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人事制度

2026.10.14

人事制度改定の支援事例|設備工事会社で等級と評価を連動

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兵庫県内で給排水衛生設備の点検・清掃・改修を手がける、社員約50名の会社の事例です。創業から50年近く、地域のインフラを支えてきました。

同社から人事制度の改定をご依頼いただいたとき、評価は5段階で運用されていました。ただ、多くの社員が3に集まっていました。この記事では、課題、打ち手、そして想定より時間がかかった工程をお伝えします。

制度はあったが、回っていなかった

同社には、以前から人事制度がありました。何もない状態からの出発ではありません。改善を重ねながら運用されてきたものです。

それでも社長が改定を決めたのは、限界を感じておられたからでした。伺った課題は、3つありました。

1つ目は、ベテラン技術者のキャリアが行き詰まっていたことです。 当時の等級制度では、昇格の先に管理職しかありませんでした。管理職を志望しない技術者、あるいは適性の面で管理職が向かない技術者は、そこで等級が止まります。長年にわたって現場で高い専門性を発揮してきた方々の意欲が下がることが見込まれていました。

2つ目は、等級ごとの役割が不明確だったことです。 等級制度は存在していましたが、各等級に何が求められているのかが曖昧でした。社長の言葉を借りれば、「なんとなく数字がついている」状態です。その結果、等級が上がっても行動が変わらないという現象が起きていました。

3つ目は、評価が3に集まっていたことです。 5段階で設計されていましたが、判断の決め手がなく、実態として多くの社員が3になっていました。社員からも「評価の基準がわかりづらい」という声が出ていたそうです。

この3つは、別々の問題ではありません。等級の役割が決まっていないから評価項目が定まらず、評価項目が定まらないから点数の差がつかない。1本の線でつながった問題でした。

課題・打ち手・変化の3つを対応させて並べた図
図:3つの課題と、それぞれの打ち手

打ち手1|キャリアの道を2本にした

まず、管理職コースと専門職コースを分けました。複線型と呼ばれる設計です。

管理職にならなくても等級を上げていける道筋を作り、専門職コースでも一定の段階までは昇格できるようにしました。これによって、ベテラン技術者の方々に「まだ先がある」という展望を持っていただけるようになりました。

マネジメントは、現場業務の延長ではありません。別の役割であり、別の技術です。優秀な技術者を管理職にして双方が苦しむ構図は、中小企業でよく起きます。

打ち手2|等級ごとの期待役割を言葉にした

次に、「どの職種の」「どの等級に」「何を求めるのか」を一つずつ言語化しました。

ここが最も時間のかかる作業でした。後述します。

ただ、この作業を経たことで、昇進・昇格の際に「期待されることが、このように変わります」と言葉で伝えられるようになりました。これは大きな変化です。それまでは、等級が上がったことを本人に伝えるとき、何が変わるのかを説明できていませんでした。

等級の作り方については、中小企業の等級制度の作り方|人事コンサル10年超の設計手順をご覧ください。

打ち手3|評価の5段階を文章にした

3つ目に、各評価項目について、5段階の尺度を具体的に記述しました。

「こういうことができていたら5」「この段階で止まっていたら3」「こういう状況であれば1」。評価の目安を文章にしていく作業です。

これにより、評価者が判断の根拠を持てるようになり、3への集中は避けられるようになりました。社員にとっても、何をすれば評価が上がるのかが見えるようになっています。

あわせて、自己評価と上司評価のすり合わせ、評価面談の運用も整備しました。上司と部下が面談で目標を設定する土台ができたことで、その後の対話が機能しやすくなりました。

評価が3に集まる構造については人事評価の中心化傾向を防ぐ|全員3から抜け出す基準づくりを、基準の書き方については評価基準の作り方|5段階を言語化して評価のブレをなくすをご覧ください。

求める人材像から等級、評価項目、賃金までが一本の線でつながっている状態を示した図
図:人材像から賃金までの連動

想定より時間がかかったこと

正直に申し上げると、等級・職種ごとの期待役割を言語化する工程で、私は作業量を見誤りました。

職種の数と等級の段数を掛け合わせると、記述すべきマス目はかなりの数になります。しかも、隣り合う等級の違いを書き分けなければ意味がありません。「確実に遂行する」と「的確に遂行する」のような、読んでも差が分からない記述では、作っても使われないからです。

当初の見通しより工程が延びました。社長と担当の方に、ご負担をおかけしました。

この経験から、今は最初に職種と等級のマス目を数え、書き分けが必要な箇所を洗い出したうえで日程を引くようにしています。先に数えておけば、分けるべき職種と、まとめてよい職種の判断も早くできます。

変化|自分の給料の話をする社員が出てきた

制度の運用が始まって、社長が特に興味深いとおっしゃっていたのは、自分のキャリアに関心を持つ社員が出てきたことでした。

この会社で長く働いていく中で、自分はこうなりたい、給料も上げていきたい。そうした意欲が、言葉として出てくるようになったそうです。

改善すべき点が明確になり、それを改善すれば評価が上がり、給与が増える。やるべきことをやれば、ちゃんと評価してもらえる。社員がそう実感できるようになったことが、変化の中身でした。

自分たちがどう評価され、どう処遇されるのかに社員が目を向け始めたこと自体が、一歩だと思います。それまでは、制度は会社が決めるもので、自分には関係のないものだったわけですから。

この事例から持ち帰れること

同じことを自社でやる必要はありません。ただ、この事例には、規模や業種を問わず当てはまる点が3つあります。

  • 3つの課題は別々ではなく、1本の線でつながっていた
  • 等級の役割を書く工程が、最も時間がかかる
  • 制度が変わったかどうかは、社員が自分の処遇を話題にするかで分かる

1つ目が最も重要です。評価だけを直しても、等級の役割が決まっていなければ評価項目が定まりません。順番があります。

3つ目は、制度改定の成果を測る目安として使えます。導入から半年経って、社員から昇格や評価について質問が出てこないなら、制度はまだ自分事になっていません。

なお、等級から評価まで一体で設計する場合、社内だけで進めると今いる人に合わせた定義に寄りがちです。弊社がどう関わっているかについては人事制度コンサルティングを、進め方の全体像についてはコンサルティングの進め方をご覧ください。

まとめ

5段階評価の多くが3に集まっていた会社で、キャリアの道を2本にし、等級ごとの期待役割を言語化し、評価の5段階を文章にしました。3つは別々の施策ではなく、1本の線をつなぐ作業でした。そして最も時間がかかったのは、等級の役割を書く工程です。

自社の人事制度がどうなっているかは、内側からは見えにくいものです。人材像・人事制度・マネジメント・人材育成の4分野について、どこが弱いかを10分で数値にする無料診断をご用意しています。今回の内容は、診断の「人事制度」の項目に対応しています。

ご関心のある方は、ぜひお試しください。


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本記事の内容は、拙著『指示待ち人間からの解放』の第5章をもとに再構成したものです。

著者

小松 茂樹(こまつ しげき)

株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング 代表取締役社長。中小企業診断士、国家資格キャリアコンサルタント。事業会社で人事制度の再設計や業務改善に携わったのち、2021年に独立。中小企業の人材育成と組織づくりを支援しています。
著作『指示待ち人間からの解放〜自ら考えて行動する社員を増やす4つの柱と7つのステップ〜』『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜』

原因は、社員ではなく環境にあります。自社の環境がどうなっているかは、10分で数値になります。

TEL.
078-600-2761