問題解決
2026.6.8

目次
「なぜなぜ分析をやってみたけれど、堂々巡りになってしまった」「解決策を実行しても効果が出ない」そう感じた経験はありませんか。実は、問題解決がうまくいかない原因の多くは、なぜなぜ分析そのものではなく、その前の「問題の定義」にあります。
この記事では、問題解決できる人とできない人の本質的な違いと、職場の課題を根本から解決するための実践的アプローチを解説します。経営コンサルティングや管理職研修の現場で培った知見をもとにお伝えいたします。ぜひ最後までご覧ください。

問題解決の手法として広く知られる「なぜなぜ分析」は、トヨタ生産方式によって普及した考え方です。問題の原因に対して「なぜ」を5回繰り返すことで、表面的な原因ではなく本質的な真因にたどり着くことを目的としています。
実際にトヨタ自動車はこの手法で継続的な改善を積み重ね、世界有数の企業へと成長しました。優れた手法であることは間違いありません。しかし現場で実践してみると、次のような問題が起きることがあります。
こうした状況に陥ると「なぜなぜ分析は使えない」という結論に至ってしまうかもしれません。しかし、問題はなぜなぜ分析そのものではなく、問いを立てる「入口」の設計にあるのです。
問題解決を正しく進めるためには、まず「問題とは何か」という定義を押さえておく必要があります。
問題とは、現状と理想・目標の差分のことです。例えば、次のようなものです。
この差分を正確に把握しないまま「なぜ」を問い始めると、存在しないはずの原因を探し続けることになります。
例えば、「営業チームの売上が下がっている」という状況があったとします。訪問件数の不足、顧客関係の希薄化、提案品質の低下といった原因が挙がるかもしれません。しかし、実態が「新製品の発売前に旧製品の販売を意図的に抑えている」や「単価を引き上げるために低価格帯顧客との取引を戦略的に縮小している」であれば、売上が下がること自体は計画通りであり、そもそも解決すべき問題ではありません。
「何が起きているか(What)」を確認する前に「なぜ起きているか(Why)」を問う。それをどれだけ深く掘り下げても真因にはたどり着けません。
「問題を正確に定義できた時点で、解決の半分は終わっている」という言葉がありますが、それほど、問題の定義は問題解決の成否を左右するのです。
問題を正確に定義するためには、まず「問題には3つのタイプがある」ことを理解しておくことが重要です。どのタイプの問題かを見極めることで、適切なアプローチを選択できます。
顕在型の問題とは、現状も理想も明確で、誰の目にも明らかな問題です。
このタイプの問題は「どういう状態になれば解決となるか」が明確なため、現場担当者レベルも含めた全員が問題を共有しやすく、取り組みやすいのが特徴です。なぜなぜ分析との相性もよく、原因の掘り下げが機能しやすいタイプといえます。
潜在型の問題とは、現状と理想が明確ではないものの、「何となくおかしい」という感覚として現れる問題です。
こうした問題は「今どういう状態で、どういう状態を目指すのか」を言語化すること自体が難しく、定義に手間がかかります。このタイプにいきなりなぜなぜ分析を適用することは避け、まず多くの情報を収集して問題を具体的に言語化することから始めることが求められます。
リーダーやマネージャーには、顕在型の問題への対応だけでなく、この潜在型の問題を早期にキャッチする観察力と、問題を言語化する定義力が求められます。
【実践例】潜在型問題の定義の言葉がけ 「最近、チームの活気が落ちているような気がしています。先月と今月で、自発的な発言の回数や会議での提案数に変化がありますか?まずそこから確認させてください」
数値化できない問題も、行動・頻度・件数といった観察可能な指標に置き換えることで、定義が可能になります。
創造型の問題とは、現時点では問題が発生していないものの、将来のリスクに備えて理想水準を引き上げることで意図的に作り出す問題です。
これらは「いま現在は回っている」状態です。しかし、手を打たずにいて時間が経ち、いざ「その時」が来てから対応するのでは間に合いません。だからこそ、今のうちに技術伝承、業務標準化、新規事業開発といった課題に着手するわけです。
創造型の問題には原因が存在しないため、なぜなぜ分析は適用できません。 最初から「どのようにして課題を解決するか」という解決策の設計・実行に集中することが正しいアプローチです。

問題のタイプが整理できたら、次は実際に問題を解決に導くための5つのステップを踏んでいきます。
最初のステップは、何が問題で何が問題でないかを明確に切り分けることです。現状はどのような状態にあり、目指す理想はどのようなものかを、具体的かつ数値や事実をともなった言葉で表現します。
併せて重要なのは、問題が発生している箇所と発生していない箇所を明確に区別することです。「全社の売上が下がっている」と一括りにしてしまうと、実際には特定の部門だけが極端に悪いという実態が見えなくなります。
このレベルまで絞り込むことで、原因の追求が初めて有効に機能するようになります。
問題を定義したら、それをさらに細分化します。「売上を上げる」という大きな課題のままでは、具体的に何をすればよいか分かりません。「これなら手が打てる」というサイズになるまで問題を砕いていくことが必要です。
この段階で有効なのが「ロジックツリー」です。1つの問題を枝分かれさせながら構造的に分解します。
【売上低下の分解例】
分解することで問題の構造が視覚化され、「どこに焦点を当てるべきか」の判断が可能になります。
細分化すると、問題のある箇所が複数見えてきます。しかし、時間・人員・予算はすべて有限です。すべてに同時に対処しようとすると、どれも中途半端に終わります。優先順位をつけ、限られた資源を効果的に配分することが必要です。
優先度を判断する3つの軸は以下のとおりです。
この3軸で評価し、「ここから手を打つ」という一点に絞ることで、問題解決の実行力が高まります。
優先的に取り組む問題が決まったところで、ようやくなぜなぜ分析の出番です。問題を正確に定義し、細分化して手の届くサイズにした問題に対してなぜなぜ分析を行うからこそ、本質的な真因に迫ることができます。
「なぜ西日本エリアの新規顧客の受注件数が減っているのか」→「なぜ初回提案からの成約率が下がっているのか」→「なぜ顧客の課題を正確に把握できていないのか」……と問い続けることで、「担当者のヒアリングスキルに課題がある」あるいは「提案フォーマットが顧客ニーズの変化に対応していない」といった真因に近づいていけます。
なぜなぜ分析で導き出した原因は、あくまでも仮説です。仮説はデータや事実で裏付けて初めて「原因」として確定します。
このプロセスで「やはりそうだった」と確認できたときに初めて、解決策の立案・実行へと進むことができます。仮説の裏付けをせずに解決策を打つことが、「実行しても効果が出ない」という事態を招く主因です。
5つのステップを理解したうえで、実際の現場でやりがちな失敗パターンも押さえておきましょう。
最も多い失敗です。「なんとなくまずい」という感覚のまま会議を始め、「なぜこうなったのか」を議論し始めます。問題が定義されていないため、参加者がそれぞれ別の問題について話し合うことになり、議論が噛み合わないまま終わります。
【改善の一言】「まず今の状態を数字や事実で確認しましょう。何がどの程度ずれているか、共通認識を持ってから議論を始めます」
潜在型・創造型の問題にいきなりなぜなぜ分析を適用しても機能しません。潜在型であれば問題の定義が先決であり、創造型であれば原因を追うのではなく解決策の設計に集中する必要があります。問題のタイプを見極めずにアプローチを選ぶことが、問題解決の失敗を招きます。
「売上を上げる」「組織力を高める」「コストを削減する」といった大きな課題のまま解決策を検討しようとするパターンです。課題が大きすぎると、具体的なアクションに落とし込めず、会議で議論するだけで何も動かないという状況が生まれます。問題は「これなら明日から動ける」というサイズに分解して初めて、解決が動き出します。

今回のポイントを整理しましょう。
「問題を正確に定義できた時点で、解決の半分は終わっている」。この原則を現場で実践するだけで、問題解決の精度と速度は大きく変わります。
「問題の定義の仕方が分からない」
「チームで問題のタイプを共有しようとしても、認識がバラバラになる」
「5つのステップは分かったが、実際の会議でどう進行すればいいか」
知識として理解することと、現場で使いこなすことの間には、必ず壁があります。
こうした実践上の課題に対応するために、管理職・リーダー向けの問題解決・課題設定研修をご提供しています。本記事でお伝えした問題の3タイプの見極め方や5ステップの進め方を、実際のワークを通じて体得できるプログラムです。「知っている」を「できる」に変えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役社長。「デキる人を増やして社会をもっと快適にする」を理念に、人事・組織コンサルタントや研修講師として活動。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。
著作『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜』
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