成否を隔てるたった一つの違いは○○○である

先週、ある企業様で営業職のロールプレイング試験の審査員をしていました。今年で3年目。昨年からはオンラインでの実施となりましたが問題なくできており、この2年でかなりのことがオンライン環境で実現できるようになってきたと感じます。受験者の方々にとっては、自分の処遇を左右する重要な試験です。審査員を務めるのは光栄ですし、しっかりと責任持って合否を判断してきました。

とはいえ、実のところ合否の判定を迷うケースは極めて少なく、大部分は迷いなく合格、不合格の判断をすることができました。合否の明暗を分ける差は顕著でした。商談ロールプレイングの出来が明らかに違うのです。中には、惚れ惚れするほど見事が商談になっているものもあれば、正直なところ見るに耐えないものもありました。この両者を隔てているのは、たった一つの違いでした。

明暗を分けるもの

結論から言えば、合否の明暗を分けるのは「研修で学んだことを実践しているか(しようとしているか)」です。審査基準は研修で伝えていること、トレーニングしていたことに基づいて作成しているので、そこができているか、いないかの差は顕著で明確です。研修では、顧客の経営課題解決に向けて、事前情報をもとに仮説を立ててヒアリングを行い、相手の潜在的なニーズを引き出すスキルを養ってきました。

若い世代の方々は上出来の方が多かったです。学んだことに素直にトライしようとしている態度が見て取れますし、経験から作られる自分なりの考え方、やり方がまだ確立していないので、学んだことを受け入れやすいからだと考えます。女性の方々は、年代を問わず優秀な方が多かったです。もともと女性の方がコミュニケーション能力が高いと言われていますので、話の聞き方や質問の仕方、展開の仕方が上手でした。その上で、仮説に基づいて高度な質問をしており、審査時間の中で実のある商談をしている方が多かったです。

問題はベテラン男性の方々でした。長いこと慣れした親しんできた、旧来からの自分のやり方を変えられない。事業環境も会社の方向性も変わってきているのに、従来の自分の思考・行動パターンを変えられないのです。審査に同席いただいた事務局の方々からも「昔のうちの会社のやり方から抜け出せていない」と評されていました。

結局のところ、不合格になった方々は総じて「変化ができない」「変化に対応するための努力ができない」方だったと考えられます。

時が止まっている

世の中は日々刻々と前進、変化しています。たとえ、これまで物事をうまくやってきたり、いま物事がうまくやれているとしても、それがいつまでもずっと続くとは限りません。自分は変化しなくても、世の中は変化しています。であれば、世の中の変化に合わせて自分自身を変化、成長させていかなければ、いつか自分のやり方が通用しなくなる時が訪れます。自分の過去の成功体験、業界や組織が慣例としてやってきたことが、今でも本当に通用しているのかどうかを懐疑的に見て、新しい考え方や手法を積極的に取り入れていくことが重要です。

以前、サントリーの新浪社長が「定年45歳」という説を唱えて批判の声も浴びておられましたが、この45歳という年齢が新しい物事を柔軟に受け入れられるか否かを隔てる、一つの境目なのかもしれません。

もちろん、世代で一括りできるものではなく、むしろ個人差が大きいです。年配の方で、新しい手法や技術に意欲的に挑戦している方々を見ると本当に尊敬します。一方、歳が若くても自分の考え方や手法論にしがみつき、そこから脱却しようとする姿勢が感じられない方もいます。とはいえ、一般的には職業経験が長ければ長いほど、自分の経験の中から培われた考え方や手法が固定化して、新しいものを受け入れにくくなると言えるでしょう。

自営業者や小規模組織であれば、時代に合わせて仕事のやり方を変えていかないと死活問題になります。自分の意思がどうであろうと、生き延びていくためには否応なしに変革を迫られる場面も多くなります。結果として、年齢がどうであろうとも、環境によって自分が変化させることができてしまう面があります。

ところが、ある程度大きな組織の中で、容易に解雇されない正社員でいると、自分が変化や成長をしなくても「仕事の居場所」が守れてしまうので、そのまま何年も、何十年もやり過ごすことができてしまいます。こういう方々は、言うなれば「時が止まっている」のです。

世の中は新しい時代に突入しているのに、自分の頭の中だけが古い時代の考え方や手法のままでいます。また、こうした方々が経営幹部にいる組織は、組織全体の時が止まってしまいます。これまでの利害関係の延長である程度は持ち堪えられますが、次第に売上や利益が減っていき、やがては組織が持ち堪えられなくなります。

個人においても、組織においても、手遅れになる前に自らを変革させていかねばならないのです。

教わったことを素直にやる

自らを変革するためには、まずは本やニュース、動画教材やセミナー受講などで、最新の情報や本質的な知識を収集、習得することが必要です。しかし、単に情報や知識を収集するだけでは不十分で、当然ながらそれを行動に移して、自らの体験に変えていくことが大切です。そして、体験を振り返る中でその意味や本質を見出し、有用な経験や知恵に変えていくのです。

したがって、まずは行動に踏み出せるかどうか自体が、自己変革できるかどうかを左右する重要なポイントですが、実践に移すとしても、自分なりの考えや会社によってはじめからやり方を変えてしまうようだと、効果は大きく低下します。何かを身につけようとする時に、初めから我流でアレンジしようとするとうまくいきません。最初は教わったことを素直に実践し、基本を身につけ、その本質を掴むことが求められます。

芸事の世界には、古くから「守破離」という考え方があるそうです。「守」は師に教わったことを忠実に守って実践すること。「破」は教わったことをベースにしながら、少しずつ自分なりのやり方にアレンジしていくこと。「離」は教わったことから脱却し、自分のやり方を確立することを指します。

腕を磨くには、この順番をしっかりと守る必要があります。教わったことを、教わった通りにできるようにならないうちに、自分なりにアレンジをしたり、自分流のやり方を編み出そうとしても成功は難しいです。まずは教わったことを素直に実践し、基本を身につける。師の教えを体現することが欠かせません。言われたことすらできない人が、言われてもいないことを成功させるのは容易ではないのです。

自分流を追求するのは、基本を身につけた後です。そして、基本を身につけるまでには、それなりの時間や労力を投入する必要もあります。自分を変化、成長させるために、どれだけの努力をしているか。その姿勢が仕事の能力や成果を大きく左右します。自分だけが時間が止まることのないよう、世の中の変化を捉えて、自分自身に新しいものを取り入れていく姿勢を行動で示していく。それができるかどうかが、成否を決めていくのだと思います。

今回、審査の仕事をしながら、果たして自分自身は十分にそれができているだろうかと、改めて自問する機会となりました。環境変化に適応して、常に第一線で働き続けるためにも、変化と成長への挑戦を続けていきましょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

   

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