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自律型人材

2025.1.15

指示待ち人間を自律型人材に変える3つの問い|目的意識を引き出す育成法

1.なぜ今「指示待ち人間」では通用しないのか

1-1 自律型人材が求められる理由

現代のビジネス環境は急速に変化し、予測困難な状況が続いています。このような時代においては、単に上からの指示や命令に従うだけの働き方では通用しません。従業員一人ひとりが自ら考え、行動する自律型人材となることが、組織の成功において不可欠なのです。

特に以下の要因により、自律型人材の重要性が高まっています:

  • 市場の変化スピードが加速し、上司の判断を待っていては機会を逃す
  • リモートワークの普及により、細かな指示や監視が困難になった
  • マネージャーが多忙で、部下一人ひとりに詳細な指示を出す時間がない
  • イノベーションには現場からの自発的なアイデアや改善が不可欠

1-2 指示待ち体質が招く組織のリスク

指示待ち人間が多い組織では、以下のようなリスクが顕在化します:

組織への悪影響

  • 意思決定のボトルネックが発生し、対応スピードが遅くなる
  • マネージャーの業務負荷が過大になり、戦略的業務に集中できない
  • メンバーの成長が阻害され、組織全体の人材力が低下
  • 無駄な作業や非効率な業務が放置される
  • 変化への適応力が低く、競合他社に後れを取る

2.指示待ち人間を変える3つの問い

自律型人材の育成には、日常的な問いかけが重要になります。以下の3つの質問を投げかけることで、日々の仕事の中で各メンバーが自分の頭で考え、主体的に行動する習慣を身につけていくことができます。

2-1 How:「どうやるか?」を自ら考える思考力

最初の問いは「どのようにやるのか?」です。自分がなすべきことを実行するための方法論を考えさせます。

NGな聞き方良い聞き方
「この資料、明日までに作って」
(具体的な作成方法を指示なしで丸投げ)
「この資料の目的は○○です。
どんなアプローチで作成しますか?」
(目的を示した上で方法を考えさせる)
「なんでうまくいかないの?」
(問題の責任追及になっている)
「他にどんなアプローチが考えられますか?」
(代替案を考えさせる建設的な問い)

例えば、重要な商談が控えている場合、どのように話を進めるべきか、どんな資料を準備すべきかなど、必要な準備や当日のシナリオを自ら考える必要があります。マネージャーが細部にわたって指示を出すのではなく、自分で考える余地を与えることが、自律型人材を育てる上での重要な仕組みです。

2-2 What:「何をするか?」を選び取る判断力

次に重要なのが、「何をするのか?」という問いです。自身が取り組むべき課題や活動を考えさせます。

例えば、1億円の売上目標がある場合:

  • 10万円の商品を1,000社に売るのか
  • 100万円の商品を100社に売るのか
  • 1,000万円の商品を10社に売るのか

【部下の変化例:営業担当Aさんの場合】

Before: 「今月、何件回ればいいですか?」と訪問数の指示を求めていた

After: 「目標達成には大口案件2件と小口案件30件の組み合わせが効率的だと思います」と戦略的に考えるようになった

限られたリソースの中で何に注力すべかを判断する力は、より高度な自律型人材の特徴です。この問いを繰り返すことで、優先順位をつけ、行動計画を立てる力が養われ、チーム全体のパフォーマンス向上に直結します。

2-3 Why:「なぜやるのか?」を問い直す目的意識

最後にして最も重要な問いが、「Why」、すなわち「何のためにこの仕事をするのか」です。自分がなすべきことの意味や目的を考えさせます。

NGな聞き方良い聞き方
「なんでやってないの?」
(責任追及的で防御的になる)
「これは何のためにやってると思う?」
(目的を考えさせる建設的な問い)
「指示通りにやって」
(思考停止を促す指示)
「この作業の目的を踏まえて、
どう進めますか?」
(目的意識を持った実行を促す)

この問いに対する答えがないままに仕事をすると、無駄な作業や非効率な作業が増えていきます。仕事のムリ・ムラ・ムダを防ぐためには、「できるからやる」のではなく、「必要だからやる」という視点を持つことが重要です。これにより、仕事量を適正化し、限られた時間で最大の成果を上げることができます。

3.目的意識を育てるための3ステップ

「何のために」を考える目的意識は、次の3段階で育成することができます。

3-1 作業の目的を自覚させる問いかけ

1一つひとつの作業について、その目的や後工程を考えた上で実行することが重要です。

【作業レベルの問いかけテンプレート】

  • 「この資料は誰が、どんな目的で使うと思いますか?」
  • 「この作業の後工程で困らないためには、何に気をつけますか?」
  • 「同じ目的を達成するには、他にどんな方法がありますか?」
  • 「この作業にかける時間と得られる効果のバランスはどうですか?」

例えば、資料作成一つとっても、その目的を考えることで、過剰な品質や無駄な労力を防げます。「見栄えの良い資料を作る」ことが目的ではなく、「相手の理解を促進し、意思決定を支援する」ことが目的だと理解できれば、本当に必要な要素に集中できます。

3-2 業務全体の意義を理解させる対話

2個々の作業だけではなく、業務全体の流れを見ることで、何を・どこまでやるべきかが把握できます。

【対話による気づきの例:経理担当Bさん】

Before: 「請求書処理は月末までに終わらせればいい」と考えていた
↓ 上司との対話を通じて ↓
After: 「早期処理により営業が売掛金回収に集中でき、会社のキャッシュフローが改善される」と業務全体への影響を理解

【業務レベルの対話テンプレート】

  • 「あなたの業務が他部署にどんな影響を与えていると思いますか?」
  • 「この業務がなかったら、どんな問題が起こりますか?」
  • 「業務の流れの中で、最も重要なポイントはどこだと思いますか?」
  • 「効率化できそうな部分はありますか?その理由は?」

3-3 事業の目的に接続するビジョン共有

会社全体の事業が誰のために、何のためにあるのかを深く考える段階です。

自律型人材の育成において、この段階が最も重要です。従業員一人ひとりが事業の目的を理解し、自分の役割がどう貢献するかを認識できる組織は、社会に大きな価値を提供できます。

【ビジョン共有のワークシート】

ステップ1: 我が社のお客様は誰ですか?そのお客様はどんな課題を抱えていますか?

ステップ2: 我が社の商品・サービスは、そのお客様の課題をどう解決していますか?

ステップ3: あなたの業務は、その課題解決にどう貢献していますか?

ステップ4: より良い貢献をするために、どんな改善ができそうですか?

4.自律型人材を育成するマネジメント習慣

4-1 日常会話に問いを織り込むコツ

自律型人材の育成は、特別な研修や面談でのみ行うものではありません。日常の何気ない会話の中に問いを織り込むことで、継続的に思考力を鍛えることができます。

【日常会話での問いかけ例】

朝の挨拶時

  • 「今日は何に重点を置いて取り組みますか?」
  • 「昨日の作業から学んだことはありますか?」

途中経過の確認時

  • 「現在の進捗はいかがですか?当初の想定と違う点はありますか?」
  • 「うまくいっている要因は何だと思いますか?」

業務終了時

  • 「今日の成果で特に良かった点はどこですか?」
  • 「明日はどんなことを意識しますか?」

重要なのは、答えを急かさず、部下が自分で考える時間を与えることです。すぐに答えが出なくても、「考える習慣」を身につけることが目標です。

4-2 フィードバックと振り返りの仕組み化

自律型人材の育成には、定期的な振り返りとフィードバックの仕組み化が不可欠です。

【週次振り返りのフレームワーク】

Keep(続けること)

  • 今週うまくいったことは何ですか?その要因は?

Problem(改善すべきこと)

  • 今週困ったことや改善したいことは何ですか?

Try(次に試すこと)

  • 来週は何を意識して取り組みますか?
  • 新しく挑戦してみたいことはありますか?

【振り返りによる成長例:マーケティング担当Cさん】

3ヶ月前: 「指示された通りにSNS投稿をしていました」
↓ 週次振り返りを継続 ↓
現在: 「投稿時間とエンゲージメント率の関係を分析し、最適な投稿戦略を自分で立案するようになりました」

また、成功体験を共有する場を設けることも効果的です。自律的に行動して成果を上げたメンバーの事例を共有することで、他のメンバーにも自律的行動を促すことができます。

まとめ

自律型人材を育成するためには、まずリーダーが上記の問いかけをメンバーに共有し、日常的に取り入れることが重要です。一人ひとりが自ら考え行動できるようになれば、組織全体が最小の労力で最大の成果を上げられるようになります。

これらの問いを実践に取り入れることで、チーム全体が自律的に成長し、変化の激しい時代にも対応できる強固な組織を築くことができるでしょう。

あなた自身が目的意識をもって仕事をするのはもちろん、あなたの部下や後輩にも、絶えず目的を考えさせるような問いかけを投げかけ、一人ひとりが自ら考えて行動する、自律的な組織づくりを進めていってください。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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