日本人にもバカンスの文化を

先週、休暇をとり、ローマ旅行に行ってきました。

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今回は7泊9日でローマ1都市にのみ滞在という緩やかなスケジュールでしたので、観光スポットを巡るだけでなく、あてもなく街をぶらつくなど、「旅行」というより「バカンス」と呼べるような過ごし方ができました。

 

私がコンサルタントの仕事を通じて実現したいビジョンのひとつに、「日本人にバカンスの文化を醸成する」というものがあります。

今回は10日間の休暇でしたが、やがては数週間、あるいは1ヶ月くらい仕事をオフにできるような生活が送れたらと思います。

もちろん、私だけではなく、皆がそういう生活を選べるような世の中になって欲しいと望みます。

 

そのためには、それが実現できる職場環境や仕事の進め方が必要になります。

業務改善や能力開発など、私の日々の仕事がそうした世の中を実現できる一助になればと願うばかりです。

 

私がバカンスを推奨したい理由は、主に下記の3つです。

  1. 長期的な視点から人生を見つめる機会が作れる
  2. 固定概念を打ち破ることができる
  3. 人生全般から見たワークライフバランスを実現する

 

1.長期的な視点から人生を見つめる機会が作れる

日々の仕事や生活が忙しいほど、日頃から考えることが短期的になりがちです。

やるべきことが山積みになると、「どうやってそれらを片付けていこうか」という考えで頭がいっぱいになってしまいます。

 

目の前のタスクを次々と処理し、一方で新しいタスクが増え続ける。

こうした状況になると、頭の中にあるのは、「今週」「今月」せいぜい「今年」どうするか、といったことばかりになります。

5年、10年、あるいはそれ以上の長い目で自分の人生について考えるのは難しいと言えるでしょう。

 

しかし、短期的な視点でだけで物事に取り組むようになると、自分の生涯にとって大切なライフイベントやキャリア形成のチャンスを逃すようになってしまいます。

数年をかけて腰を据えて準備が必要なことに、手をつけられないまま時間が過ぎるようになってしまうのです。

長期的な視点で物事を考えるためには、住居や職場など「いまの生活の場」から離れることが有効です。

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目の前のやるべきことからいったん視線を外し、日常とはまったく異なる景色に触れることで、

「自分はこれからどうしていきたいのか」

「自分は本当はどんな生活を送りたいのか」

といったことに、考えが及ぶようになります。

 

現状を積み上げるだけではなく、ゴールから逆算する思考で、より戦略的に自分の人生を設計することができるようになるでしょう。

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2.固定概念を打ち破ることができる

グローバル競争が激化し、環境変化のスピードが激しい現代においては、日本企業においても

「過去の経験にとらわれるな」

「固定概念を打ち破れ」

といった言葉がしばしば叫ばれます。

 

しかし、いつもと同じ時間、同じ場所、同じ人間関係の中に身を置いたままで、これまでと異なる発想をすることは容易ではありません。

いつもと何も変わらない環境で仕事をしながら、成果だけを変えようとするのは無理があります。

同じ環境に身を起き続けると、周囲の様々なものが「当たり前」と化していき、やがて何の疑問も抱かなくなってしまいます。

そして、周囲の環境に疑問を抱かない日々を送り続けると、様々なことを「感じる力」が低下していきます。

 

例えば、転職や異動をしたばかりの頃は、上司や同僚の言動や仕事の進め方がそれまでの自分とは異なることに対して、違和感を覚えたり、疑問を抱いたり、学習したりすることがあります。

この「異質なものに触れる」経験こそが、何かを生み出す原動力になるのです。

しかし、それが数年続くと、当初は新鮮だった様々なことが「当たり前」化していき、新しいことができなくなります。

むしろ、新しい人が新しいことをやろうとするのを、止めにかかる側に回ってしまうことすらありえます。

 

固定概念にとらわれず、柔軟で、斬新で、創造的な仕事をするためには、日常とはまったく異なる環境に身を置く機会をつくることが有効です。

日頃「当たり前」だと思っていることが、実は当たり前ではないことに気づくと、周囲の物事の見え方が自分の中で変化するからです。

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地下鉄の駅のトイレが有料であること、駅の構内にライフル銃を携えた軍人が警備にあたっていること、ホテルやレストランでチップを渡すこと、見知らぬ人とも挨拶すること、笑顔だけでコミュニケーションが成立すること・・・など、

私も今回の旅行で久々に違う文化に触れることで、自分が「日本人としての当たり前」にすっかり慣れてしまっていることを思い出しました。

帰国してから、日本のいろいろなことに改めて感謝し、一方で残念に思うなどして、「感じる力」を回復させているように思います。

3.人生全般から見たワークライフバランスを実現する

「ワークライフバランス」とは、仕事と私生活の配分を調整して、バランスの取れた人生を送ることです。

多くの場合、家事や育児・介護などの家庭生活と仕事の両立を図るといった意味で用いられますが、ワークライフバランスは日々の生活だけでなく、人生全般を通じて考えることも重要ではないかと思います。

 

今なお根強い日本の従来からの価値観は、「定年までは一生懸命働き、定年後に年金生活で余暇を謳歌する」というものでした。

仕事をしている身で長期の休暇を取ることは、まるで贅沢なことであるかのように扱われます。

 

しかし、人生においては、若いうちにしかできないことも数多くあります。

海外旅行に行くにしても、長時間のフライトや史跡の探索などはかなり体力を要します。定年後に行くのと若いうちに行くのでは、設計できるスケジュールも大きく異なるでしょう。

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余暇の大部分を定年後までお預けすることは、多くのチャンスを逃すことになると言っても過言ではありません。

若いうちから積極的に長期の休暇をとって、いろいろなことにチャレンジする。そんな世の中を実現していきたいと、切に願います。

 

加えて、これからの時代に「定年後の余生」が存在するかどうかも甚だ疑問です。

日本における超少子高齢化社会は今後もますます加速し、全人口に占める60歳以上の割合は、2020年(たった3年後)には35%に、2040年には40%を超えることが見込まれています。

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内閣府ホームページより引用)

 

その状況下の中で、60歳あるいは65歳で仕事をリタイヤすることができるとはとても思えません。

定年は70歳、75歳となるかもしれませんし、そもそも定年という概念すらなくなるかもしれません。

それはすなわち、健康で、生きている間は一生働き続けることを意味します。

 

「年金生活」という言葉も過去のものとなるでしょう。

子ども(未就業世代)の数を除けば、2035年頃には60歳以上の人口と59歳未満の人口がほぼ拮抗する状態になります。

つまり、現行の年金システムでは、現役世代1人で高齢者1人の生活を支える計算となります。

そんなものが到底維持できるとは思えません。老後の資金は自己責任で形成する時代に、すでに突入していると言えるでしょう。

 

身を粉にして働いても死ぬまで「余生」は訪れず、仮に仕事を退職しても支払続けてきた年金は自分には返ってこない。

そんな将来のために、余暇をずっとお預けしておく生き方が、あるべき姿だとはとても思えません。

 

懸命に働き、存分に余暇を謳歌する。

それがどの世代でも実現できるようなの世の中になって欲しいです。

そのために、仕事の環境や仕組みをどのようにしていくべきか、効率や生産性をどのように上げていくか、「デキる人」をいかに増やしていけるか。

ご縁をいただいているクライエント様への支援を通じて、そうした世の中づくりに一層貢献していきたいと、改めて思いました。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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