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2022.12.12
先週の金曜日に44歳の誕生日を迎えました。たかだか1歳の違いですが、43歳と44歳は少し受け取るイメージが違いますね。43歳はまだ40代前半といった感じがしますが、44歳はもう40代半ばという印象があります。
定年が55歳であったバブル崩壊以前であれば、職業生活もあと10年ちょっと。第2の人生に備えるべく、身辺整理を考え始める頃かもしれません。しかし、今や定年は70歳になることが既定路線。10~15年のスパンで定年が5歳ずつ延びてきた歴史から考えれば、私たちがその歳になる頃には、定年は75歳、あるいは80歳になっていてもおかしくはありません。
雇用されて働く前提であれば、70歳まで働くイメージはなかなかわかないかもしれません。現実的にモデルになる人がほとんど存在しません。私の父は自営業で、71歳になった現在もなお現役です。そういう点では、私は70歳以降も働くイメージが比較的描きやすい方だとは思います。起業して独立した私には、厳密には定年という概念はありませんが、公的年金の支給が75歳や80歳まで延びるのであれば、よほどうまいこと資産形成ができてない限り、やはりその頃まで働き続けることは避けられないと考えています。
仮に75歳まで働くとして、残り31年。まだ折り返し地点にも到達していないわけです。デジタル技術による革新と少子高齢化によって、世の中の有り様が著しく変化している現代においては、これまでの20年ばかしの経験をもとに、残り30年以上の職業人生を生き抜いていけると考えるのはさすがに厳しいです。まだまだ勉強を重ね、腕を磨き続けていかねばなりません。
40代は晩節ではなく、今の時代ではまだまだ若手です。この先30年以上をどのように働き、生き抜いていくべきか。今回は私自身が考えていることをお伝えいいたします。
まだ残り30年以上もある自分の職業人生において、どんな領域でどんなことを主戦場にしていくべきなのか。それを考えるためには、当然、世の中がどのように変わっていくのかを想定する必要があります。もちろん、未来がどのようになるのかは、正確には誰にもわかりません。しかし、仮説に基づく未来のシナリオを、様々な知識人、著名人が発信しています。
例えば、ベストセラーにもなった成毛眞さんの『2040年の未来予測』によれば、18年後の2040年になる頃には、6G回線によって自動車の自動運転に加えて空飛ぶ車が行き交うようになり、遠隔医療で手術が行われるようになります。
日本の高齢化率は35%を超え、ヨーロッパやアメリカ、そして中国までも少子高齢化によって勢いを失い、東南アジアとアフリカが世界経済を牽引することになります。地球の人口は約100億人に達し、世界中で食糧危機が深刻な状態になり、代替肉や培養肉、昆虫食などを食べることが普通の状態になるとされています。南海トラフ地震や富士山の噴火によって、社会の様々な機能が不全になることも考えられると言われています。
いずれも、現在からは容易に想像できないような状況です。しかし、18年前の2002年頃に、みながスマートフォンでサブスクの動画を見たり、リモートワークで自宅から仕事をしたり、副業や兼業が当たり前のように社会に浸透していたりする現在の姿を想像できた人はほとんどいないことでしょう。現在の基準からは考えもしないようなことが起きる。それが未来なのです。
2040年、私は62歳です。コンサルティングや企業研修の仕事は好きですし、できる限り続けていたいと考えています。しかし、人工知能の進化によって知識の専門性が持つ価値は相対的に低下し、ビジネスにおける問題解決のノウハウは、誰もが自分の課題に沿った形で、今よりもはるかに容易に入手できる状態になっていることは想像に難くありません。
コンサルティングに求められるのは、知識や方法を教えるといったことではなく、「すでにやり方は知っていて後はやるだけ」という状態のクライエントに対して、動機づけをして背中を押したり、感情に寄り添って前を向くよう仕向けたりする、情緒的な側面により寄っていくのではないかと考えています。
能力開発の領域においても、集合形式やライブ配信形式でのセミナーや研修はきっと激減することでしょう。オンデマンド形式での配信はもちろん、web3のしくみで所属組織や職位、世代を超えた人々が仮想空間に集ってワークショップを行うなど、時間や空間を問わない方法へとシフトすることが予想されます。
また、VRやARを用いた職業シミュレーションなどが行われるようになり、より一層アクティブラーニングでの学習が重要視されることになるでしょう。会議室や自宅で講義を聞いたり演習をしたりするのとは比べものにならないほどの効果性の高い学習やトレーニングが、現在とはまるで違う形式で提供されることが考えられます。
提供価値や提供方法が変化するのであれば、そこで第一線にい続けるためには、そこで求められるスキルを身につける必要があります。当然ながら、そのためには「現在やっている仕事がうまくいっている」というだけでは不十分です。必ずしもいま必要というわけではないが、将来の役に立ちそうなことをできる範囲ではじめておくことが大切です。
web3でのワークショップやVR/ARを使ったシミュレーションなど、想像はできても今すぐに再現することは困難なものもあります。これらに対しては自発的に準備を進めるのは難しく、状況が整ってきた時にすぐ参戦できるよう、世の中の動向に目を配っておくことがせいぜいかもしれません。しかし、技術的なハードルがないものについては、いまの環境下でできる範囲で準備を進めておくことはできます。
例えば、今年ある企業の若手社員研修として、全3回の集合研修の合間に受講者との個人面談を2回設けるプログラムを提供しました。集合研修という形態では、どうしても習得した知識をどのように実務に活用するかが本人の手に委ねられることになってしまい、学んだことが必ずしも仕事に活かせるとは限りません。研修後に個人面談を行うことで、その人の置かれた状況や抱えている課題に即して助言や動機づけを行うことができるため、研修で学んだことを実務に活かしてもらいやすくなります。
また、セルフマネジメント道場でやっているオンラインでの週間個別フィードバックも、研修が単なる知識付与や気づきの機会で終わることなく、意識や行動の変容につなげてもらうようにするためのアプローチです。
正直なところ、こうした企画はやるほうもかなり手がかかります。普通にセミナーや研修をやっている方がよっぽど楽です。しかし、意図的にこうした仕事を増やしているのは、将来的に職業能力の開発はマス・アプローチ(一対他)からパーソナル・アプローチ(一対一)へとシフトしていくだろうことを予測しているからです。集団に対しての講師ではなく、個別具体的な問題解決に伴走できるコンサルタントとして、経験と実績を積んでおきたいからこそ仕掛けていることだと言えます。
また、YouTubeでの動画配信に力を入れているのも、将来に向けて自分のスキルアップを図っていくためのアプローチです。誰か一人でも話を聞いてくれる聴衆がいる中で話をするのと、誰もいない環境で無人カメラの前で話をするのとではまるで違います。無人の状況で話をするのは、聴衆がいる前で話をするよりもはるかに高度な技術や気持ちのコントロールが求められます。正直なところ、一人で寂しく動画を撮影しているよりも、誰かが聞いてくれている状況で話をする方がずっと楽しいですし、気持ちも乗ってきます。
しかし、将来的に集合形式やライブ配信形式でのセミナーや研修が減り、オンデマンド形式での情報発信が増えていくと予想しているからこそ、いまのうちから無人カメラのまでも聴衆がいる時と同じくらいの熱量や滑らかさで話ができるスキルを磨いておくことが必要だと考えているわけです。もちろん、スキルアップだけを目的として動画投稿を続けるのは気持ちの面で難しいため、マーケティング目的を兼ねて現業に活かせるような運営を試みていますが、もともと動画配信を始めたのは、来るべき将来に備えてスキルを磨きはじめようとしたのがきっかけです。
デジタル技術の進展に伴い、過去の経験の価値がますます低くなっていきます。社会の前提が変化していくことに加えて、経験が持つ情報的な価値はインターネットで得られる情報によって代替されていくからです。
定年が55歳だった時代には、20代や30代に積んだ経験を「貯金」として、40代や50代を生き抜いていくことは可能だったかもしれません。しかし、70歳以上まで働くことを前提とすれば、40代はまだまだ若手です。もちろん、20代や30代に比べれば社会人としての成熟度ははるかに高いですが、この先20年、30年と仕事をし続けていくことを考えれば、知識も技術も経験もまだまだ十分であるとは言えません。
40代でもうすでに「昔に十分苦労してきた」と言わんばかりの態度をとる方もいますが、とんでもないです。まだまだこれからです。これまでの経験を活かしつつも、これからの時代に求められる新しい考え方、価値観、知識、技術を取り入れて、自分を磨き続けることが求められます。
コンピュータやロボットが普及していけばいくほど、人は「人間としての生き様」を見られていく世の中になります。過去の成功体験や慣例、実績にとらわれず、常に「いま何をするか」に焦点をあて、いま必要なこと+αのことをしていくことが、これからもなお求められ続ける人であるための条件になるのではないかと私は考えます。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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