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2021.10.25
以前にYouTubeに投稿した内容ですが、最近の研修案件でほぼ毎回のように話をしている鉄板ネタの質問話法についての話です。
採用面接、部下との面談、顧客との商談など、あらゆるテーマに応用できる汎用性の高い会話テクニックです。相手の情報を収集したい時から、相手の意向を確認したい時まで、様々な会話の場面で活用できます。研修本編から脱線した雑談としての話であっても、研修後のアンケートで印象に残った話として記載していただくことが多いネタです。ぜひご参考にいただき、仕事や生活にお役立てください。
会話がいまいち盛り上がらない時、あなたはどのように対応しているでしょうか。沈黙に耐えられず、自分から積極的に話をする場合もあるかもしれません。単に会話を楽しんだり、時間をつないだり、あるいは自分からアピールしたりすることが目的であればそれでも構いませんが、商談などの場面で相手から情報を収集したい場合にはそういうわけにはいきません。
また、相手との関係構築を図る上でも、自分があまり話しすぎるのも得策とは言えません。人は誰しも、相手の話を聞くよりも、自分の話を聞いて欲しいという欲求を無意識のうちに秘めています。自分がしたい話を控えて、相手の話に耳を傾け、共感した方が、より相手からの信頼度を高めることができます。
とはいえ、相手が口下手だったり、頭の整理がついていなかったりした場合には、闇雲に話を投げかけても話がうまく広がりません。相手がうまく話せるように、こちらから導いてあげることが効果的です。その際に有効なのが、話の「軸」をイメージすることです。相手の話をどの方向に広げたいのかをイメージし、軸に沿って質問をしていく。
それにより、相手は自分の言いたいことをうまく伝えられるようになるし、こちらは知りたい情報を効率的に収集することができます。そして、実りある話ができたという体験が、お互いの関係性をより高めていくことになるのです。
話の軸は下記の3種類あります。
ある話題があった時に、それに関する詳細な情報を加えていくことで、具体的にしていくアプローチです。一般的に話の「深掘り」と呼ばれるものです。話が奥深く入っていくイメージであることから「垂直展開」と呼んでいます。
抽象的というのは、その話が指し示す対象範囲が広いことを指します。一方、具体的というのは対象範囲が狭いことを指します。そして、両者の差は話の情報量の多さによって決まります。情報量が少なければ話は抽象的になり、多ければ具体的になります。
例えば、商談相手から「御社の課題は何ですか?」と尋ねられたら、範囲が広すぎて何から答えれば良いのか戸惑ってしまいます。しかし、「御社の営業面における課題は何ですか?」と尋ねられたら、範囲は限定されて答えやすくなりますし、さらには「御社の営業面における情報システム上の課題は何ですか?」と尋ねられれば、答えるべき範囲はかなりクリアになります。これが話を具体化するということです。
相手の話を広げようとする場合、まず最初に行うのがこの具体化です。話題に関する情報をさらに追加していき、相手が何の話をいているのかを具体的に、明確にしていきます。この際に有効なのが「5W2H」で質問することです。When(いつ)、Where(どこで)、
Who (誰が)、What (何を)、Why (なぜ)、How (どのように)、How much(いくらで)/How many(どれだけ)を尋ねていくことで、相手の話を深掘りしていくことができます。
例えば、部下から「最近、仕事に身が入らなくて」という相談を持ちかけられたとしましょう。そこでいきなり「なぜ?」と聞いても、相手も困惑してしまいます。自分もなぜだかわからないから、あるいはどうしたら良いかわからないから相談に来ているのです。その場合には、状況を整理するためにひとつ一つ確認して、話を具体的に、明確にしていきます。
「いつ頃からそう感じる?」「何をしている時に、特にそう感じる?」「特定の誰かといる時に、より強く感じる?」「どこにいる時に、特にそう感じる?」など、詳細な情報を加えていくことで、話の範囲を限定していきます。ある程度限定できてきたら、背景や原因の仮説も立てられるようになります。その段階でようやく、「そもそも、なぜそう感じるのだろう?」「どうやったら、仕事に集中できるようになるだろうか?」という本質的な質問を投げかけていきます。
話が抽象的な段階では、話のポイントが定まっていません。5W2Hによる質問で話を深掘りすることで、詳細な状況を相手と共有できるようになります。また、具体化するということは、話し手自身が自分の頭を整理することにもつながります。
垂直展開による具体化がある程度の段階に達すると、話が底をつき、それ以上深掘りができなくなります。あるいは、話を掘り下げているうちに、相手の言いたいポイントがその延長線上にはないことを察する場合もあります。その場合には、話題そのものを転換することが有効です。これは、話を横にスライドするイメージであることから「水平展開」と呼んでいます。
質問としては「Anything Else(他に何かあるか)?」を尋ねます。元々の話に関連して、他に何か思い当たることがないかを問うのです。例えば、上述の「仕事が身に入らない」という相談に対して、垂直展開で特定の場面についての話がひと段落した段階で、「他に何か、仕事に集中できない場面はあるかな?」と尋ねることで、話題を横方向にスライドさせることができます。そして、その回答として得られた「別の話」をさらに垂直展開することで、詳細な状況を確認することができます。
このように、縦に深掘りし、横にスライドして、それをまた深掘りして、、、を繰り返していくことで、相手に関する情報を面的・網羅的に収集することができます。2つの軸を組み合わせることで二次元(2D)での情報収集ができるイメージです。
単なる状況確認などの場合は、2Dでの情報収集で目的を果たすことができるかもしれません。しかし、相手の意向や本心を確認したい場合、垂直と水平による話の展開には限界があります。なぜなら、人は無意識のうちに一定の条件や制約に阻まれて回答をするからです。私はこれを「どうせ無理の壁」と呼んでいます。
例えば、私はしばしばキャリア面談で「何かやりたいことはありますか?」と尋ねることがあります。そして、多くの場合は控えめで現実的な回答が返ってきます。お金、時間、体力、人間関係のしがらみなど、現実に立ちはだかる諸々の制約が「どうせ無理の壁」となって、自分の本心を偽った「建前」としての話を引き出してしまうのです。
したがって、相手の本心を確認するためには、尋ねる際に「どうせ無理の壁」を取り払う必要があります。ここで、第3の軸が必要となります。この軸が示すものは「理想」と「現実」。目の前にある「現実」の奥側にある「理想」に焦点をあてるため、話に奥行きを持たせるイメージです。これを私は「仮定展開」と呼んでいます。
具体的には、制限を取り払って視野を広げてもらうため「if(もしも)」で尋ねます。例えば、上述のキャリア面談の例なら、「もしも、お金が無限に使えるとしたら、何をやりたい?」「もしも、1ヶ月間有給休暇が取れるなら、何をやりたい?」など、仮定で話をするのです。制限を解除する方向に導くのが通例ですが、逆に「あと余命一年しかないとしたら、何をやっておきたい?など、あえて強い制限を設けることも本心を探る上では有効です。
「もしも話」であれば、好き放題言うことができます。まずは、仮定の話で制限を解除したり、あえて強めたりして、相手の本心を探る質問をするのです。そして、本心が確認できた段階で、それを徐々に現実に寄せていきます。理想を明確にした上で、それを現実のもののとするために必要な課題を浮き彫りにし、その解決に向けて目標を立て、計画を考えていくのです。
このように、垂直と水平による二次元(2D)展開に第3の軸を設けることで、三次元(3D)で話を展開することができます。これが3D質問話法です。冒頭で申し上げた通り、上司や同僚との会話から、顧客や取引先との会話に至るまで、あらゆる場面で汎用的に活用できます。
人は誰もが自分の言いたいことを、思うように伝える能力があるとは限りません。そもそも、頭の整理がついていなくて、自分が何を言いたいのかが自分でもよくわからないという場合もあります。3D質問話法は、話の展開に3つの軸を設けることで、思考の整理から意向の確認までを容易に行うことができます。
コミュニケーションが良くなれば、人間関係も良くなるし、仕事の品質も良くなります。仕事だけではなく、家族や友人との会話など、私生活の場面でも役立つことが期待できます。身近な人たちとの会話で試していただき、コミュニケーションの経験を良くするよう活用いただければと思います。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。