「ゆるい職場」にならないために〜「厳しいことを言う」と「高圧的に言う」は違う〜

昨年の夏から、ある企業さまにてリーダー育成の研修を担当しています。私の主力商材である「セルフマネジメント道場」をリーダー育成に転用した研修プログラムです。

半年間かけてオンラインで行うプログラムなのですが、そこで毎週1つずつテーマを挙げて、受講者の方々に向けてメッセージを送っています。先週分として書いた投稿が、自分でもお気に入りの出来になったので、今回はその内容を共有したいと思います。

組織の中で、管理監督職や中堅クラスとして活躍している方々にご覧いただきたい内容です。テーマは「ゆるい職場」です。

ゆるい職場とは

働く若者の能力や期待に対して、著しく仕事の負荷が少なく、やりがいや成長の機会が乏しい職場のことを近年では「ゆるい職場」と呼ぶそうです。「ホワイトすぎる職場」と呼ばれることもあります。

ホワイトで何が問題なんだと思うかもしれませんが、負荷が軽すぎるので自分の成長を感じないし、組織に貢献できている実感もわかない。仕事の成果が上がらなくても厳しいことを言われないので、頑張っても頑張らなくても同じだと感じるようになり、モチベーションも低下していく。次第に「ここにいて大丈夫なのか」と自分の将来のキャリアに不安を覚え、退職してしまうという話なのです。

なぜ、仕事の負荷が軽すぎるのか。厳しいことを言われないのか。その背景には、上司となる管理職層に「若い世代は仕事がハードだと退職してしまう」「厳しく指導されると退職してしまう」という思い込みがあることが一因として挙げられます。

加えて、パワーハラスメントへの過度な警戒、コンプライアンスへの過剰な反応もあり、仕事で成果を上げるよりも労働時間や労働環境を快適にすることに注意を傾けすぎてしまうのです。

もちろん、法令で定められた労働時間を守り、快適な職場環境を構築・維持することは必要ですが、仕事の成果よりも法令遵守が目的と化してしまい、それが新人や若手社員にとって「物足りない」という要因になってしまいます。

では、昔の価値観のように、大量の業務を与えれば良いのか、厳しく指導すれば良いのかと思われるかもしれませんが、それではただ古い考え方に戻るだけです。それはそれで、やはり問題があったからこそ、現代の考え方や価値観に行き着いているわけです。コンプライアンスやコミュニケーションに関する考え方自体は、現代のものに準じて構いません。要は、度合いとやり方の問題です。

割り当てる仕事の質を上げる

まず、仕事の内容に関しては、仕事の量ではなく、質のレベルを上げることを考える必要があります。一説によれば、仕事の量と成長の実感はあまり関係がないとされます。成長の実感を左右するのは、量ではなく仕事の質です。必ずしも長時間労働をしなくても、レベルの高い仕事に取り組んでいる限り、その過程と結果から自身の成長を実感させることは可能です。

レベルの高い仕事とは、本人の保有能力や自己評価よりも「ちょっと水準の高い仕事」のことです。個々の水準に合わせて、それぞれに少しずつ負荷をかけ続けるように仕事を割り当てていく。そして、委ねた仕事に主体的、意欲的に取り組んでいけるように、動機づけやコーチングを行い、行動を支援するのです。

また、個々の仕事の割り当てと同時に意識していきたいのが、チーム全体の水準と規律です。新人や若手社員だけに気を配ったとしても、中堅以上の社員の成果水準が低かったり、規律がなかったりすると、その空気が新人や若手にも伝播します。チーム全員が高いプロフェッショナル意識を持ち、自ら課題を設定して、自らの意思で行動する自律型人材であれば、新人や若手も自ずと触発されて主体的、意欲的に仕事に取り組んでいくようになります。

子が親を真似て育つように、新人は先輩や上司を真似て育つのです。高い基準のチームに所属している限り、その職場をゆるく感じることなどありえません。成長を実感し、将来に向けたキャリア形成ができる場として、自らの意思で身を置き続けたいと思うことでしょう。

事実に基づきフィードバックし、論理的に指導する

それから、接し方については、「厳しいことを言う ≠ 高圧的に言う」という認識を持つことです。管理監督職を担う身として、当然、パワーハラスメントに該当しないように最新の注意を配る必要があります。本人をメンタル的に追い込むリスクを避けることはもちろんですが、自分自身の身を守るためにも、高圧的、威圧的、乱暴なものの言い方は避けなければなりません。

しかし、だからといって、何も指摘したり、指導したりしてはいけないということはありません。むしろ、積極的にフィードバックを与えて、できていないことの自覚、誤った思考や行動の是正を促していく必要があります。その方が、本人の成長実感を高めることができますし、何より仕事の成果を上げることができます。人材育成はあくまでも手段であり、目的はチームの業績を上げることです。

パワハラを恐れて何も言えなくなってしまうのは、指摘や指導は「激しい言い方」「荒っぽい言い方」によって行われるという先入観、イメージがあるからです。おそらく、私自身も含めて、自分が若い頃にそのような経験をしてきたことで、培われてきた固定観念だと思います。

しかし、激しく荒っぽい、高圧的な言い方をしなくても指摘や指導はできます。そもそも、パワハラは「職務上の立場を乱用して」相手に不快感を与えることです。仕事の成果が出ない、思考や行動のプロセスが誤っている、勤務態度や行動習慣が悪いなどの指導をする必要があるのであれば、それは事実に基づいてフィードバックし、論理的に説明すれば良い話なのです。

(以前、知り合いにこの話をしたら、むしろその方が怖いと言われました。確かに理詰めでこられる方が怖い気がするので、これはこれでパワハラにならないように留意が必要でしょうが)

もちろん、血の通った人間として、時には感情を見せても良いと思います。単に事実と論理だけではロボットに指導されているようになってしまいます。ただし、感情的な表現が相手に受け入れられるのは、ベースとなる人間関係ができていることが前提条件となります。

いざという時に厳しく言える関係を築いておく。そのためにも、挨拶や雑談、時に食事など、日常的なコミュニケーションをとり、関係が錆びつかないように油をさしてメンテナンスしておくことが必要となるでしょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

神戸・大阪で人材育成・社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

関連記事

  1. 自分年表作成に役立つもの3 文集、メール、ヒアリング

  2. ビジョンを視覚化する

  3. あなたの経営者はあなた自身です

  4. あなたの仕事は誰でもできる

  5. 成否を隔てるたった一つの違いは○○○である

  6. 人間は言葉によってできている