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2019.11.18
先週、宮崎県で自律型人材のセミナーを行ってきました。
自律とは「やるべきことを自分で考え、自分の力で行動すること」です。変化のスピードが速く、臨機応変な対応が求められる現代において、自律性は視野を広げるために必要なことすべてのビジネスパーソンに求められる要件と言えます。
しかし当然ながら、自分で考えたことが誤っている場合、望ましくない結果を招くこともあります。
ちょうどセミナーの前日、大手コンビニチェーンの社員が、担当店舗のオーナーの留守を狙って過剰な商品発注をして、不適切な売上を立てていたことがYahoo!ニュースで取り上げられていたため、この話を受講者の方々に投げかけました。
「この行動は、果たして正しいのだろうか。」
自律性が求められる現代だからこそ、一人ひとりに一層の職業倫理が問われています。こんな姑息な手段を使わなければ売上が作れないというのなら、それは明らかに事業や業務のあり方・やり方が間違っていると言えるでしょう。
短期的な課題、自分の仕事や立場だけに焦点が向いてしまうと、将来的な影響や関係者への影響に考えが及ばなくなってしまいます。
一人の職業人として、そもそも人として、何が正しいのかを見失わないようにすることが必要です。そして、そのためには常に視野を広く持ち、さらに広げ続けようとする努力が求められます。
鳥の目、虫の目、魚の目。
仕事をする上で備えておくべき3つの視点として、しばしば用いられるたとえです。
鳥の目は、高い位置から全体を見渡す目。
虫の目は、目の前のことを見つめる目。
魚の目は、潮の流れを捉える目。
どれが優れているかという話ではなく、この3つすべてを備えておくことが求められます。
社会環境の変化や技術の進化が著しい現代では、時代の流れを読むための「魚の目」が必要です。
また、ビジネスの構造や業務内容がより高度に、そして複雑になっている現代では、目の前の課題に集中して成果を求めるための「虫の目」も必要です。
しかし、目の前の仕事、短期的な課題に集中しすぎると虫の目が強くなりすぎてしまい、視野が狭くなってしまいます。周囲への影響や他の選択肢、そして仕事そのものも見失ってしまいがちです。
自分の置かれている状況や仕事の目的を冷静に俯瞰して見るためには、広い視野を持つための「鳥の目」を保っておく必要があります。
個々の仕事を成し遂げるためには、「いま、やるべきこと」に視点を正しく定める必要があります。
社会環境と仕事内容が複雑化し、短期的な成果と時間に追われがちな現代では、つい視点を誤ってしまいがちになります。
視点は自分の視野の中からしか定めることができません。視点を正しく持つためには、視野を広げ、視点を定めるべき範囲を広く持っておくことが必要です。
視野の広さは、物事を見ている位置(高さ)によって決まります。これを「視座」と言います。
低い位置から周囲を見渡すよりも、視座を高くしてより高い位置から見渡した方が、より広い視野を持つことができます。すなわち、鳥の目で物事を見るのです。
鳥の目で広い範囲に目を配り、魚の目で時流の流れを読み、定めた視点に対して、虫の目でより注視していく。それが仕事を進める上での正しい姿ではないかと考えます。
では、どのように視座を高くすれば良いのでしょうか。
その答えは、それは自分の仕事に対して、「志(こころざし)」を持つことです。
職業人・組織人である以上、当然ながら仕事には成果が求められます。上述のコンビニの例では、社員の方々も上層部から短期的に売上を伸ばすことが求められていたと察しはつきます。これに限らず、今年は高齢者への生命保険の販売についての問題行動が世間を大きく騒がせていました。同じようなケースだと言えるでしょう。
しかし本来、売上をあげることが事業の最終的な目的ではないはずです。売上は事業のプロセスと一時的な結果であって、すべての事業は人を豊かにし、幸せにするために存在します。
「何のためにこの仕事をしていのか」
「この仕事を通じて、誰に何を提供し、貢献しているのか」
自分の仕事に対して自信と誇りを持ち、志を持っていれば、自分の短期的な課題(虫の目)だけではく、周囲の関係者への影響や、将来的に自分に与える影響について、より高い視座(鳥の目)から考えることができます。
誰もが、忙しくなると気持ちに余裕がなくなり、鳥の目を失いがちになります。虫の目に偏りがちになればなるほど、道を踏み外してしまいやすくなると言えるでしょう。
志を持って視座を高くし、鳥の目から正しく視点を定めることができる人が増えて欲しいと切に願いますし、また私自身も鳥の目を持って日々の仕事に臨めるよう、自分を戒め続けていきたいです。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(追伸)
仕事に対して志を持つことについては、過去ログをご覧ください。