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2017.11.6
先週11/1の特別国会で第四次安倍内閣が発足し、「生産性向上」と「人づくり」を両輪として経済成長に取り組む、というメッセージが発せられました。
生産性向上は、「働き方改革」という言葉に代表されるように、あらゆる業界、職種において重要と位置づけられている課題の一つであり、超少子高齢化社会に向かう日本が、持続可能な成長を継続していくために避けては通れない大きな目標です。育児や介護などの事情でフルタイム就業が困難な方が成果を上げるためにも、長時間労働を是正して心身の健康を確保するためにも、生産性向上は欠かせない課題であり、まさに国レベルで取り組む事項だと言えるでしょう。
一方で、「人づくり」。これは何を意味するのでしょう。生産性向上と比べると、政府からも明確な定義や具体的な取組は発信されず、様々な解釈の余地がある言葉だと思います。私の解釈では、人づくりとは「働くすべての人がプロフェッショナルになる」ことを指すのではないかと考えます。
私が研修やセミナーでよく話する話の一つに、「プロの仕事」があります。
新入社員や若手の方はもちろん、中堅クラス、時に管理職の方に対しても、同じような話をします。
経営者や個人事業主はもちろんのこと、給与で働いている人であっても、仕事の対価としてお金をいただく以上は「プロ」の仕事が問われます。そして、顧客と直接接点を持つ営業担当者だけではなく、研究・開発・企画・流通・事務に至るまで、すべての領域において「プロ」としての責任と期待が問われるのです。
冒頭に述べた「生産性」についても、プロ意識の低さゆえに生産性が低くなることも考えられます。働くすべての人が高いプロ意識を持っていれば、結果にフォーカスした仕事の進め方をすることが通常の基準となり、結果として生産性は向上します。
プロの仕事とは「成果が高い基準で安定している」ことです。アマチュアの仕事は、成果にムラがあります。高いパフォーマンスを発揮する時もあれば、低い時もある。これがアマチュアのやることです。
例えば、ゴルフのコンペでアマチュアがプロに勝つ光景を見かけることがあります。しかし、一度プロに勝つことがあったとしても、それが二回目、三回目と、常に勝ち続けることができるかというと、必ずしもそうとは限りません。絶好調の時もあれば、絶不調の時もある。良い結果が出たとしても、それは「たまたま」結果が良かっただけとも言える。しかし、アマチュアであれば、それで良いのです。
プロの仕事はそういうわけにはいきません。絶不調になってはならないのです。好不調の波があったとしても、そのブレ幅は最小限にとどめなければなりません。常に絶好調というわけにはいかなくても、一定以上の成果は必ずあげなければならないのです。
パフォーマンスのブレ幅が小さく、高い水準で安定している。これがプロに求められる仕事であり、安定的に成果を上げられるように仕事に取り組むことが、プロの姿勢だと言えるでしょう。
では、プロの仕事をするためには、どのような要素が必要なのでしょうか。それは「目的意識」「熱意」「準備」の3つにあると私は考えます。
一つ目の要素は「目的を持って、仕事に取り組んでいるか」ということです。これには2つの意味があります。
第一に「組織や職務そのものが持つ目的」です。営業部門であれば、商品やサービスを販売すること。企画部門であれば、有用なアイデアを生み出すこと。管理部門であれば、事業部門が本業に専念できるように、組織環境を整えることです。組織や職務が本来担う目的は、至ってシンプルです。しかし、仕事をしていくうちに、目的を遂行するための手段が目的に転じてしまい、本来の目的を見失ってしまうことがあります。形骸化・形式化した報告事項、会議、資料作成などに時間が取られ、本来の目的に直結した活動をする時間が取られてしまうことで生産性が低下するという本末転倒な事態は、多くの職場で見られる光景だと言えるでしょう。
第二に「自分にとっての、その職務を行う目的」です。自分は何のためにこの仕事をしているのか。自分は何のためにこの組織に所属しているのか。そこに明確な答えを持たずに仕事をしている限り、仕事は所詮「他人事」になってしまいます。「命令だからやる」「決まりだからやる」このような意識でプロの仕事をすることは困難です。プロの仕事は自分の意思で行われることが求められます。そのためには「自分にとっての目的」が必要なのです。
二つ目の要素は「熱意を持って、仕事に取り組んでいるか」ということです。「本気でやろうとしているか」と言い換えることもできます。
心の底から、成し遂げたいと思っているか。一つひとつの仕事に全力で取り組んでいるか。仕事を「こなす」感覚で、プロとしての役割を果たすことは困難です。成果をあげることを本気で願い、そのためにできることはすべてやる。目の前の仕事、目の前の現場に対して、熱意をもって全力で取り組む。手を抜かず、キッチリとした仕事を行う。こうした取り組みの積み重ねが、価値ある経験、専門的な知識と技術、高みを求める意欲や謙虚さなどになり、それがプロとしての仕事を果たせるだけの能力になっていくのです。プロの仕事として発揮すべきパフォーマンスは、熱意ある取組の結果として表れます。
三つ目の要素は、「一つひとつの仕事に、しっかりと準備をして取り組んでいるか」ということです。安定した成果をあげるということは、再現性のあるパフォーマンスを発揮するということです。
そして、再現性のある仕事をするためには、「その場対応」「思いつきの判断」を極力少なくし、できる限り計画的に物事を進める必要があります。いつも「不測の事態」に振り回されていたのでは、うまくいったり、いかなかったりという、安定しない仕事をすることになってしまいます。安定して高いパフォーマンスを発揮する。そのためには、計画、シミュレーション、段取りなど、緻密な準備が求められるのです。
こうした一つひとつの仕事に対する準備に加えて、プロの仕事には「日頃の準備」も求められます。いかに事前の準備が大切だとはいえ、すべての物事を計画通りに進めることは現実的ではありません。リスクをゼロにすることは困難です。予期せぬ事態、計画とのズレを完全に回避することはできないので、時に臨機応変な対応をスマートに行うこともプロの仕事には必要です。そうした事態に対処するためには、プロの職業人としての「底力」が問われます。これは一朝一夕で身につくものではありません。一日一日の積み重ねが求められるのです。
いざという時に、それが試され、如実に結果に表れるのです。日頃からどのような「準備」をしているか。それがプロとして問われる仕事への「姿勢」だと言えるでしょう。
働くすべての人が、高いプロ意識を持って仕事に取り組むようになれば、きっと世の中は価値の高い商品、質の高いサービスで満ちあふれるようになることでしょう。そして、そこに人々のさらなる幸せと豊かさが訪れると、私は思います。
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