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2022.8.29

ビジネスリーダーに最も必要な資質「セルフマネジメント能力」 〜やることを決める、決めたことをやる〜

先週から、あるIT系企業様でリーダー層の研修がスタートいたしました。

一般的な企業研修とは異なり、受講者と講師が長期間密接に関わる、実践と成果に徹底してこだわった「普遍的な仕事力」を磨くプログラムです。かつて同僚からは「頭がおかしい」とまで言われたことがあります。

私にとっては、最もやりがいがあり、最も覚悟のいる仕事。私の信念と想いをど真ん中で伝えられるプログラムです。この仕事をいただけて本当に嬉しいと思うのと同時に、決して半端な覚悟ではできないものなので、しっかりと責務を果たし、最後までやり遂げられるよう、こちらも気を引き締めて臨みたいと思います。

今回は、この研修プログラムのメインテーマでもあります「セルフマネジメント」の重要性についてお話しいたします。

課題設定力と実行力を鍛える最強の研修プログラム
「セルフマネジメント道場」

今回スタートした研修は、私が「セルフマネジメント道場」と呼んでいる研修プログラムです。当初は、自ら考えて行動し、自律的に活躍する人材を育成する、自律型人材の育成プログラムとして考案したものでした。

しかし、このプログラムで得られる効果が、組織の中核人材、次期幹部人材が備えておくべき自己管理能力(セルフマネジメント能力)の向上に適していることから、ビジネスリーダー向けのプログラムとしてアレンジして導入しています。この企業様では、2020年に引き続いて2度目の実施です。

研修期間は半年間で、初回、中間、最後の3回の集合研修を行います。これ自体はいたって普通の構成なのですが、特徴的なのは集合研修を行わない期間の取り組みです。

オンラインのグループウェア(今回はMicrosoft Teamsを利用)に研修受講者用のチャンネルを作成し、毎週1回、私から2,000~3,000文字程度の文章を投稿します。受講者の方はそれを読んで、翌週一週間で取り組む目標を宣言。併せて、当週の目標に対する取り組み結果と成功要因/失敗要因を報告いただきます。その報告に対し、私が一人ずつフィードバックのコメントを返信。このサイクルを半年間毎週行います。これを私は「週次報告」と呼んでいます。

研修中の中間課題を一週間単位で設定し、受講者からの報告と講師のフィードバックを毎週行うのです。通常では考えられない密度です。

一般的な研修では、研修期間中のアクションプラン(実行計画)を作成してそれを実行し、その結果を次の研修で報告するという形態をとることが多いです。もちろん、これだけでも、単発の研修を1回きりで行うよりもはるかに高い効果が得られます。しかし、この実践期間として1〜3ヶ月程度を設けることが多いため、間隔が長すぎるあまり「夏休みの宿題」状態になってしまうことが多いです。報告の直前に慌てて取り組むことになり、当初に掲げていた目標は当然達成できず、「時間がなくてできませんでした」という反省報告を聞いておしまいになってしまうことが多いのです。これでは何の力も身につきません。

実践と報告のサイクルを高頻度にすることで、こうした「中だるみ」を防ぎ、高い緊張状態を保ち続けることができます。また、サイクルを高速で繰り返すことで、回を追うごとに課題設定の質も高まりますし、はじめの頃はなかなか実行できなかった方も、次第に決めたことをやりきれるようになっていきます。

やることを決め、決めたことをやる。このシンプルなサイクルを高頻度で回すことによって、セルフマネジメントに必要な課題設定力と実行力を鍛えていく。これ以上に、実践的で、効果が目に見える研修プログラムはないのではないかと、私は考えています。

なぜ、リーダーにはセルフマネジメント能力が必要なのか

ビジネスリーダーにとって必要なものは何か。当然、いろいろな要素が挙げられますが、あえて一つだけ選ばなければならないとしたら、私は迷わず「セルフマネジメント能力」を挙げます。

リーダーの役割は、環境変化に対応するために、自ら変化を起こすことです。極論を言えば、組織を取り巻く環境が何も変化しないのであればリーダーは必要ありません。これまでと同じことを、同じように続けていく。それで十分だからです。しかし、実際にはそんなことはありえません。むしろ、環境変化のスピードが速く、世の中のスタンダードや常識が次々と変わっていく現代においては、政治や経済の動き、社会の変化、技術の革新に合わせて、事業や組織をどんどん変化させていかなければ、市場から取り残されていくことになります。

慣れしたしんだ事業、業務内容、仕事の進め方から離れて、自ら新しいことに取り組むのは決して容易ではありません。むしろ面倒だと感じることの方が通常でしょう。人は誰しも、変化を嫌い、安定を求めにいく性質を持っています。個人レベルでもそうなのです。ましてや、複数の人の利害を調整しながら組織を動かしていくためには、強いエネルギー、リーダーシップが必要です。

環境の変化に対応するために、自分たちの組織をどのように変えていけばいいのか。それを考えて、実行に移す。すなわち、「やることを決める。決めたことをやる」ことがリーダーの仕事です。目標を定め、そのための工程を計画として描き、自ら立てた規範に従って、自らを動かしていく。これを「自律」と呼びます。読んで字のごとく「自らを律する」ことです。

そして、チームのメンバーなど他の人を動かしていくためには、誰よりもまず、リーダー自身が率先して自分の規律を守っていくことが必要です。どれだけ崇高なことを声高に唱えても、言っていることを自分自身がやっていなかったら、周囲の人はついてきません。「お前がいうな」「まず、あなたがやれや」と、冷ややかな視線を浴びることになります。

言っていることとやっていることが一致していない人の発言を、人は信用できません。言行を一致させ、自分自身の一貫性を保つことがリーダーに求められる資質です。自分が掲げた理念や目標に対し、自分自身が誰よりも本気になり、信念を持って、態度と行動で示していく。そうした姿に周囲は惹きつけられ、リーダーの考えに付き従おうと考えるものなのです。

したがって、リーダーは、人を動かす前にまず自分自身をコントロールしなければなりません。やると決めたことを、決めた通りにやり切る。そのために自らを律していくことが、セルフマネジメントなのです。

意識は変わらない。行動を変えろ

セルフマネジメント能力を高めるためにどうしたら良いのか。本来であれば、ここで「意識を変革することだ」と言いたいのですが、残念ながら意識を直接的に変えるのは決して容易ではありません。むしろ、ほぼ不可能だと言った方が考えた方が正しいかもしれません。意識は変えようと思って、変えられないのです。

なぜなら、人間の意識の95%は無意識で構成されるからです。自分自身で自覚できる意識(顕在意識)は全体のわずか5%に過ぎません。どれだけ「気をつけます」「注意します」「意識します」と言ったところで、それは5%の部分でなんとかしようとしているのと同じなのです。これでは変えようがありません。

無意識は、それまでに見聞きした情報と自分自身の体験、つまり記憶から構成されています。そのため、過去の思考パターンや行動パターンが無意識の思考と行動を司り、日頃の何気ない判断を導いているのです。それまでの何十年という膨大な記憶情報から自律的に構築された「自分のパターン」をわずか5%の意識だけで変えるのは容易ではありません。意識は変えられないのです。

では、意識を変えるためにはどうしたら良いのか。その答えは、行動を変えることです。無意識が記憶でできているということは、これから新たに作り出す記憶が、好ましい行動、成功に導く行動で塗り替えられていけば、無意識の判断基準が変わっていくことになります。

思考や行動のパターンは、過去の言動の「影響度」×「量」によって決まります。例えば、意識が大きく変わる一例として、事件や事故、災害などの強烈な出来事の体験が挙げられます。たった1回であっても、影響力が甚大な壮絶な体験をすることで、考え方や価値観ががらりと変わることはありえます。

とはいえ、それほどの壮絶な体験を自ら作り出すことは容易ではないですし、何より感情的にも自ら好んで体験したくはありません。ここに頼るのはあまり現実的ではないと言えるでしょう。したがって、自らの意思で意識を変えるためには、影響度ではなく量を重視した戦略をとることが有効です。

たとえ、影響度は比較的小さくても、頻繁に繰り返し何度も起こることで、量が思考と行動のパターンを変えていきます。そして、リーダーに求められるものは自らを律するセルフマネジメントであるため、ここで行うべきは自分が決めたことを、決めた通りに行われる「達成体験」を積み重ねていくことだと言えます。すなわち、小さな達成体験を積み重ねていくことで、自己効力感を高め、「決めたことを実行するのが自分の当然の姿である」というセルフイメージを作り上げていくのです。

セルフマンジメント道場の週次報告は、小さな達成体験を高頻度で積み重ねていくことによって、行動から意識を変えていくプログラムです。「やることを決める。決めたことをやる」そのシンプルな行動の繰り返しが、人々を率いて組織を動かしていくリーダーに不可欠な自律性、セルフマネジメント能力を鍛え上げていくのです。

今回ご参加の22名の方が組織のリーダーとしてご活躍していただけるよう、私もこの半年間しっかりと取り組んでまいります。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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