特集記事
2025.12.14

近年、ニュースや新聞で「人的資本経営」という言葉をよく目にします。「社員をコスト(経費)ではなくキャピタル(資産)として捉え、その価値を最大限に引き出そう」という経営の考え方です。しかし、多くの中小企業経営者様からは、こんな戸惑いの本音が聞こえてきます。
「理屈はわかる。しかし、現場を見れば指示待ちの社員ばかりだ。資産どころか、給料分の働きをしてくれているかどうかも怪しい…」
「横文字の新しい経営手法を取り入れる余裕なんてない。日々の業務を回すだけで精一杯だ」
焦る必要はありません。難しい専門用語を覚えたり、流行りの人事システムを高額で導入したりする必要もありません。人的資本経営を成功させるカギは、実はたった一つ。非常にシンプルなことに集約されます。
それは、社員を「言われなくても自分で考えて動く人(自律型人材)」に変えることです。
この記事では、多くの企業の組織変革を支援してきた筆者が、経営戦略としての「人づくり」について、専門用語を使わずに分かりやすく解説します。なぜ研修をやっても社員が変わらないのか? どうすれば「指示待ち」から抜け出し、勝手に利益を生み出す組織を作れるのか? その具体的な処方箋をお渡しします。
目次
「人を大切にする経営」というと、社員に優しくすることや、福利厚生を充実させることだと誤解されがちです。しかし、ビジネスにおける本質は違います。「人の能力を最大限に引き出し、企業の利益につなげること」です。
なぜ今、経営者は「自分で動く社員」を育てなければならないのか。環境の変化と経営リスクの観点から、3つの理由をお話しします。
これまで、社員の給料は「経費(コスト)」と考えられてきました。売上から差し引かれる費用ですから、できれば減らしたいものです。しかしこれからは、社員は「磨けば価値が出る財産(資産)」と考えます。
ここで重要なのは、「指示待ち社員」は時間が経つほど価値が下がるという事実です。言われたことだけを正確にこなす仕事は、いずれAI(人工知能)やロボット、あるいはより安価な労働力に取って代わられます。教育もせず、指示待ちのまま放置することは、価値の下がり続ける「不良資産」を抱え込んでいるのと同じです。
一方で、時代の変化に合わせて自分で勉強し、新しい仕事や顧客を作り出せる社員は、会社に利益をもたらし続けます。この「勝手に稼いでくれる社員」を一人でも多く増やすことが、会社を強くし、永続させる唯一の方法なのです。
日本経済が停滞した「失われた30年」。その原因の一つは、全部社長や上司が決めて、部下はそれに従うだけという「トップダウン型」の組織を変えられなかったことにあります。
昔のように「正解」が決まっている時代なら、それでも良かったでしょう。社長が一番正解を知っていたからです。しかし今は、昨日までの成功法則が明日には通用しない、変化の激しい時代です。
現場でお客様に接している社員が、いちいち「持ち帰って上司に確認します」「稟議書を出します」とやっていたら、もう手遅れなのです。その場で考え、即座に判断して動く。このスピード感がなければ、競合他社に勝てません。「指示待ちは、会社の成長を止める罪である」。それくらいの危機感が必要です。
多くの会社が「人材育成」に多額の予算をかけていますが、残念ながらその大半は成果の出ない「浪費」に終わっています。なぜなら、1日や2日だけの「単発の研修」で終わらせているからです。
外部の講師から良い話を聞いて「やる気」が出るのは、その日と翌日だけです。翌週には現場の忙しさに追われ、すっかり内容を忘れて元の「指示待ち」に戻る。これでは、ドブにお金を捨てているのと同じです。
教育にお金をかけるなら、「行動が変わるまでしつこく関わり続ける」ことです。「意識を変える」のではなく「習慣を変える」。ここまでやって初めて、投資した分のお金が利益となって返ってくるのです。
貴社の社員は「財産」になっていますか?
「研修をやっても効果が見えない」「現場に元気がない」とお悩みの社長様へ。
まずは無料の診断ツールで、会社の健康状態をチェックしてみませんか?
「じりつ」には二つの漢字があります。多くの会社がこの2つを混同していますが、目指すべきは「自立」の先にある「自律」です。この違いを明確に定義できるかどうかが、人材育成のスタートラインです。
多くの会社が目指しているのは、実は「自立」止まりです。自立とは、他人の助けを借りずに、決められた仕事を一人でこなせる状態のこと。「一人前になった」と言われますが、これだけでは「優秀な作業員」に過ぎません。
対して「自律」とは、自分で自分をコントロールできる状態です。誰からの指示がなくても、「今、会社のために何をすべきか」「お客様のために何ができるか」を自分で考え、Myルールを作って動く。
例えば、トラブルが起きた時。「どうしましょうか?」と上司に聞くのが自立レベル。「私がこう対応して収めます。事後報告します」と動くのが自律レベルです。「やり方」を工夫するのが自立。「やるべきこと」を自分で創り出すのが自律。このレベルの人材がいなければ、会社は変わりません。
自律した社員は、次の3つの要素の重なりを、自分で広げていきます。
普通の社員は、会社から言われた「やるべきこと(Must)」だけで動きます。「言われたからやる」という受け身の姿勢です。
しかし、自律した社員は「こうなりたい(Will)」という自分の意志を持っています。「将来こうなりたいから、今のうちにこのスキル(Can)を身につけよう」。そうやって努力した結果、会社からもっと大きな仕事(Must)を任されるようになる。この好循環を作れる人こそが、真の自律型人材です。
「管理職がいなくなったらサボるのではないか」。そう心配する社長もいますが、それは「指示待ち社員」ばかりだからです。
自律した社員が増えれば、現場に権限を渡しても会社は回ります。むしろ、お客様に一番近い現場をすぐに判断することで、会社の動きが劇的に速くなります。役職に関係なく、全員が「自分がこの仕事のリーダーだ」という意識を持つ組織。これこそが、これからの時代に勝てる組織です。
「なんとなく優秀な人」で終わらせないために。
貴社の将来に必要なのは、具体的にどんな人材ですか?社長のビジョンに合わせた「理想の人材像」を言葉にします。
「人材育成は金食い虫だ」「教育費はコストだ」と思っていませんか? その考え方はもう古いです。正しく人を育てれば、それは必ず会社の利益となって返ってきます。ここではそのメカニズムを解説します。
多くの会社で、社長が描く「戦略」と、現場の「実力」に大きな差があります。例えば、「デジタルを活用して海外へ打って出るぞ!」と号令をかけても、現場には「昔ながらのルート営業しかできない社員」しかいない…。これでは絵に描いた餅です。
このギャップを埋めるのが自律型人材です。彼らは社長の方針を理解し、「そのために自分には何が足りないか」を考えて、自発的に勉強を始めます。会社が強制しなくても、戦略に合わせて自分をバージョンアップしてくれるのです。戦略を実行するのは、いつだって「人」です。
銀行や投資家は、決算書の数字だけでなく、その裏側にある「組織の力」を厳しく見ています。特に注目しているのが、「社内で人が活発に動いているか」と「次世代のリーダーが育っているか」です。
「離職率が低いこと」は必ずしも良いことではありません。他に行き場のない社員がしがみついているだけかもしれないからです。自律した優秀な社員が、あえてその会社を選んで活発に働いている。そんな会社こそが、将来伸びる会社として評価されます。
嫌々やらされている仕事と、自分で決めてやる仕事。どちらが成果が出るかは明らかです。実際に、社員のやる気(エンゲージメント)が高い会社は、そうでない会社に比べて、利益率が圧倒的に高いというデータがあります。
自律した社員は、仕事を楽しみます。壁にぶつかっても、「どうすればクリアできるか」をゲームのように考えます。結果として高い成果を出し、簡単には辞めません。「働きがい」への投資は、きれいごとではなく、そのまま「会社の利益」になるのです。
社長の戦略、現場に伝わっていますか?
理想と現実のギャップを分析し、勝てる組織作りをお手伝いします。
「よし、じゃあ明日から社員に任せよう」。そう思って失敗する社長が後を絶ちません。なぜなら、「任せる」ことと「丸投げする」ことを混同しているからです。この違いを理解しておかないと、組織は崩壊します。
「自律」というと、「自由に好きなことをやらせる」ことだと勘違いされがちです。しかし、それは単なる「放任」です。好き勝手にやらせれば、楽な方へ流れたり、会社の利益にならないことを始めたりするのは当然です。
本当の自律には、厳しい「規律(ルール)」が必要です。「会社の理念や目標に沿っているか」「お客様のためになっているか」という判断基準を守った上で、やり方を自分で考える。これが自律です。この枠組みから外れた自由は、ただのワガママです。
「君に任せたよ」と言っておきながら、失敗したら「なんであんなことをしたんだ!」と怒鳴る。これは最悪の丸投げです。部下は恐怖を感じ、二度と自分では動かなくなります。
「任せる」とは、「最終的な責任は私が取るから、思い切ってやってみなさい」と腹を括ることです。そして、部下が困っていたら相談に乗り、壁打ち相手になる。手は出さないが、目は離さない。この「支援」があって初めて、部下は安心して自律できます。
最近「ジョブ型雇用」という言葉が流行っていますが、中小企業がいきなり欧米の真似をして、仕事をガチガチに定義するのは危険です。「契約書に書いてないからやりません」という社員が出てきて、組織がバラバラになりかねません。
大切なのは制度の名前ではありません。「あなたの役割はこれだ」と明確にすることです。雇用形態は今のままでも、「君にはこの目標を期待している」「この役割を果たしてほしい」としっかり握り合うことで、日本企業に合った「自律」は十分に実現できます。
現場の「誰かがやるだろう」をなくす。
業務の棚卸しと効率化で、社員が動きやすい環境を作ります。
自律型人材が育たない最大の原因。それは実は「上司」にあることが多いのです。どれだけ優秀な若手を採用しても、上司が細かく口出ししすぎると、部下のやる気はすぐに消えてしまいます。
多くの中間管理職は、自分も営業目標を持っています。自分の数字を作りながら、部下の面倒も見なければならない。「教えている時間がない」「失敗されたら困る」。そう思って、「貸してごらん、私がやる」と仕事を奪ってしまう。
これは目先の数字を作る上では効率的ですが、人を育てる上では最悪です。部下は「どうせ課長がやってくれる」と学習し、思考停止になります。上司が「任せる勇気」を持たない限り、部下は一生自律しません。
上司の役割は、「部下を管理する」ことから、「部下の成功を助ける」ことへ変わらなければなりません。そのためのツールが、定期的な個人面談(1on1)です。
しかし、多くの現場では、これが単なる「進捗確認の場」になっています。「あれどうなった?」「まだです」「早くやれ」。これでは詰問です。
本来の面談は、部下に考えさせる時間です。「君はどうしたい?」「そのために何が必要だと思う?」と問いかけ、答えを教えずに考えさせる。この忍耐強い関わりこそが、部下の「自分で考える力」を育てます。
最後に、耳の痛い話をします。部下に「自分で考えろ」と言う上司自身が、会社の方針に文句を言い、受け身で働いていないでしょうか。
リーダーシップとは、背中で見せるものです。上司自身が新しいことに挑戦し、失敗し、それでも前を向く姿を見せること。その背中を見て、部下は「自分もやってみよう」と思います。管理職研修では、スキルだけでなく、上司自身の「あり方」を問い直すことが不可欠です。
管理職が変われば、組織は劇的に変わります。
「部下を活かす上司」を育てるための、管理職専用トレーニング。
「自分で決めて動く力」。これは教科書を読んでも身につきません。水泳の泳ぎ方を教室で習っても、実際にプールに入らなければ泳げるようにならないのと同じです。
そこで有効なのが、弊社が提供する「インバスケット」というトレーニングです。これは、架空のリーダーになりきり、制限時間内に大量のトラブル(メールや書類)を処理するシミュレーションです。
例えば、「重要なお客様からクレームが来た。しかし担当者は不在で、上司とも連絡がつかない。あなたならどうするか?」といった正解のない問題が次々と降りかかります。この極限状態で、優先順位をつけ、その場で決断を下さなければなりません。
「絶対的な正解がない」中で、自分で決める訓練を繰り返す。これこそが、リーダーに必要な度胸と判断力を養います。
多くの研修は「先生の話を聞く」だけですが、インバスケットは「自分でやる」ことが中心です。受講者は冷や汗をかきながら決断を迫られます。
終わった後に、「なぜその判断をしたのか?」を徹底的に振り返ります。すると、「自分はリスクを恐れすぎているな」「人の話を聞かずに独断で決めがちだな」といった、自分の思考の癖に気づきます。この強烈な「気づき」が、人を変える出発点になります。
さらに弊社では、研修で得た気づきを定着させるために、「半年間の週間チャレンジ」を行っています。毎週、「今週やるべきこと」を自分で決め、実行し、週末に振り返る。
「やることを決め、決めたことをやる」。この単純なサイクルを半年間(24週間)繰り返すことで、自律的な行動を脳に深く刻み込み、習慣にします。ここまでやって初めて、人は本当に変わるのです。
疑似体験と習慣化で、現場の行動を変えます。
判断力を鍛える「インバスケット」研修
自律型人材を育てるために、弊社は他社の研修会社とは全く違うアプローチをとっています。それは弊社のロゴマークにも込められた「大樹」の哲学です。
多くの研修会社は、目に見えるスキルやテクニック(枝葉)を教えたがります。「ロジカルシンキング」や「マーケティング」などです。もちろん大切ですが、土台がしっかりしていなければ、嵐が来た時に貧弱な枝葉はすぐに折れてしまいます。
我々ビジネスキャリア・コンサルティングが何よりも重視するのは、地面の下にある「根(人間性)」と「幹(職業観)」です。「なぜ働くのか」「人としてどうあるべきか」「プロとしてどう振る舞うべきか」。この根っこが太くなければ、どんな高度なスキルも使いこなせません。
半年間の実践を通じて、「約束を守る」「嘘をつかない」「逃げずに立ち向かう」といった、人間としての器(土台)を徹底的に鍛える。
これが、他社の研修とは決定的に異なる、我々の哲学です。一見地味で泥臭いかもしれませんが、これこそが最も確実な「人への投資」であると確信しています。根さえしっかりしていれば、枝葉(スキル)はあとからいくらでも伸ばせるからです。
他社の成功事例を真似しても失敗します。
貴社の社風に合わせた、独自の制度を設計しませんか?
では、明日から具体的に何をすればいいのか。「指示待ち組織」を変えるための3つのステップをお伝えします。
変化の始まりは常にトップです。「細かく管理しないと不安だ」という恐れを手放し、「君たちを信じて任せる」と宣言してください。
ただし、丸投げではありません。「会社はどこへ向かうのか」「なぜ変わらなければならないのか」というビジョンを、情熱を持って語り続けること。これが社長の新しい仕事です。
自分で考えて動けば、必ず失敗します。その時、一度でも怒ってしまったら、社員は二度と動かなくなります。
挑戦した結果の失敗は「ナイス・トライ」と褒める。減点するのではなく、加点する。この安心感があって初めて、社員は一歩を踏み出せます。
意識は一瞬で変わっても、行動はすぐには変わりません。定着させるには、最低でも半年間の継続的なトレーニングが必要です。
自分で目標を立て、実行し、振り返る。このサイクルを回し続けるプログラムを導入してください。外部のプロが伴走すれば、現場の上司に負担をかけずに、社員を育てることができます。
本気で変わりたい企業だけが選んでください。
「やることを決め、決めたことをやる」を徹底する、実践型プログラム。
人的資本経営という言葉に踊らされる必要はありません。やるべきことはシンプルです。社員を信じ、教育にお金をかけ、彼らが輝ける舞台を用意することです。
機械やシステムは、買った瞬間から価値が下がり始めます。しかし、人は違います。適切な教育と環境を与えれば、その価値は無限に高まります。
社員が自分の頭で考え、お客様のために知恵を絞り始めたとき、会社は想像もしなかった成長を始めます。そのための費用は、経費ではありません。未来へのもっとも確実な「貯金(投資)」なのです。
いつまで「指示待ち」を嘆き続けますか? 変化を恐れず、今日から組織の当たり前(常識)を書き換えましょう。
「デキる人を増やして、社会をもっと快適にする」
これが弊社のミッションです。自ら考え、行動する人材であふれる、活気ある未来を共に創りましょう。
社長一人で抱え込まず、まずは専門家にご相談ください。
記事でご紹介した「自律型人材育成」について、貴社の課題に合わせた導入プランをご提案します。
人材育成の悩みから経営戦略まで、まずはお気軽にお問い合わせください。