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2021.8.16
以前の投稿でもご報告いたしましたが、8月2日に「株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング」を設立いたしました。事業を通じて実現したい課題解決、経営理念、事業展開の方針などを説明した動画を撮影しました。
撮影を終えて改めて、単にフリーランスの受託事業者としてとどまるのではなく、一人の起業家としてこれから奮闘していきたいという想いが湧いてきました。本格的にスライドを用いたプレゼンを撮りました。お時間の許す時に、ぜひご覧いただけると嬉しいです。今回は動画の補足説明として、動画でお伝えしきれなかった内容をご説明いたします。
動画で申し上げた通り、これから私が挑みたいのは「失われた30年を取り戻す」という課題です。
バブル崩壊以降、経済成長が低迷から抜け出せない状態が30年ほど続いていることを「失われた30年」と表現します。この間、世界最強の超大国であるアメリカは、なお大きな成長を続けています。1968年以降、世界第2位の経済規模を誇っていた日本は、2000年以降急激に成長を遂げる中国に追随され、2010年についに逆転を許すことになります。以降、日本は世界で第3位という位置付けになりますが、中国はなお一層の成長を続ける一方、日本は1990年頃の水準で停滞したままです。アメリカや中国との差は開く一方という状態が続いています。第3位とはいえ、この2国との差は歴然としており、4位以下の他国とほぼ同等程度の水準になっています。
十分に豊かで安心な暮らしはできてはおりますが、それでももはや日本は特別な国ではなく、凡庸な一国になってしまったと言えます。いまだ日本を先進国、経済大国として認識されている方々もいらっしゃるかもしれませんが、その認識は改めなければならないでしょう。もちろん、経済成長がすべてはありません。必ずしも幸福度と比例するものでもありません。しかし、動画でも申し上げた通り、インターネットやスマートフォンなどのITテクノロジーによって、情報処理スピードが劇的に進化したにもかかわらず、生産高がまるで伸びないというのはもはや異常と言っても過言ではありません。
明らかに「稼ぐ力」が低下しているのです。
日本の高度経済成長は、米露冷戦、朝鮮戦争など、アメリカの軍事的な需要に応えるべく、製造業を中心として成し遂げられてきました。鉄鋼、自動車、家電などの工業生産が急拡大し、その品質の高さも評価されて「Japan as No.1」と称されるレベルに達しました。紛れもなく、これは私たちの先人が日夜奮闘された成果であり、そのおかげで今の水準の暮らしができていることには感謝が尽きません。とはいえ、当時の成功体験が現代ではまるで通用しなくなったこともまた事実です。当時と現代では明らかにやっていることが違います。ゲームが変わったのです。ここに気づかなかったこと、乗り遅れたことが、失われた30年の原因であると言えるでしょう。
高度経済成長の頃は、大量生産・大量消費によって経済成長を成し遂げてきました。経済の豊かさは「モノの量」によって定められていたと言えるでしょう。言わば「物質的な価値」が求められていた時代だと言えます。どれだけ多くの物を、より早く、より安く、高品質で作ることができるかが成功の要因になります。したがって、仕事には定められた手順を正確に処理する「オペレーション能力」が求められてきました。この点においては、日本はいまなお、世界でも最高レベルの水準にあると言えるでしょう。
しかし、それから数十年が経ち、現代は物が満ち溢れて充足している状態となりました。単なる物の充足では人の欲求は満たせなくなり、「情報的な価値」を求めるようになります。物と情報の決定的な違いは、実体がないことです。希少性が高ければ価値が上がる点では物と情報は同じですが、情報は実体がない分だけ価値を際限なく高めることができます。
「情報的な価値」は文字通りの「情報」だけが商材になるわけではなく、「物質的な価値」に付加されるものもあります。いわゆる「付加価値」と呼ぶものです。例えば、1万円のネクタイがあるとします。個体差はありますが、概して言えば原材料は数百円程度、工賃を加えても原価は2,000〜3,000円程度ではないでしょうか。残りはデザインやブランドといった情報的な価値です。高級ブランドなどに代表されるように、この情報的な価値はどこまでも高めることができます。
一方で、情報的な価値は拡散性が高く、模倣されやすいという特徴もあります。つまり「パクられやすい」のです。そのため、情報的な価値を高く保つためには、希少性の高い価値を生み出して、その価値を守ることが必要です。つまり、他にないような独創的なアイデアを生み出し、それを知的財産として保護して、価値の低下を防御することが求められます。知的財産としての保護にはオペレーション能力が機能しますが、独創的なアイデアを生み出すためにはオペレーションとは異なる能力が必要です。定められた手順を正確に処理する様式では、同じものしか作れません。情報的な価値が求められている時代では「他と異なる」ということが成功要因となり、そのためにはオペレーションで求められるのとは真逆の能力が必要になります。
安易に「イノベーション」という言葉を用いたくはないのですが、過去の延長線上ではない「創造的な破壊(=イノベーション)」ができれば理想的ですし、そこまでとは言わなくても、独創性が求められます。そして、独創性を発揮して仕事をする上では、日本型雇用システム(終身雇用、年功序列)、過去の成功体験(の汎用化、再現)、オペレーターの同質性といった、物質的な価値を生み出す上で有効に機能していた要因が、ことごとく阻害要因になります。
なぜ、失われた30年から脱することができないのか。それは、現代もなお「昭和時代の延長」の中で仕事をしているからに他なりません。歴史から学ぶことは多くあります。過去の偉業に敬意も評します。これまでのことを全面否定する必要もありません。それでも、私たちは過去から続く様々なことを終わりにして、新しいものを生み出していかなければなりません。今までにないこと、今までと違うことが尊ばれるような仕事の進め方に、変革を遂げて行く必要があります。
動画でも申し上げた通り、固定観念や慣例、同調圧力といったものは風土、文化的な問題です。単純に制度を変えれば解決するものではありません。風土や文化に根付かない制度は、形骸化して機能不全に終わることが目に見えています。しかし、風土や文化は人が作り出すものです。人が変われば、風土や文化が変わります。個人の変革が社会の変革につながるのです。だから「デキる人を増やす」なのです。
仕事「風」のことをして仕事をした気になっている「サラリーマン」が、価値を生み出し結果にこだわる「プロ人材」になることが、昭和時代を終わらせるための有効な手段になると私は考えます。現在の立ち位置や環境の変化を受け入れ、物事の本質を見据えて、情報的な価値を生み出すために自分の才能を活かして、結果を求めようとする仕事の姿勢。これが「自分らしく働いて、結果も出すデキる人」であり、一人でも「デキる人」が増えることが、暗いシナリオに溢れた未来に灯りを照らすことになると私は考えています。
いまや情報的な価値にはさらに高い水準が求められています。SDGsやESGといった言葉に代表されるように、現代では持続可能性を考慮して事業を行うことが望まれています。単に独創的で希少性が高いというだけにとどまらず、社会的な意義や貢献といった「意味的な価値」が事業の成否を決めるという時代に突入しています。
これは、事業にはオペレーションや独創性だけでなく、哲学が求められるようになったことを意味します。現代のビジネスは単なるお金と商材の価値交換ではなく、哲学や理念といった意味的な価値の実現プロセスという側面を持つのです。そして、そのためには個性や人間性といった、オペレーション能力とはまったく特性が必要になります。AI(人工知能)に代表される情報テクノロジーが、オペレーションの省力化、自動化をますます推進していきます。もちろん、仕事をする上では一定のオペレーション能力も必要です。しかし、それ以上に想像性、独創性、個性、人間性といった要素が仕事の成否を左右するようになっていきます。オペレーション能力だけで勝負をしていきた人たちは、そう遠くない将来、存在意義と居場所を失うことになります。
かくいう私も、20年の社会人経験の大部分を、オペレーション能力の勝負で過ごしてきたように思います。コンサルタントになる以前は、データ集計や分析、制度構築や運用、プロジェクトの管理などの仕事が多かったです。問われるのはオペレーション能力です。コンサルタントになって以降も、企画の独創性や自分のキャラクターなども意識はしてきましたが、成果を大きく左右したものはやはりオペレーション能力だったと思います。ヒアリング、提案、受注、サービス提供、そしてそれらのプロジェクト管理。成果を上げるためには、オペレーション能力に磨きをかけることが求められました。それは今後も求められることは変わらないかもしれませんが、それだけでは不十分です。むしろ、最低限備えておくべき前提という位置付けになるかもしれません。
私もあと30年は働くつもりです。コンサルタント業は好きですし、天職だと思っています。しかし、この先30年で業界の構造やサービスの提供形態はガラリと変わると思っています。集合研修やセミナーはなくなるかもしれませんし、オンライン教育も今とは異なる形態になっていることでしょう。本質的な意味でのコンサルティング機能は求められるでしょうが、そこで発揮するべき能力はおそらく今とは別物になるでしょう。定量的な分析も、事例の提供も、情報テクノロジーの進化によってクライアント自身が容易にできるようになります。プロのコンサルとして求められるのは、斬新な発想、クライアント課題へのコミットメント、そして人間性になると見立てています。今までのやり方に固執し、今までの延長線上で将来を思い描いたのでは、確実に通用しなくなる時がきます。
何が正解かはわかりません。もし正解がわかるのなら、みな同じ道を歩みます。未来は現実には存在しない、空想の存在です。したがって、未来の正解というものも存在しません。しかし、確実に言えるのは、将来の正解になるものは「いまとは違う何か」であるということです。将来ビジョンを描きながらも、現実的にいまできることに焦点をあて、考え続けること、挑戦し、試し続けることが唯一の正解ではないかと思います。新しいこと、難しいことに挑戦し、未知の経験を蓄積していくことが、自分自身を変化、成長させる原動力となります。
私の場合、独立して間もなくYouTubeをはじめました。これが事業収益に直接結びつくかは、未だに未知数です。ただ、少なくとも無人カメラの前で話す技術は向上するし、動画編集のスキルも向上します。タイトルやサムネイルなどを考えることは、どうしたら人の注目を集めることができるかを検証するテストにもなります。何より、今まで自分にとって新しいことをやると言うこと自体に、すでに価値があるのです。
自分が何が好きか。何が得意か。自分にとって何が大事か。これに気づくことが、自分の才能を開花させることにつながります。しかし、気づくためには、様々なことに挑戦し、経験を積む必要があります。そこで二の足を踏んでしまっては、自分の才能を埋もれさせたまま生涯を閉じることになります。
そして、情報的な価値、意味的な価値が求められる時代においては、自分の才能を活かすことなく成果を上げることは困難です。才能を発揮して、成果を上げる。つまり、自分らしく働いて、結果を出す。働くすべての人に、それが求められる時代がすでにやってきています。
失われた30年を取り戻し、未来のシナリオを明るくするためには、デキる人が必要です。デキる人を増やすべく、これから一層精力的に事業を展開していこうと思います。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。