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人材育成

2026.1.31

人材育成が最良の事業投資である理由

はじめに:事業投資の選択肢と優先順位

事業を成長、発展させていくためには、事業に対する投資が欠かせません。

事業投資には様々な種類があります。機械や設備の購入、ITシステムの導入、綺麗なオフィスへの移転や高層ビルへの入居、優秀なコンサルタントを招いての戦略策定、広告やCMの展開など、多岐にわたる選択肢が存在します。

これらの投資は、確かにやらないよりはやった方が有効です。しかし、私が優先的にお金をかけるべきものを一つ挙げるとすれば、それは「人材育成一択」であると考えています。これは研修事業を行っているから言うのではなく、むしろ逆です。人材育成が最良の投資であるという確信があるからこそ、この事業に取り組んでいるのです。効果を考えても、本質的に組織を強くするために必要なものは、まず人材育成なのです。

人材育成が軽視される背景と負のスパイラル

近年、人材育成の重要性がなかなか認識されない傾向があります。

その理由として、「優秀な人材ほど退職してしまう」という現実があります。時間と手間をかけて若手を育てても、結局その若手も会社に残らないのではないか。期待をかけて人材を育成しても、いつ辞めるかわからないのだから、人材育成への投資は回収できない。そう考えて、人材育成よりも別のものにお金を使った方が良いと判断する経営者もいます。

しかし、これは負のスパイラルに自ら突入していく行為だと私は考えます。仮に、退職する方がいたとしても、コストパフォーマンスや効果を考えれば、やはり人材育成が最良の事業投資なのです。さらに言えば、人材育成への投資が適切に行われれば、その方も会社を辞めなくなります。逆に、人材育成にお金をかけないからこそ、そこに見切りをつけた方がどんどん会社を離れていくという側面もあるのです。やはり、人材育成にお金と時間をかけていくべきなのです。

事業成果を生み出す構造:個人から成果への連鎖

事業投資の目的は、事業の成果を高めていくことです。シンプルに言えば「業績を上げる」こととも言えます。そして、事業の業績は、マネジメントの結果として現れます。マネジメントが機能していればより高い成果を生み出し、マネジメントが機能不全に陥っていると成果が低くなります。

問題は、このマネジメントの仕組みが有効に機能するかしないかは、そのベースとなる人間関係に由来するということです。良い人間関係のもとであれば、マネジメントの仕組みはそれほど厳格でなくても良い結果を出します。逆に、マネジメントの仕組みをしっかり整えていても、ベースの人間関係が悪ければ、その仕組みは適切に機能しません。

では、人間関係は何によって形成されるのでしょうか。突き詰めていけば、それは「個人」です。個人と個人の関係が人間関係ですから、個人が良い人同士であれば人間関係は良くなります。しかし、そうでない場合には人間関係が悪くなります。

元を辿っていくと、結局すべての原因は個人に行き着くのです。人材育成とは、この個人を変えていくアプローチです。個人が良くなれば人間関係も良くなり、マネジメントがしっかりと機能するようになって、成果が上がっていきます。これが「人材育成が最良の事業投資である」理由なのです。

悪い組織の構造と「負のスパイラル」

悪い組織の例を考えてみましょう。成果の面では、低い付加価値、低い生産性、売上低下、利益減少という状態になっています。なぜそうなっているかと言うと、それはマネジメントの結果として、妥協、属人化、業務の重複が発生しているからです。

こうした組織は、より成果を得るための方法を徹底的に追求しません。しっかりと議論をするのが面倒だから、「これでいいや」という短絡的な仕事になってしまいます。短期的な生産性だけを追求して、自分一人のことだけを考えて仕事をしていきます。その結果、仕事がどんどん部分最適化し、属人化していって、全体として相乗効果が発揮できなくなります。

仕事の属人化が進めば進むほど、組織全体で見ると業務の重複、つまり無駄が発生します。その無駄が活動の成果をどんどん下げていきます。頑張っても頑張っても、それが無駄になっているから収益につながっていかないという状態になるのです。

では、なぜそうなるのでしょうか。それは、その職場の人間関係が無関心、不信、足の引っ張り合いだからです。お互いに関心があったり、お互いのことを信頼できたりすれば、妥協や属人化は発生しません。

しかし、お互いに関心がなく、お互いのことを信じておらず、それどころか足の引っ張り合いをしている状態では、協力して仕事をすることが煩わしくなり、一人でやった方が短期的に成果が出るので、どんどん仕事が属人化していきます。その結果、業務の重複が起きるのです。

では、なぜ人間関係はそのようになっているのでしょうか。それは、その組織を構成する一人一人の個人が、他責思考、他人事、無気力だからです。何か問題が起きたとしても、「それは私の仕事ではありません。誰か解決してください」「私は関係ないし、私は自分の仕事をちゃんとやっていますから。」「今までと同じことをちゃんとやっているじゃないですか。新しいことは面倒だし、やりたくない」という人たちの集まりだから、無関心、不信、足の引っ張り合いになるのです。

こうした人たちの集まりの中で一生懸命仕事をしても、損をするだけです。ちゃんと評価してくれるなら良いのですが、人間は本質的に変化を嫌う生き物です。自分が正しいと思って何か新しいことをやっても、周りから「余計なことをするな」とか「あなたが頑張ると私たちがサボっているように見えるじゃないか」などと言われ、どんどん足を引っ張られます。

そのような中で仕事をしていると、やる気がなくなってきます。面倒で、しんどくて、何かやると周りから色々言われる。「では、こちらも無難に最低限の仕事をしていればいいのではないか」と、結局その人も他責思考で無気力な人間になっていくのです。

組織がこの状態になっていくと、どれだけ優秀な新入社員や中途社員を採用したとしても、悪い方向に飲み込まれていきます。期待をかけていた人たちがどんどんダメになっていくのです。そのような中で、マネジメントの仕組みを整えたりしても、全然機能しません。「余計なことをするな。もう今のままでいいんだ」という人たちの集まりですから、うまくいかないのは当然なのです。

よくある対処法「組織改革と人事異動」の限界

この状態はまずいと、誰でもわかります。そこで、何らかの手を打ちたいと考えます。その際によく行われるのが、組織改革と人事異動です。私が以前勤めていた会社でも、頻繁に組織を変更していました。リーダーが不適切だからメンバーが育たないのではないか、活躍しないのではないかという発想なのでしょう。まず部長や課長といった会社の役職者を変えていきます。

しかし、外部から連れてくることは容易にできないので、基本的には会社の中の人をぐるぐる回しているだけです。それが効果を発揮することもありますが、全方位にわたって成果が向上することは稀でしょう。

例えば、ある部署のマネージャーがいま一つだったとして、そこに優秀な人を連れてくる。どこかの部署から異動させるとします。そうすると、その優秀な人がもともと見ていた部門は誰がやるかと言うと、優秀ではない人がそのポジションに入るわけです。すると、もともと良かった組織の状態がどんどん悪くなっていきます。

リーダーの影響は大きいです。このリーダー自身が変わらない中で、どこを担当するかのポジションだけを回しているのであれば、何の意味もありません。組織の全体としての総力が上がっていかないのです。

結局、こうしたことが、下から見ると「配属ガチャ」「上司ガチャ」という話になるわけです。もちろん、その考え方自体も他責ですし、改めなければいけませんが、実態としてはそうだと思います。

それでも、何もしないわけにはいかないので、とにかく組織をいじりたがります。どこかの部門とどこかの部門をくっつけたり、切り離したりします。それぐらいならまだ良いのですが、結局その中で役職者クラスをどんどん変えていくと、場合によっては人材が十分に足りていないため、いわゆる抜擢のような形で若い方をポジションにつかせることがあります。

しかし、高い役職を与えるほどではないという評価、飛び級で昇進昇格させたくないという

年功序列感覚が働き、例えば今まで「部」だったところを「室」や「課」に下げるなど、人に合わせて組織の方を変えてしまうのです。

本来、組織は果たすべき機能に合わせて設計していくべきです。その機能に必要な人材を連れてくる。中から調達できれば一番良いのですが、中にいなければ外から連れてこなければなりません。

ですが、発想が逆になってしまうのです。まず今いる人の中で布陣を組み、今いる人たちの等級などに合わせて組織を作っていくため、非常にいびつな組織図ができあがるのです。

制度や設備投資の限界

次に、制度設計について考えてみましょう。私も人事制度の改定支援をしているので、あまり言うのもどうかと思うのですが、極論を言えば、制度を変えても教育をしなければ何も変わりません。なぜなら、中にいるのが他責思考、他人事、無気力の人たちだからです。制度変更によって、例えば「評価の仕組みを変えます」ということになれば、今度は「制度が悪い」と言い出すのです。

新しい制度を導入した結果、評価が上がる方もいれば、評価が下がる方もいます。仕事がしやすくなる方もいれば、仕事がしづらくなる方もいます。すべての方向にプラスに行けば良いのですが、なかなかそうはいきません。物事には多面性があります。何事にも、表と裏、光と影があるのです。

少なくとも私の基本的な考え方は、頑張っている人が評価されて処遇を高めていく、あまり仕事をしていない方は評価が下がっていく、処遇が下がっていくことを望ましい姿とするものです。それが本来あるべき姿だと思っているため、その考えのもとに制度を設計します。

そうすると、適当に仕事をしたい人や頑張りたくない人にとっては、「余計なことをするな」という話になるのです。そういう人が多いと、結局「新しい制度がダメだ」ということで元に戻そうとします。あるいは、制度そのものは維持したとしても、どんどん形骸化していって、本来の効果を発揮できなくなってくるのです。

機械や設備、ITに投資するのも、やらないよりはやった方が良いです。しかし、それを実際に使う人たちがこのような状態だったら、先ほどの制度と同じことが起きます。自分がうまくいったら「やって良かった」と言いますが、うまくいかなかったら「クソシステムだ」「変な機械を買いやがって」という話をするのです。根本が歪んでいると、何をやってもダメなのです。だらか、まずは人材育成なのです。

人材育成の本質は「自律型人材への転換」

人材育成をする上では、仕事の実務に加えて、論理的思考、問題解決などの「物の考え方」、コミュニケーションの取り方、自己管理の仕方など、土台となる「仕事をする力」を鍛えることが必要です。その中でも私が最も重要だと思っているのは、他責思考の人間から卒業していただくことです。自ら考えて行動する「自律型人材」になっていただく。これが一番重要なのです。

根底のマインドが変われば、スキルは後からついてきます。まずは、この他責思考、他人事、無気力の人を、当事者意識が高くて、主体的で、積極的な自律型人材に変えていく。ここに一番お金を使うべきです。そうすると、あとはすべて良い流れに行きます。

仕事の意味や意義を感じて、組織の目標と個人の目標を一致させる。自分のために頑張ることが、組織への貢献にもつながる。まず、そういう「仕事がデキる人」を増やしていくのです。他責ではなく自責、受動ではなく能動で動ける人を増やしていく。そうすると、職場の人間関係が変わります。

自分の同僚や上司が、自ら考えて行動し、やることを決めて、決めたことをやる人であったら。言行を一致させ、能力も人格も優れている人ばかりであったら、人間関係は良くなるでしょう。お互いのことを信頼して、尊敬する。そういう人たちの集まりだから、協働意識が生まれるのです。

バーナード教授が組織の成立要件として3つのポイントを掲げています。1つ目が共通の目的、2つ目が協同意識、3つ目がコミュニケーションです。これらの中で、私はこの協同意識が一番難しいと思っています。同僚が信頼できる人でなければ、一緒に仕事をしようと思いません。うまくいかないことがあったらこちらのせいにされる、自分が果たすべき役割を果たさない、全部押し付けようとする、そんな人たちと仕事をしたいかと言えば、当然したくありません。

もちろん、能力の高い低いはありますし、それはキャリアによって、経験によっても違ってきます。能力は後から上げていくことはできますが、根本の考え方がズレている人とは一緒に仕事ができません。まずはここからです。仕事に対する姿勢を整えていくことによって、お互いに信頼できるような人間関係を作っていくのです。

良い組織の構造をつくる「正のスパイラル」を生み出せ

この人間関係がベースにあれば、マネジメントシステムはそれほどきっちり整えなくても、結構うまくいきます。お互いに協力するからです。その状態を維持するためには、やはりルールや仕組み、ツールがないよりはあった方が良いです。そうしたものを整えていくことで、明文化された仕組みの中で役割分担がしっかりと機能していって、その結果としてチームの相乗効果が高まっていきます。

一人ひとりがバラバラで動くよりも、互いの知恵を出し合ったり、空いている時間に他人の仕事を手伝ったり、年長者が若い方を教えたりなど、チームとして助け合うことで、単独で動くよりも他人と一緒にやった方がパフォーマンスが高くなるという状態を作り出します。この相乗効果を生み出していくから、仕事の成果が高い付加価値、高い生産性、売上向上、利益創出へとつながっていくのです。

この状態を目指していきましょう。元を辿っていくと、すべてが個人に行き着きます。技術的な要素ももちろん必要です。土台となる物の考え方や話し方、聞き方など仕事の基礎力も必要です。しかし、その個人の中でも、根底にあるのは職業観、労働観であり、人間性、人間観なのです。まずそこが備わってくれば、この悪い流れを良い流れに引き戻すことができるのです。

普通に考えてみていただきたいのですが、こういう会社であれば、そもそも辞める必要はありません。仕事をしていて楽しいですから。なぜ会社を離れるのかといえば、この負のスパイラルのどこかが原因になっているのです。すべて元を辿っていくと、まず個人の考え方です。だから、まずは人材育成なのです。

ただし、人材育成はすぐに効果が出ません。長い時間を要します。そのため、人材育成と並行して組織開発を行います。組織の風土や文化、共通の価値観を浸透させていく中で、信頼、尊敬、尊重を重視する文化を醸成します。

それが結果的に高い付加価値や生産性を創出していきます。これが人材育成にお金や時間を投資した結果がしっかりと返ってくるという仕組みです。個人が成長して成功することによって、組織の成長と成功につながっていくのです。人材育成が最良の事業投資なのです。

まとめ:人材育成を最優先すべき理由

機械や設備、ITシステム、こうしたものにお金をかけるのも決して悪くはありません。場合によっては組織構造を変える、人事異動をする、これも有効になることもあるかもしれません。しかし、こうしたものが効果を発揮するためには、まず前提として、継続的に、意識的に人材育成を行っていることが必要であり、人材育成は事業投資の基盤なのです。

人材育成をやめてしまって、他のものにお金をかけるぐらいであれば、他のものを止めてでも人材育成をやった方が良いのです。それが着実に事業の成果を高めていきます。是非、あなたも自分の組織の中で「どこに注力すべきか」という問いに対して、「人材育成」と即答できる状態を保っていただきたいと存じます。

個人が成長すれば人間関係が良くなり、人間関係が良くなればマネジメントが機能し、マネジメントが機能すれば成果が上がります。すべての起点は個人であり、その個人を変えるのが人材育成です。これこそが、最も確実で、最も効果の高い事業投資なのです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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