人材像
2026.10.21

日本で仕事に熱意を持って働いている人は、8%です。世界平均の20%に対して、半分以下の水準が続いています。
この数字を見て、日本人の勤勉さが落ちたと考える方は少ないと思います。実際、そういう話ではありません。この調査が測っているのは、社員の資質ではないからです。測られているのは、会社が用意した側です。何がどう測られているのかを、順に見ていきます。
アメリカのギャラップ社が毎年公表しているエンゲージメントの調査があります。最新版である2026年版では、日本で仕事に熱意を持って働いている人の割合は8%でした。世界平均は20%、東アジアの平均は18%です。
8%という数字は、前回から1ポイント上がっています。ただし世界平均との差は12ポイントあり、日本が世界平均を大きく下回っている状況は変わっていません。
拙著『指示待ち人間からの解放』の第1章では、2023年版の報告書に掲載された5%という数字を引用しています。執筆時点から数字は動いており、少しずつ上昇しています。それでも、日本の職場が置かれている状況は、依然として厳しいものがあります。
この数字を経営者の方にお見せすると、少しほっとした表情をされることがあります。「うちだけの話ではないんですね」。そう言われたことは、一度や二度ではありません。
その気持ちは分かります。ただ、8%は全国の平均値であって、個別の会社の数字ではありません。平均より高い会社も、低い会社もあります。そして、その差が生まれる要因を考えるうえで、調査の中身が参考になります。
ギャラップ社のエンゲージメント調査では、12の設問を用いています。中身を見ると、社員の性格や生まれ持ったやる気を直接尋ねている設問は、ひとつもありません。
聞かれているのは、たとえば次のようなことです。
これらは、社員本人の努力だけでは解決できない問題です。
期待を明確に伝えること。成長する機会を用意すること。社員の意見に耳を傾けること。本人の強みを活かせる仕事を任せること。いずれも、会社や管理職の働きかけが大きく関係しています。
つまり、8%という数字を、社員のやる気や能力の問題として片づけるべきではありません。8%は、社員につけられた点数ではありません。むしろ、職場の設計を問い直すための数字なのです。
もちろん、日々の職場環境は現場の管理職にも変えられます。しかし、評価制度や人材育成の方針、権限の委譲といった会社全体のしくみを変えるには、経営者の意思決定が欠かせません。

では、日本の職場で何が足りていないのか。私がコンサルティングの現場で見てきた限り、理由は3つに集約されます。
1つ目は、期待が言葉になっていないことです。
ある会社の管理職研修で、「ご自身が何を期待されているか、言葉で説明できますか」と伺ったことがあります。30人ほどの会場で、手が挙がったのは2人でした。
役職名はあります。課長、係長、主任。しかし、その役職に何を求めるのかが文書になっていない会社は、驚くほど多いのです。等級ごとに期待する役割をどう書くかについては、中小企業の等級制度の作り方|人事コンサル10年超の設計手順をご覧ください。

2つ目は、意見が反映された経験がないことです。
意見を言う場がない、という会社はあまりありません。朝礼も会議も1on1もあります。足りていないのは場ではなく、言った後に何かが変わった経験のほうです。
一度でも「言ったら変わった」が起きると、人は次も言います。起きなければ、言わなくなります。言わなくなった状態を外から見ると、受け身に見えます。1on1が続かない会社に共通する条件については、1on1の形骸化を防ぐ|続かない会社に共通する3つの条件に書いています。

3つ目は、成長が設計されていないことです。
「この1年で学んで成長する機会があったか」。この問いに自信を持って答えられる社員は、そう多くありません。年に1回の研修はあっても、それが本人の実感につながっていないからです。
何をどの順で身につけるのかが決まっていなければ、研修は点のまま終わります。教育体系の構築手順で、能力要件と研修をつなぐ手順を整理しています。
この3つは、どれも社員の努力では埋まりません。埋められるのは、しくみを決める側だけです。

ここで気をつけていただきたいことがあります。社員意識調査を導入して、点数そのものを目標にする会社があります。残念ながら、これはうまくいきません。
点数が目的になると、現場は「悪く書くと面倒なことになる」と学習します。翌年の数字は上がります。実態は何も変わりません。経営者の手元には、実態と合わない資料だけが残ります。
数字は、環境を整えた結果として動きます。順番を逆にすると、整えるべきものが見えなくなります。
自社の職場がどう設計されているかは、中にいると見えにくいものです。人材像・人事制度・マネジメント・人材育成の4分野について、どこが弱いかを10分で数値にする無料の環境診断をご用意しています。ご興味のある方はお試しください。

全部を一度に整える必要はありません。今週できることが、3つあります。管理職の方に、ご自身の部下を1人思い浮かべてもらったうえで、次の3つを確認していただくだけです。
3つとも「ない」という答えが返ってきたら、その人にとっての職場は、まだ何も用意されていない状態です。叱咤激励の前に、整えるものがあります。
逆に、3つのうちどれかが「ある」なら、そこは機能しています。弱いところから順に手をつければ十分です。全部を同時に変えようとすると、どれも中途半端になります。スモールスタートで構いません。
この設計を自社だけで進めるのが難しい場合、外部を部分的に使う方法もあります。弊社がどこまで関わり、どこから社内に渡すのかは、コンサルティングの進め方をご覧ください。

日本の8%という数字は、社員の資質を表したものではありません。期待が言葉になっているか、意見が反映されるか、成長の機会があるか。会社が用意した3つを測った結果です。
熱意が戻る条件も、同じ3つです。用意されていないものには、誰も答えられません。
自社の職場に何が用意されていて、何が用意されていないかは、中にいると見えにくいものです。人材像・人事制度・マネジメント・人材育成の4分野について、どこが弱いかを10分で数値にする無料診断をご用意しています。今回の内容は、診断の人材像の項目に対応しています。ご関心のある方は、ぜひお試しください。
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出典
株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング 代表取締役社長。中小企業診断士、国家資格キャリアコンサルタント。事業会社で人事制度の再設計や業務改善に携わったのち、2021年に独立。中小企業の人材育成と組織づくりを支援しています。
著作『指示待ち人間からの解放〜自ら考えて行動する社員を増やす4つの柱と7つのステップ〜』『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜』