【ビジネス問題解決の原則】問題は手に負えるサイズ感になるまで細分化せよ

ここのところ、主任職や係長職などへの昇格者を対象にした階層別研修の講師を担当させていただくことが多いです。リーダーシップやマネジメントをはじめ、業種や職種を問わず管理監督職に求められる役割や能力について、演習を交えて講義をしています。

上位職に求められる、数ある能力の一つとして「問題解決能力」が挙げられます。ビジネスは言わば問題解決の連続です。事業そのものにおいても、組織運営においても、理想と現実の差を埋めるために様々な工夫、改善、対処を行っていくことがマネジメントの実務と呼べるでしょう。

業績目標の達成、生産性の向上、コミュニケーションの活性化、職場の風土や人間関係の改善など、職場で発生する問題は多岐に渡りますが、その構造と対処方法は本質的にはすべて同じだと言えます。すべての問題を解決する方法、それは「手に負えるサイズ感になるまで、問題を細分化して考える」ということです。

問題解決とは

問題とは、あるべき姿と現状の間に乖離が発生していることを指します。米国のコンサルティングファームから生まれたとされる理論で、「現状(As Is)」が理想の状態である「あるべき姿(To Be)」と離れている時、そこに問題が発生していると考えます。

売上目標が達成していない、人員が不足している、従業員のスキルが低い、時間外労働が多い、不良品が多い、クレームが多い、などビジネスシーンで発生する様々な問題はすべて、現状があるべき姿に追いついていない状態を指していると言えます。したがって、問題を解決する方法は、本質的には1つしかありません。それは現状とあるべき姿を一致させることです。現状の水準とあるべき姿の水準が横並びになった時、そこに乖離がなくなります。これが「問題ない」という状態です。

両者の水準を一致させるための方法は2つです。現状をあるべき姿にまで引き上げるか、あるべき姿を現状にまで引き下げるかです。場合によっては、後者を選択しなければならないこともあるかもしれません。要するに諦める、妥協するということです。しかし、原則として資本主義下におけるビジネスは成長と発展を前提として継続していきますので、現状をいかにしてあるべき姿の水準に引き上げるかが「問題解決」となります。

問題解決の流れ

問題の解決方法には大きく2種類があります。

一つは「応急処置」です。発生した問題による被害や損失を食い止めるために、取り急ぎ即効性のある打ち手を講じることです。例えば、顧客からクレームがあったら、まずは現状確認と謝罪に伺い、事態の沈静化を試みます。あるいは、時間外労働が多くなって上限を超えてしまいそうになったら、業務量を調整して時間外労働を抑制しなければならなくなるでしょう。

しかし、応急処置を行なっても、それで根本的に問題が「解決」することにはなりません。問題を引き起こしている構造や原因が何も変わっていないので、同じ問題がその後も何度となく繰り返されることになります。一時的な対処として応急処置を行わなければならない場面はありますが、それだけでは問題の発生と対処をイタチごっことして繰り返す羽目になってしまいます。したがって、応急処置と並行して、問題を引き起こしている根本的な原因を取り除き、問題を本質的に解決する必要があります。

本質的な問題解決とは、問題を引き起こしている構造そのものを変えることにって、同じような問題が再び起こらないようにすることです。言わば「問題の未然防止」であり、これこそがビジネスパーソンに求められる真の「問題解決能力」だと言えます。

本質的な問題解決は、下記の6つのステップで行います。

1.現状とあるべき姿を定義し、問題を明確にする

問題解決の最初は、問題の設定からはじまります。現状とあるべき姿を正確に表現し、問題の性質や大きさを明確にします。例えば「時間外労働が多い」という問題を解決するとするなら、あるべき姿を「月20時間以内」として基準を定め、現状を測定して「月30時間」として明確にすれば、問題は「月10時間多い」ことであると定義することができます。そうすれば、問題解決は「あと10時間を削減する」こととして、具体的に表すことができます。

2.問題が発生している箇所を特定する

問題を定義したら、次に問題の発生箇所を特定します。多くの場合、表面化している問題は単一の原因によって引き起こされているのではなく、様々な事象が複雑に絡み合って作られています。そのため、問題を本質的に解決するためには、問題の構造を全体的に把握して、どこが問題の発生源になっているのかを特定することが必要です。

例えば、上記の時間外労働の場合であれば、労働時間が長くなっているのはどの仕事なのかを探します。顧客対応なのか、事務処理なのか、ミーティングなのか。それを測定して把握することによって、「どこに手を下すべきか」を定めることができます。

3.問題を起こしている原因を分析する

問題の発生箇所を特定したら、次にその状況を引き起こしている原因を分析します。上述の通り、多くの問題は複数の要因が複合的に組み合わさって引き起こされます。要素を分解し、細分化することで、問題を引き起こしている本質的な原因に迫ることができます。

上述の時間外労働の例で考えると、仮に問題の発生箇所として事務処理に時間がかかり過ぎているという事態だったとしましょう。なぜ事務処理に時間がかかるのか。その原因はいくつも仮説として考えることができます。そもそもの量が多すぎる、パソコンが古くで動きが悪い、ツールやソフトウェアが使いづらい、本人のスキルが足りない、など複数の要因が考えられます。これらの要因を、それぞれさらに細分化して考える。なぜツールやソフトウェアが使いづらいのか。なぜスキルが低いのか。原因の仮説に対して「なぜ?」を繰り返し突き詰めていくことで、問題を引き起こしている複数の原因を構造的に把握することができます。

4.問題の原因を克服するための課題を設定する

原因を分析し、構造的に把握したら、その中でも問題を引き起こす要因として影響度の高いものを優先的に選びます。数多くあるすべての原因仮説に対処するのは困難なため、まずは影響度の大きい要因から解決していくのです。そして、その原因に対処するための取り組みのことを「課題」と呼びます。どのように問題の原因を克服していくのか。そのための課題を設定するのです。

時間外労働の例で考えると、仮に事務作業の長時間化を引きこおしている主要な要因として「仕事のスキルを磨く機会が不足している」を選択した場合、そのための課題として「仕事のスキルアップをする場面を作り出す」を設定することができます。

5.課題の解決策を立案する

課題を設定したら、その課題を解決するための具体的な取り組みを考えます。ここでも、分解によって細分化と構造化をしていきます。設定した課題に対して「どうやって?」を繰り返し問い、取り組み内容の解像度を上げていくことで、具体的に「いつから」「何を」「どれだけ」やっていく必要があるのかを明確にすることができます。

時間外労働の例で言えば、仕事のスキルアップをする方法として、上司や先輩からのOJT、研修やセミナー、自己学習などが挙げられます。研修やセミナーをやるにしても、社内の勉強会にするのか、外部から講師を呼ぶのか、集合形式で行うのか、オンラインで行うのか、ライブで行うのか、オンデマンドで行うのか、など様々な方法を考えることができます。

6.解決策を実行に移す

具体的な解決策を考えたら、その時期や工程などを計画し、計画に基づいて実行に移していきます。計画に忠実に進めようとしても、思い通りに進まないことがあるため、適宜進捗を管理して、時に軌道修正を図る必要があります。また、計画通りに実行しても必ずしも問題が解決できるとは限りません。考えられる原因ののうち、特定の部分についてのみ課題設定をして解決しようとしているので、他の要因にも対処しなければならないことも考えられます。分析、仮説立案、計画、実行のステップを繰り返していくことで、やがて問題を本質的に解決できるようになるのです。

問題解決のポイント

本質的な問題解決において、成否を左右する重要なステップは原因分析と解決策立案です。そして、これらのステップにおいて重要なポイントは、どれだけ質の高い分解と構造化ができるかどうかです。売上が足りない、生産性が低い、人間関係が悪い、問題を抽象的に「大きな塊」として捉えていても、具体的に何から着手していけば良いのかが見えてきません。大きな塊として見てしまうと、文字通り捉えどころがなくなってしまいます。

有効な打ち手を導き出すためには、問題を細分化して「手に負えるサイズ」にまで小さくすることが求められます。「売上を上げる」という課題では「何をどうすれば良いのか」が漠然としてしまいますが、「今週中に10件のお客様と商談を行い、2件の案件を発掘する」というレベルにまで落とし込めば、やることは明確です。後はやるだけ、という話になります。

生産性が低いのであれば、まずは無駄な業務や非効率な業務を見つけるところからスタートになりますし、職場の人間関係を良くするためには、あいさつや雑談からはじめることが求められるかもしれません。これだったら「できる」「何をしたら良いかがわかる」と思えるくらいにまで、課題を細分化して、手に負えるサイズにまで小さくすることが必要です。そのためには、因果関係を推測して、問題を構造的に捉える論理的思考力が問われます。

問題解決の本質は「問題の未然防止」です。問題を引き起こしている本質的な原因を分析し、分解と構造化によって課題解決のシナリオを描く。職場のリーダーたる管理監督職には、論理的思考に基づく問題解決能力が求められるのです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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