘したりせず、まずは本人の言い分に耳を傾けます。どのような気持ち、考え、意図でその判断に至ったのか。自分の見解を述べる前に、相手の言い分を受け止めます。
もし、考えが浅かったり、なんとなくで決めてしまっていたりした場合、うまく説明ができません。変に取り繕ったり偽ったりしたら、その時は厳しく指導する必要がありますが、悪意なく誤った判断をした場合には、説明を求めているうちに、部下本人が自分の思慮不足に気づきます。指摘はそれで十分です。後は、何が足りなかったのかを提示して、さらに深く考えさせていくだけです。
どうしても合意できない判断・意思決定をされてしまった時に、心理的に肯定・尊重ができない場合もあるかもしれません。その時には「それ、おもしろいね」と回答しましょう。これも承認です。この台詞には「自分とは明らかに違う考え方だけど、一理あるかもしれないね」という意味が含まれています。人が懸命に考えて出した結論に「一理すらない」ことなどありません。まずは「おもしろいね」と本人の言い分を受け止めた上で、その背景や意図を確認していきましょう。仮に答えが誤っていたとしても、自分にはない視点に基づいていたことが明らかになるかもしれません。
また、考えそのものだけではなく、心情に配慮し、寄り添うことも必要です。ベテランの管理職であったとしても、かつては若手社員と呼ばれていた頃があったはずです。自分の若い頃を思い返し、当時、上席者にどのような気持ちを抱いていたかを考えてみると、なぜ一見不合理と思えるような判断や行動するのかを察することができるかもしれません。若手はベテランになったことがありません。若手にベテランの心情を察しろというのは酷ですし、そもそも理屈としてはできようがありません。ベテランの方が若手の心情を察しようとする方が現実的でしょう。
若手社員に「自ら考える」ことを求め、自律的に行動してもらうことを期待するなら、うまくいくようにサポートをすることも必要です。 ただし、先手を打ちすぎて、あれもこれもと手や口を出してしまったら、本人の成長にもつながりません。「最後の答え」を封印しつつも、より良い判断や行動に導いていくことが求められます。その上では「考える材料」を与えることが有効です。
例えば、販促支援を企画する営業企画部門で、何かのイベントを開催する仕事を部下に任せたとします。そして、経過報告をもらった際に、お客様への連絡や物品手配は緻密に計画されているのに、社内スタッフの調整や配置が考えに及んでいなかったことに気づいたとします。
その際に「社内の人員配置が考えられていないじゃないか」「必要な人員数を計画して、部員のスケジュールを確保しないと」と具体的に指摘しすぎてしすぎてしまうと、暗に指示しているのと同じになってしまいます。これでは本人の考える力は鍛えられません。
報告を聞いた際に、考えが不十分であることに気づいたら、部下本人にもそれに気づいてもらえるよう、質問によって働きかけます。
といった具合に、当日の現場シーンを具体的にイメージさせて、支障がないかどうかを考えさせます。リアルにイメージさせれればられるほど、考えが及んでいない範囲や項目に気づくことができます。これを繰り返すことで、幅と深さの両面から考えを広げる思考力を磨いていくことができます。ここに経験が積み重なっていくことで「自ら考えて行動」できるようになっていくのです。
質問の展開方法については、下記の動画も参考にご覧ください。