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ブログ

2015.11.6

経験の持つ意味を変える方法

前回、「負の感情にこそ、自分らしさが潜む」というテーマで、自分の素直な感情と向き合うことの重要性についてお話ししました。
http://growingtree.jp/archives/1539

今回はその続きとして、過去の経験との向き合い方についてお話いたします。

経験の構造

前回の繰り返しになりますが、イヤな経験に伴って自分の中から生まれた負の感情を、ムリヤリ打ち消すことは非常に困難です。

肯定しようとしても、それは単に目を背けているだけであり、負の感情と向き合うことから逃げているだけです。

経験に伴う負の感情とは、正面から対峙する必要があります。

 

しかし、それは「その時にそういう感情になった」ということを「いったん」正面から受け止めるということです。

いつまでもマイナスの経験としてズルズルと引きずりましょうと言っているわけではありません。

時を経て、経験の「意味」を変えるのです。

 

「経験の意味を変える」と言われても、ピンと来ないかもしれません。
なので、まずは「経験」の構造から考えてみましょう。

 

経験とは、あなたの「体験」と、その時の「感情」とが合わさってできたものです。

つまり、

経験=体験+感情

と表すことができます。

 

例えば、あなたが子どもの頃、運動会でかけっこで2番になったとしましょう。

 

この時、あなたが1番を狙っていて、しかも1番になれると思っていて、結果として2番になってしまったとしたら、 その時に「悔しい」という感情が芽生えることになるでしょう。

 

この場合、

体験=かけっこで2番になった
感情=悔しい

が合わさって、あなたの中では「悔しかった経験」として残ることになります。

 

しかし一方で、あなたは足の速さに自信がなく、ビリになるかもしれないと思って出場し、結果としてなんと2番になってしまったとしたら、思いがけず「嬉しい」という感情が芽生えるかもしれません。

 

この場合、

体験=かけっこで2番になった
感情=嬉しい

が合わさって、あなたの中では「嬉しかった経験」として残ることになります。

 

注目していただきたいのは、どちらも体験としては同じなのに、経験としてはまったく逆のものになってしまっているということです。

 

体験というのは、別の言葉で言うと「出来事」です。

特定の「出来事」に、あなたという存在が合わさった時、あなたの中で「体験」となります。

そして、出来事そのものには意味はありません

「ただそうであった」という事実に過ぎないのです。

 

しかし、上記の「かけっこで2番になった」という出来事も、あなたがどのように臨んでその出来事を迎えたかによって、あなたにとっての意味はまったく別のものとなります。

それは、その出来事を体験した時に生まれた感情が違うからです。

つまり、出来事の意味はあなたの感情から生まれているのです。

 

「かけっこで2番になった」という出来事は、前者にとっては「1番になろうとしたけど、なれなかった」というネガティブな意味が付与されて、その経験が記憶に残ります。

一方、後者にとっては「ビリになるかと思っていたけど、2番になれた」というポジティブな意味が付与されて、その経験が記憶に残るのです。

 

つまり、言い換えれば

経験=出来事+意味

と言うことができます。

 

そして、その時に味わった「感情」は変えることはできませんが、そこから生まれた「意味」は後から変えることができます

当然ながら、すでに起こってしまった出来事自体も変えることはできません。

しかし、その出来事に伴う「意味」を変えることによって、あなたの「経験」はあなたの都合の良いように変えることができるのです。

 

この出来事の「意味の変更」こそが、イヤな経験を効果的に活かしていくプロセスなのです。

 

経験の再現と意味の出現

私が所属しているJCDA(特定非営利法人日本キャリア開発協会)では、この意味の変更のプロセスを「経験代謝サイクル」というモデルで表現しています。

 

これはキャリアカウンセリングの面談プロセスを図式化したものです。

「経験の再現」と「意味の出現」を繰り返すことで、自分の過去や現在の捉え方(セルフイメージ)を変えていくという過程をうまく描いています。

blog083

 

この概念を一言で表現すると、

過去の経験の意味を、後づけで変えてしまおう

ということを表しています。

自己啓発や成功哲学でも「意味づけと解釈」という言葉がよく使われますが、同じようなことを指しています。

 

過去の経験を「今のあなた」が再現することによって、自分にとって好ましい「新たな意味」を生み出す。

キャリアコンサルタントがやっている面談(の初期段階)というのは、相手の鏡となって、この経験代謝サイクルを回すお手伝いをしているだけとも言えます。

(もちろん、実際にこれを行うには専門的な知識と技術が問われるから、職業になるのですが)

 

ある出来事に伴う「感情」は、その時のあなたから生まれたものです。

つまり、その出来事があなたに与えた「意味」も、その時のあなたから生まれたものだと言えます。

しかし、それから成長した「今のあなた」がその出来事と改めて向き合った時、当時の感情は変わらなくても、そこから別の「意味」を生み出すことができます。

 

経験=出来事+意味

 

です。

 

出来事に伴う「意味」を変えることで、その出来事はあなたにとって都合のよい別の「経験」に変化させることができます。

過去の自己分析を行うこと、そこからセルフイメージ(自己概念)を明確にすることとは、経験をすべて「意味のあること」として「未来への力」に変えていくことにつながるのです。

 

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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